最新の食品業界ニュースからピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、キューピーのパスタソースで発生した異物混入による大規模リコールについてお話します。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

 

本日の時事食品ニュース

 


Kewpie

 

今日のお話の概要
  • キューピーのパスタソースに異物混入が確認され、自主回収が発表された
  • 今回の回収対象商品は、同社の「トマト&マスカルポーネソース」他計3品
  • 今回の混入異物は、破損したラインの設備由来の樹脂リングかと推測される
  • トマト加工品のシェアNO.1は「カゴメ」である
  • 自主回収は、本当にすべきかは甚だ疑問である

 

キューピーのパスタソースに異物混入

先日2019年10月23日、「キューピーマヨネーズ」などで知られる大手食品メーカー「キューピー株式会社」さんの製品に、樹脂の異物混入が確認され、8万個余りの自主回収対象となったことが報じられました。

以下ニュースを引用します。

 

キユーピーは23日、瓶入りパスタソース「キユーピー アレンジプラス」シリーズ3品、計8万3664個を自主回収すると発表した。
イタリアでの製造過程で軟質の樹脂製部品の一部が混入した恐れがあるため。現時点で消費者から苦情や健康被害の連絡はないという。

商品は「トマト&マスカルポーネソース」「トマト&ガーリックソース」「トマト&バジルソース」の3品で、賞味期限が2022年3月31日のもの。
社内で3日開いた試食会で異物が見つかり、現地調査の結果、ソースの原料を作る過程で製造設備の部品が紛れ込んだ可能性があることが分かった。

 

 

いやあ、キューピーさんもさぞかし、てんやわんやなことでしょう。
だってこれらはこの秋の新商品として販売がなされたもの。
ところが発売早々8万個以上のロット回収ですから、たまったもんじゃありません。
心中お察し、いや、あわせて懐のお察しいたします。

異物混入商品の詳細

さて、今回リコールの対象となっているのは、次の三種です。

リコール対象商品
  • 「トマト&マスカルポーネソース」
  • 「トマト&ガーリックソース」
  • 「トマト&バジルソース」

 

これらは何かと言えば、つまりは「トマトミックスソース」です。

「トマトミックスソース」というのは、パスタを主とするイタリア料理のソースとしての用途を目的として作られる、トマトベースのソースのことです。
主原料のトマトをペースト状にして、そこに商品ごとの味付けを加えていく。
要は、「味付きトマトソース」のことです。

で、これをキューピーが新たなビジネス展開として、市場に新商品を出した。
そしたら、運良く?社内の試食で異物が発見され、「マジかよ!?」となり、慌てての対応となった。
…ってのがどうも今回の顛末のご様子です。

異物混入のプロによる推察

何はさておき、今回のことで一番幸運だったのは、社内の試食で発見された、ということでしょう。

もしこれが購入した消費者先でのクレームとなっていたら、もうちょい面倒臭い話になっていた。
それを押さえ、消費者からのクレームが入る前に先手を売って「自主回収します!」と掲げられたのは、有る意味で幸運だったのかもしれません。

さて、今回の混入異物は、「樹脂リング」とのことです。
つまり、工場でのライン上の設備由来です。

「樹脂リング」が製造工程上混入するとすれば、まず疑うのはパイプのジョイントパーツなどの樹脂物か、じゃなきゃパイプのパッキン、というのが有力筋でしょう。
今回もどうやら(恐らくはストレーナーの)パッキンだという、レアだけどあるかもね話です。
まあ、何らかのことで破損したパッキンの破片が、フィルターを越えて入ってしまった、といったところなのでしょう。

この製品はイタリアで製造されたものの輸入品だということで、イタリアの工場の実状などぼくはまーったく知りません。
ですが、フツーに考えて、パッキンのリングがそのまま輪っかで入っているわけがありません。
ていうか、そもそもですけどまるっと一つリングが綺麗に入っていたら、大規模回収になんかならず、それ1個で「危ない危ない、ハイ終了」…てなわけにはいかんでしょうが、これほどには大きな話にもならなかった可能性がある。

この製品は、トマトソースをベースにあれこれ具材を加えて作られています。
三種にまで回収対象が広がった、ということは、肝心のベースであるトマトソースの製造工程で不具合が生じた、ということでしょう。
でなければ、企業はバカ高い回収費を使って、わざわざ三種も行ったりしません。

さて。
通常、トマトソースはストレーナー内のフィルターを経て製品化します。
大概はこのフィルターで異物が除去されるものです。

これが機能しなかったのは、よっぽどバラバラになった小さな異物だったのか、フィルターが甘かったのかのどちらかです。
これがどちらかなのは、ぼくには判らないところ。

いずれにしても、この製品、輸入品です。
ということは、イタリアの工場で作っているものを「キューピー」が輸入し、それを販売している。
契約形態にもよると思いますが、恐らくこの場合の回収コストは大半が「キューピー」持ちとなるのではないでしょうか。

