最新の食品業界ニュースからピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、この冬の時期に起きたウェルシュ菌の食中毒事件について、プロが解説していきましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

 

本日の時事食品ニュース

 

 

今日のお話の概要
  • 愛知県の幼稚園でウェルシュ菌の集団食中毒が発生した
  • これは幼稚園がデリバリー方式で給食を委託している工場で発生した
  • ウェルシュ菌の食中毒は大規模になりやすい
  • ウェルシュ菌は芽胞を形成する偏性嫌気性の食中毒菌である
  • ウェルシュ菌は土壌など自然の何処にでもいるため、汚染防止自体は難しい
  • ウェルシュ菌は他の菌より熱に強い
  • ウェルシュ菌は他の菌より高温で増殖し、しかも増殖速度も速いため、迅速な冷却が必要である
  • ウェルシュ菌には、増やさない対策が重要である

 

幼稚園でウェルシュ菌の食中毒事件が発生

先日、愛知県の幼稚園でウェルシュ菌による食中毒事件が発生しました。

以下ニュースを引用します。

Yahoo!ニュース
幼稚園児ら162人食中毒 弁当工場を営業禁止処分 愛知・豊山町(中京テレビNEW...
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200220-00010005-sp_ctv-l23
今月13日、愛知県豊山町の「山大食品豊山工場」が作った弁当を食べた尾張地方と名古屋市にある2つの幼稚園の園児153人を含む162人が、腹痛や下痢などの症状を訴えました。 愛知県によりますと、保健所が - Yahoo!ニュース(中京テレビNEWS)

 

今月13日、愛知県豊山町の「山大食品豊山工場」が作った弁当を食べた尾張地方と名古屋市にある2つの幼稚園の園児153人を含む162人が、腹痛や下痢などの症状を訴えました。

愛知県によりますと、保健所が検査したところ、園児や弁当工場の従業員らから食中毒の原因となる「ウエルシュ菌」を検出。
県は工場を営業禁止処分にしました。

162人は全員軽症で現在、回復しているということです。

 

幼稚園の給食で食中毒が

コロナウィルスの報道がひっきりなしで、ノロやその他の食中毒が完全に霞んでしまっている昨今ですが。
それでもやっぱり食中毒事件は、冬なのに発生していたりします。

例えば、こちら。
幼稚園の給食で、このように3桁越えの食中毒が発生してしまいました。

厨房施設のない幼稚園では、お弁当、あるいは「デリバリー方式」で給食を外部委託しています。
「デリバリー方式」というのは、その呼び名の通り、付近の工場やセントラルキッチンにお弁当の製造を外注し、配送してもらうタイプの給食です。

 

ちなみに、余談ですが。
コロナウィルスの影響による、3月の全国小中高の臨時休校について、給食作る企業は潰れてしまうのではないか、というツイートが拡散しているのをTwitterで目にしました。
彼は、この「デリバリー方式」の企業の話をしているわけです。

が、恐らくそんなことはないものだとぼくは思っています。

一般的に、デリバリー方式の給食では、業者はまず最初に年間何食分の給食を請け負うのか、それを元に算出した金額で契約を取り交わす、年度委託契約です。
ですからよっぽど特殊な例がなければ、学校の都合で「やっぱり一ヶ月分キャンセルするから金返してくれ」というような話が通るとは、あまり思えません。
尤もぼくは食品企業の営業でもないので、これは聞いた話でしかないのですが。

集団食中毒になりやすい、ウェルシュ菌

おっと、話が逸れた。戻しましょう。

今回は、その「デリバリー方式」で幼稚園からの委託を受けていた地元業者、「山大食品豊山工場」がその要因と言われています。

さて、ここでのポイントは、1回の食中毒で162人の患者が発生している、ということです。
これがウェルシュ菌の食中毒の恐ろしさです。
この菌の食中毒は、1回での発症者数が得てしてめっちゃ跳ね上がるのです。

さて、一般的に「食中毒が多い」という場合、次の二つのデータからそれを評価します。

 

食中毒の「多さ」の見方:食中毒の状況別分類
  • 事件数:食中毒が発生した件数
  • 患者数:食中毒になった人の数

 

「事件数」とは、食中毒が発生した件数のこと。
「患者数」とは、食中毒になった患者の数のこと。
これら双方から、「食中毒の多さ」を判断します。

それでは、その双方から平成30年の食中毒データを見てみましょう。

 

「ウェルシュ菌」を見てください。

ほら、「事件数」はそう対して多くはないくせに、「患者数」が多いじゃないですか。
これは、一回の事件で発症する患者数が多いからなのです。
(逆にアニサキスなんかは、事件数は多いけれど、魚を食べるのは1人か少人数なので、患者数は少ないですよね?)

