密封包装された未開封のパンに、カビが付着した。
このようなことは、どうして起こるのでしょうか。
その要因に、今日は迫ってみようと思います。
なお、こちらは二部構成になっている記事の「後編」となっています。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • カビ防止のための包装には幾つか種類がある
  • 「真空包装」とは、包装内の空気を抜いてしまう包装のことを言う
  • 「ガス充填包装」とは、包装内に窒素ガスを注入し、酸素をなくしてしまう包装のことを言う
  • 「脱酸素材封入包装」とは、包装内に脱酸素材を入れることで、包装内の酸素をなくしてしまう包装のことを言う。
  • 現実的に、工場内で焼成後の製品にカビの胞子の付着を完全防止することは難しいため、これらの包装を行うことで、カビに対する「増やさない」対策を行っている
  • 今回の問題の原因は、①「包装後にピンホールが生じた」が可能性が最も高い
  • その他、要因としては、②「シール不良」、③「包材の選定や手法の不具合」、④「脱酸素材の不良」、その他が考えられる
  • これらの問題が生じた場合、包装工程上の問題のみならず、場内のカビの生息状況もあわせて対策を行っていく必要がある

 

今日のテーマ:未開封のパンにカビが!その原因は?

ケーススタディ・ザ衛生管理。
「工場の現場で起こりやすいこと」、「実際に起こったこと」を例題事例とし、現場に即した対処方法を、ここではお教えしてきます。

というわけで、今回のテーマは、こちら。

「未開封のパンにカビが発生した!その原因は?」
です。
これについて、前回、そして今回と前編後編に分けて、二回で解説いたします。
なお、こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでください。

 

食品はどのように包装されるのか

さて、前回のお話を覚えておりますでしょうか。
そう、カビ防止のための食品包装のポイントとは、「如何に酸素を入れないか」です。
より具体的には、「如何に包装内に酸素のない状況を維持出来るか」が求められます。
何故なら、前回の通り、カビは酸素なしでは活動が出来ないからです。

ではここからは、このような対応がなされる包装の代表例を幾つかご紹介しましょう。

真空包装

カビ対策としての食品の包装方法には幾つかの種類があります。
いずれにしても重要なのは、先の通り、「如何に酸素を包装内に満たさないか」です。

一番判りやすいのは、「真空包装」でしょう。
ソーセージやレトルト食品、漬物その他でよく見られる手法です。
包装資材内に食品を充填して、空気を抜いた真空条件下で密封しシールしてしまう。

メリットはガスの注入や脱酸素材を入れることなく、真空パッカーで密封してしまうだけなので、比較的作業がシンプルなこと。
デメリットは形状や食感が破壊されやすいので、つぶれてしまいそうな菓子類やパンなどには向いていません。

↑うちの冷蔵庫にあった真空包装(笑)

ガス充填包装

その他、包装資材内に窒素を満たしてしまうことでカビの活動を抑制する方法もあります。
ポテトチップスなどのスナック菓子。あれを思い出してください。
あ、ポテトチップスのような油であげるスナックの場合、酸化防止という品質維持の目的もそこに大きく含まれます。
それとあのパツパツなガス充填は、衝撃防止もあるのでしょうね。

このように「ガス充填包装」のメリットは、カビ対策としても効果が高く、また形状の維持が出来ること。
他方デメリットは、充填機が必要など、手間とコストと時間がかかること。また、一部パンなど、ものによっては食感が損なわれてしまいかねないことでしょう。

脱酸素剤封入包装

一番手っ取り早く、手軽な方法。
それが、食品の包装内に「脱酸素剤」を一緒に入れてしまうことです。

これは酸素を取り込んで吸収してくれる薬剤で、開発商品の名から「エージレス」と言われることがあります。
(「エージレス」とは本来、三菱ガス化学が製造・販売する脱酸素剤の登録商標です)

ですから包装資材内に多少の酸素がもしあっても大丈夫、
この「脱酸素剤」が吸収し、カビの活動を抑えてくれるのです。

しかしあくまでそれは、製品が完全密閉されていることが条件。
少しでもほんの小さなキズ穴(ピンホール)が空いていると、そこから空気がどんどん流入し、カビの活動が始まってしまいます。

メリットは、コストが一番安く、効果がそこそこ高く、手軽で、自動投入の仕組みを組み込めば一番スピーディに作業が出来る、製品の食感や形状の維持が出来る、など多々に及びます。
ですから多くの食品でこの方法が起用されがちです。


三菱ガス化学(株)

このようなカビ対策のための包装を行う理由

そもそも、どうしてこのような包装を行うのでしょうか。
それは、製品を全くカビに汚染させないまま包装する、ということがなかなか現実的に難しいからです。

例えば、焼成したばかりのパンは160℃を越える高熱で加工されているため、カビが表面などで生きていることはありません。
しかし、パンはこの後ゆっくりと冷却します。
急激に冷却すると食感が失われてしまうからです。

そう、この間に、場内に浮遊しているカビの胞子がパンに付着します。
そりゃあHEPA管理の無菌充填のようなクリーンブース内でパンが冷却されるなら話は別でしょうが、まあ一般的にありえない話。
(ちなみにクリーンブースにだって、カビの胞子はドアの開閉などを経て入り込みます。)

結果、パンにカビがどうしたって付着する。
このことはパンだけに限った話ではありません。
いくら加熱後すぐに急速冷凍にかけるといっても、一端空気に触れる以上、カビによる汚染は免れません。
つまり、空気の中で製造がなされる以上、カビを完全遮断することは不可能です。

だからそれは仕方ないものとするなら、包装によってその活動を食い止めればいい。
このように考えられて作られたのが、脱酸素剤などをはじめとしたこれらの包装技術です。

これは、微生物管理上で言うところの、「増やさない」対策です。
カビを「付けない」のが難しく、また焼成後で「やっつける」ことが出来ないのであれば、食品で「増やさない」ようにすればいいのです。


厚生労働省

パンにカビが発生した原因は?