8万本クラスの回収となると、そのコストはざっとウン百万円ってところが恐らくは相場かと思います。
何せ1本300円以上の価格での販売を見越して(コストを払って)営業をかけ、市場に流した8万本を、買い戻すんですからね。
それだけでも結構なもの。

いや普通に考えても、全国規模で物流コスト使ってかき集め、処分費用、保管費用だってバカにならんでしょう。
大体、瓶詰め品の、恐らくは空輸でのイタリア輸入品だから、それなりに仕入れも高いはず。それが利益ゼロどころか大きなマイナスになる。
企業にとっては、頭が痛くなる話です。
(保険に入っているかどうかは知りませんが)

更にはこれで消費者先に出ていった商品にクレームが付けば、謝罪だ検査だ報告書作成だ何だと、人件費まで含めたら普通1件で5~10万円くらいのコストが必要です。
これが何件あることやら判らない。
まあ今回、こっちは少なそうですが。

トマト加工品の牙城「カゴメ」

何よりも、スーパーなどでの販売機会を損なわれる。
売れるはずのものが、売れない。
企業にとっては、これが一番痛いでしょうね。
なにせ、ドーンと営業費をかけて全国に売り込んだ新商品です。
これがやもすればチャラになりかねない。

実は、この手のトマトソース製品は「カゴメ」の牙城です。
近所のスーパーに行けば、そのことが誰も一目瞭然のことでしょう。
試しに、今日の晩ご飯の買い物がてら、近所のスーパーマーケットの瓶詰めトマトミックスソースコーナーを見てみてください。
所狭しと、「カゴメ」の商品が並んでいるのを目にするはずです。
ぶっちゃけぼく自身、それを前にして、どんだけだよと驚いたくらいですから。(笑)

 

近所のヤオコーにて。
目立つ上数段が「カゴメ」です。

尤も、ヤオコーほどの大手なら様々な商品を置きたいでしょうから、これはまだマシなほう。
別のよりローカルなスーパーでは「カゴメ」が9割以上、残る1つは「デルモンテ」。
「キューピー」含む他メーカーの片手間品は扱っていませんでした。
そりゃ薄利多売なローカルスーパーは、確実に売れるものを一品入れたいでしょうからね。
さすがは日本国内のトマト加工品メーカーの王、このジャンルは断固譲りません。

つまり、こんな状況にマヨネーズ界のキング「キューピー」が参戦しようとしたのが、この今回の新商品だったわけです。
尤も、「キューピー」の主戦場はマヨネーズ。
こっちは所詮は脇役、言っちゃ悪いが片手間品でしょう。
実は「キューピー」も、マヨネーズだけでなく様々な食品を商品にして市場に出してます。
今回のトマトソースも、そんな一つでした。

 

興味を持って、「カゴメ」のを一つ買って来ちゃいましたよ。(笑)
ワインによく合う。チキンソテーに使おうかな。

…ってワタクシゴトはさておき。
「カゴメ」のこれは、しかしラベルを見ると、しっかり国内の工場を押さえて作っています。
こういうところ、やっぱりトマト加工品のトップシェアだけはありますな。
しっかり万全に構えて、本気で作っている。

かたやキューピーは、イタリアからの輸入品。
扱いというか、構え方自体が違います。
そもそも本気で市場に挑むのだったらやっぱり国内工場に依頼して、イチから商品開発するものです。

 

ヤオコーにあった、製粉大手「日本製粉」さんのトマトミックスソース。
大体、商品棚の真ん中よりかなり下のほうにありました。
メインの主役である「カゴメ」のものまではいかないが、それでも一応選択肢の一つとして置いておくか、みたいな。
ラベルを見れば、これもイタリアからの輸入品。
要は今回の「キューピー」の新商品と、扱いとしてはおよそ同ランクでしょう。

とはいえ、片手間などと侮る無かれ、言うても大手にとっての新商品は新商品。
このレベルの大手の新作ですから、そりゃ新商品として出すには社内企画から商品開発だって相応に重ねてしてきたはず。
そんな折角の販売機会の出鼻をくじかれたのが、今回の異物混入だったのではないでしょうか。

「自主回収」という現実選択

それともう一点、注目すべきこと。
それは、どうして「自主回収」をするか、ということです。

 

「食品の製品回収(リコール)」について、詳細は以前書いた↑この記事を読んでみてください。

そこにも書きましたが、一般的に行われている食品の製品回収(リコール)は、実際のところは「自主回収」、つまりその90%以上が今回のように、「企業が自主的に回収業務」を行っています。

これを一般の方々は「素晴らしい企業姿勢」だなどと、何も考えず素朴に受け取るかもしれません。
食品の安全安心を守ることに真摯に向かっている、云々。
はっきり言いますが、こんなん企業がやりたくてやってるわけじゃ、断じてありません。
ネットや風評で火が付く「けしからん!」が面倒くさいので、別に問題もさほど起こりそうにないのに、その先手を取ってリスク回避のためにやってるのが実状です。