実際、データからも判るようにウェルシュ菌は、事件数でいえば、かなり少ない。
だって、年間32件しかない。
同じ細菌性食中毒だって、先のカンピロバクターは年間300件越えしてるのに、です。

にも関わらず患者数が多いってことは、つまり大規模な集団食中毒が起こりやすいってことです。
何せウェルシュ菌は一発出ると、たやすく三桁レベルの集団食中毒になる。

結果、たった年間8件なのに、患者数がカンピロより多い2000人越えになっている。

では、これは何故なのでしょうか。

(上のことは以前の記事に詳しく書いています。こちらもどうぞ)

ウェルシュ菌とは

まず、簡単にウェルシュ菌をご紹介します。
集団食中毒になるくせに、事件数も少なく、また比較的軽症なことが多いので結構マイナーだったりしますので。


Wikipedia

さて、このウェルシュ菌は「芽胞」という熱に強い頑丈な菌のバリアを形成する、いわゆる「偏性嫌気性」の食中毒菌です。
「偏性嫌気性」というのは、酸素のあるところでは増殖しない菌のことです。
ですから、スープやカレー、煮物などの中の、酸素のないところで増殖します。

実はウェルシュ菌は、土壌や水中など、自然環境にも広く分布しています。
土壌菌ですから酸素のない土中(偏性嫌気性菌!)にいますので、野菜なども汚染されています。
また人間や動物の腸内にも普通にいる菌でもあります。
というか、実はウェルシュ菌には種類が幾つかありまして、でその仲間の一部が食中毒を起こす毒素を作る悪い菌なのです。

またウェルシュ菌は、芽胞によって高熱の加工にも耐え、増加します。
これによって増加したウェルシュ菌を食べると、人間の腸内で毒素(エンテロトキシン)を作り、食中毒が発生します。

ただしウェルシュ菌の食中毒は、規模は大きいですがそれほど重症にならないことが多いです。
およそ一日程度で回復することも多いので、問題が深刻化しないこともままみられます。

どうしてウェルシュ菌の食中毒は大規模化するのか

それでは何故、ウェルシュ菌は集団食中毒になりやすいんのでしょうか。

そもそもとして、ウェルシュ菌の食中毒の多くが大量に調理されるような給食や仕出し弁当で起こることが多いから、ということがあるでしょう。
何せウェルシュ菌食中毒のことを別名、「給食病」と言うくらいです。
では何故、そのような給食などで起こるのでしょうか。
幾つか理由がありますので、順を追って説明します。

まず、ウェルシュ菌は自然界にも普通にいるため、その汚染を防止することは現実的ではありません。
何せ土壌にもいますし、どこにでもいます。
ですから菌汚染を防ぐのが難しい。
これがウェルシュ菌が厄介さんな理由、まず一つめでしょう。

次の厄介さんの理由は、他の菌よりも熱に強い、ということです。
ウェルシュ菌は芽胞形成菌です。
「芽胞」とは煮込んだりなどの加熱工程で、熱に強い「バリア」を作る菌のことです。

 

このように、ウェルシュ菌は高熱などの過酷な条件になるとバリアのような芽胞を形成して、身を守って過ごし、その後また生息条件が整えば増殖します。

しかも、ウェルシュ菌の芽胞は極めて熱に強いのが特徴です。
何せ、100度で1~6時間の加熱にすら耐えるほど。
ので、普通の調理では死滅出来ません。
結果、多くの食中毒菌が死滅する加熱調理の中、ウェルシュ菌だけが残っているというケースが生じます。
こうなると、食品内はウェルシュ菌の独壇場。
競合する他の菌がいなくなると、菌というのは俄然増殖を増すものです。

さて、ウェルシュ菌での食中毒は、加熱でも生き残ったウェルシュ菌が食品内で増殖することで生じます。
となると重要なのは、「如何に早く加熱した食品を冷やすことで、ウェルシュ菌が増殖しやすい温度帯を速く抜けるか」ということになります。
冷温ではウェルシュ菌はそう増えないからです。