さて、これらを踏まえて「何故未開封のパンにカビが発生したのか」。
その原因を考えてみましょう。
幾つかの原因が考えられると思います。

さて。
このパンの包装内には「脱酸素剤」が入っていました。
まあ、ポピュラーな包装手法ですね。
それを考えれば、次のような原因が、可能性として考えられるでしょう。

包装後の工程や物流上でピンホールが生じた

まず疑うべきは、ピンホールですね。
包装後の製品の取扱い、箱詰めから物流、店頭などで様々な原因から衝撃を受けて、「スレ」による破損、つまり「ピンホール」が生じてしまった、というケースです。
恐らく、このようなクレームのほぼ大半がこの原因かと思います。

酸素バリア性が高く、また耐久性が高いと言われている包材でも、ある特定の衝撃や突起物との摩擦に弱い、なんてことは割とあるあるです。
段ボールなどとの接触でそれが生じることも、時折あったりします。
特に樹脂製や紙製のトレイに乗って一緒に包装される菓子などでは、そのトレイの端がすれてピンホールが生じる、というようなケースもしばしば耳にします。
トレイ自体は軟らかい資材なのでしょうが、しかしその端は何度も摩擦しているうちに包装資材にピンホールを生じさせてしまった、というような話です。

ランダムで単発にこのような問題が生じる場合は、このケースが多いです。
実際ほーんの小さなピンホールでも酸素は流入しますから、カビの発生は可能になります。
そのため、目視確認などではピンホールが見あたらず、「返品された製品の包装をよく見たのだが、どこにも穴は見あたらないように見える」というような話もまま聞きます。

この場合、ピンホールが生じた要因を調べ、手荒で不適切な作業の有無や包装資材の見直しなどを対策として薦めていきます。
また脱酸素材の中には、無酸素状態とそうでないときの色が変わるものもあります。
こうしたものを用いることでも、包装内の状況がわかるようになるでしょう。
その他、段ボールとの摩擦で生じる場合には、緩衝材を用いるなども有効かもしれません。

シール工程の不具合

ピンホールに次いで時折起こるのが、シール不良です。
熱圧着において、わずかな接着不良が発生し、そのため酸素が流入したというケースです。

なお、これらの包装不良を防ぐため、「レッドチェック」や「水没チェック」を行っているケースもあります。
赤い溶剤を内部に注入したり、水に入れるなどして、漏れを確認するのです。

ですが熱圧着の場合、何かの手違いで高熱に至らなかったといったことも考えられなくもありません。
いずれにせよ、このような原因であった場合は、包装工程や手法の見直しが必要になります。

包材選定や包装手法の不具合

包装手法そのものに不具合や手違いがあった、というケースです。
包装資材を切り替えたりする際に、場合によっては考えられる原因です。
当然、それに適した包材や手法に改善していく必要があります。

その他の原因

脱酸素剤自体の不具合なども、もしかしたらあるかもしれません。
脱酸素材といってもスペックは様々ですし、また脱酸素材自体に問題があった、あるいは保管方法を誤った、などといったケースです。
いずれにせよ、脱酸素材メーカーと話し合い、問題を解決していきます。

製造現場のカビ対策

このような包装工程上の問題に加え、考えなければいけないのは、製造現場におけるカビ対策です。

当たり前の話ですが、包装工程上の要因もさることながら、カビの多い環境であれば当然カビの問題が生じてもおかしくありません。
例えば加熱調理室が排気のため陰圧になっており、隣接エリアから気流と一緒にカビの胞子も流入している、などといったことがある場合も。

また、空調施設に問題が隠れていることもあります。
というのも、空調施設というのは、周辺の空気を吸引し吐き出して拡散させているからです。
この場合、空調施設のフィルター、さらには内部清掃などが必要になります。

ちなみにこのことはスポットクーラーも同様です。
それと時折、スポットクーラーで冷却をしている工場なども見かけます。
その場合、吹き出し口にカビが見られる、なんてことは論外なのですが、あの蛇腹の口は意外とカビやすいものです。

また結露などによりカビが浮遊しており、それが包装前の製品や包材、その他に付着し、結果カビが混入するということもありえるでしょう。

なお、パンではありませんが、「洋生菓子の衛生規範」では、作業場(清潔作業区域)における落下真菌数は10個以下にすることが望ましいと、指針を挙げています。

まとめ

以上、未開封のパンにカビが生じていた場合の原因と対策について、お話してきました。

尤もこれらのことは、一般的な食品メイカーの方であれば、当然ながら既知のお話であることでしょう。
というよりぼくより詳しく、さぞかし身をもってご存じのはずです。
寧ろどちらかといえばぼくたちの仕事は、これらのことを工場で行った後に、それでも不明な場合の調査だったり、あるいはその後のカビ除去の清掃相談だとか防カビ対策のご相談を受けるケースがほとんどです。

そんなわけで、カビの混入でお困りの方はどうぞ、弊社にご相談してみてください。

 

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