つまり。
ウェルシュ菌の食中毒は、冷却の失敗が要因であることがほとんどです。
これがウェルシュ菌食中毒の原因の大半をしめています。

そもそも、加熱殺菌した食品をいかに迅速に冷やすか、というのは非常に重要にして基本的な食中毒対策なのです。
ですから、一般的な工場であれば、ブラストチラーや真空冷却機などの冷却システムを用いて、その増殖温度帯を如何に通過するかの対策がなされるものです。

ですが、そうした高額な機器は、小規模の仕出し弁当工場や給食工場には備わっていません。
何せ作ったものをすぐ食べてもらうため、そうする必要が、基本的にはありません。
ですから、その多くはせいぜい、扇風機や冷蔵庫などで冷やす、といった方法が取られていたりします。
ですが、これらの冷却方法は多量の食品を冷やす方法として、それほど適してはいません。

しかしこの段階で、知識のある調理者であれば、食品を小分けして冷蔵庫にしまうなどの方法を採るのでしょうが(小分けの段階で空気に触れるため、増殖を押さえる効果もあります)、これが知識がない調理者の場合、寸胴鍋に入れたまま常温放置、せめて扇風機などを当てる程度にしてしまいます。
まあ、そんなことで食品が完全に冷却出来るわけがなく、結果、多量の食品がウェルシュ菌で汚染されることになります。

さあ、厄介さんの理由、その三。
しかも、ウェルシュ菌は増殖温度帯が他の菌よりも高め(43~47℃)なので、それほど冷却が進んでいない状況から増殖が出来る上、その増殖速度(世代時間)も相当に速い。
だから、他の菌が増殖していないのに、ウェルシュ菌だけ増殖することが可能になります。

また。
このウェルシュ菌は、「偏性嫌気性菌」です。
つまり、酸素がないところでしか増殖しません。
逆に言えば、スープやうどんの汁、カレー、煮物など、多量に作ればその中で多量に繁殖することが可能になります。
だから、給食などでの大規模食中毒が起こることになります。
(こうしたものは、多量に作るとなかなか中心まで冷えづらい、という問題もあったりします)

加えて、もう一つの厄介さんの理由。
とはいいながら。完全な真空じゃなくても、まあ食品内だったら俺、増殖しちゃうよー?みたいな、ちょっとした緩さ、ファジーさも備えていたりします。
ここら辺、真空じゃないと絶対増えないぜ!みたいなガチもんのボツリヌスなどより、緩い分だけ厄介なところだったりしもます。

しかも。
食品内の細菌は食品を分解するものですが、ウェルシュ菌は食品のタンパク質を分解しません。
ですから、ウェルシュ菌に汚染された食品を食べても、気付かないことが多いです。
(しかもウェルシュ菌が問題になりやすい煮込み料理は味が濃いので、余計気付きづらいということもあるかもしれません)
これまた誰も食べても気付かず、食中毒になってしまう理由でもあるでしょう。

ウェルシュ菌の食中毒を防止するには

ここまで読むと、「じゃあそんな厄介さんなのに、どうしてそんな事件数は少ないの?って思うかもしれません。
でもそこはやはり、「偏性嫌気性菌」。
炒めものなど、酸素に触れやすい調理では問題になりづらい。
やっぱり、なんやかんやで汚染された肉をそのまま使って、大量に煮込んだりなどして、それを放置しないと食中毒になりません。
(パスタなどでは発生したりもしますが)

またウェルシュ菌自体は芽胞によって高熱にも耐えますが、その毒素自体は熱に弱いため、再加熱(60℃10分間)で失活出来ます。
それに毒素自体は取り込んでも、胃酸で失活出来ます。
あ、ちなみに菌自体も胃酸には弱いので、これで防いでいるケースもあったりします。

いずれにせよ、このウェルシュ菌の食中毒は、「多量のウェルシュ菌を食べる」ことで起こるものです。
ですから、「増やさない」という対策が重要になります。

 

あくまで一般的でしかありませんが、ウェルシュ菌対策としては次のようなことが重要になります。

 

ウェルシュ菌対策
  • 調理後は、出来るだけ小分けして冷却する
  • 作り置きをなるべく避け、調理後は出来るだけ早く喫食する
  • 出来ない場合は、10℃以下で冷保存する
  • 前日などに加熱調理したものは、十分に再加熱する

 

まとめ

今回は事件数は少ないものの、一回の事件で大量の患者を生み出すウェルシュ菌についてお話しました。
これから春になり、夏に向かうと更にこのような食中毒は増えていくものです。

今から対策などをしていくことが必要です。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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