大体「食の安全安心」のためを考えたら、大規模に行うムダな回収業務などにコストをかけるより、原因究明や再発防止の取り組みにかけるほうがどう考え立ったって数百倍意味があるでしょう。

 

そもそも、製品の回収理由には二種類あります。

一つめは、「食品衛生法」などの逸脱によって行政機関が命じる、行政主導の回収です。
これはもう、法律逸脱だから、仕方がない。
それに法律逸脱には、それ相応の理由がある。
ぼくらプロからしたって、「こりゃ回収せんとあかんわな」っていう話です。

ところが今回を含む、世での製品回収は自主的な理由によるもの。
この場合、どんなことが考えられるか。

企業の自主回収基準は、別に法にも業界団体基準などにも書かれていません。
ていうか、いないからこその「自主」回収です。

それでは実際は、どのように企業がその判断をしているのでしょうか。
その多くは、「社会への影響」と「事故の拡散性」という二つの視点から、次のことを鑑みて判断されています。

 

食品企業の自主回収判断基準
  1. 健康危害
  2. 法令への抵触性
  3. 発生件数(拡散性)
  4. 社会的影響

 

1の「健康危害」や、2の「法令への抵触性」については、まあ理解が容易くできるところでしょう。
健康危害、例えば食中毒やアレルゲンなどの深刻な食品安全に関わる問題であれば、それは確かに回収判断となってやむを得ない。

また2のように、ダイレクトな健康被害にはつながらないながらも、農薬の残留基準値や食品添加物が基準値を超えていた場合、あるいは消費期限、賞味期限のミスなどといった、法令違反にはならずともその抵触に関わる事柄の場合は、やはり回収判断対象になったとしてもそう不思議ではない気がします。

更には、「健康被害」や「法令への抵触性」がないとしても、問題が拡散してしまっている可能性のある場合にも、企業の責任として実施することに頷けます。
例えばバラバラになった昆虫の異物混入事故が生じた、などといったときには、その虫体が同ロットの複数製品中に入っていてもおかしくありません。

この場合、事故の「拡散性」を考慮し、回収対象となることも十分わかることです。
逆に言えば、昆虫の異物混入が残さずまるっと1匹入っていて、しかもそれが突発的な事故であると究明されれば、ロット回収されなくても問題はないでしょう。

しかし4つめの「社会的影響」。
これは、目に見えるかたちや数値がない分だけ、かなり微妙なところじゃないでしょうか。

企業側からすれば、「ブランドイメージの維持を目的に」、といったところかもしれません。
しかしこの要因こそが、実は昨今の回収件数を増している大きな要因となっていることは容易に想像できることです。

そしてこれは、やもすれば、何も知らないで無責任なことばかりを好き勝手に言う世間やメディア、ネット上などでの「けしからん」を恐れての「ごめんなさい」の素振りな反省回収、といったことに安直につながりかねない。

実際、多くの食品メイカーはこの理由によって仕方なく、「万が一のために」「万全を期すために」と口で言いながら、日々自主回収を行っているのが現実です。

キューピー側の対応をどう読むか

キューピーのホームページには、今回の事故に対する謝罪と説明が、以下のように書かれています。
重要な点だけ、以下に引用します。

「キユーピー アレンジプラス」異物混入による商品回収のお詫びとお知らせ

(略)現時点(10月23日)において、お客様からのお申し出はございませんが、下記の出荷地域で商品の自主回収を行いますので、お知らせいたします。
なお、本件による健康危害はなく(※)、また多発の可能性も低いと考えておりますが、万全を期すため、シリーズ3品を自主回収いたします。

※材質は食品工場の製造ラインで一般的に用いられている軟質の樹脂であり、衛生面での危害やその物自体にも毒性がないこと、また柔らかく口の中を切るなどの危害性もありません。

 

これをどう読むか。
まず、今回のことで健康被害は出てないし、多分出ませんよ、と書いてあります。
ぼくもそう思いますね。

今回の異物混入による健康被害の可能性は、「食中毒菌の付着による食中毒」か「物理的な怪我」です。
この商品は加熱殺菌されているため、異物に付着した菌による食中毒は考えられないでしょう。
また、柔らかな樹脂で口内を切った、なんてことは考えられないし、恐らく異物自体、そんな大きなものでもないはずです。

健康被害の危険性がないから、基本的には回収の必要がない。
また恐らく拡散性も少ない。

となると、先の回収条件の1、2、3はクリアしているから、普通は8万本までの製品回収まで行わない。
でも、「4の社会的影響を恐れるので」回収します、ってここには書いてあるわけです。
すっごい穿った見方ですが、上の「万全を期すため」の7文字の裏側に、ぼくにはこう書いてあるような気がします。

「自社工場商品じゃない輸入モノの片手間トマトソースの対応でしくじって「けしからん」の集中砲火をくらって、メイン戦力であるマヨネーズにまで飛び火したらたまらんので、新商品で手痛いけど、ここはやっぱりリスク回避で大規模回収する選択を社内で決めました」

さて、
そんな「社会的影響」のために「ごめんなさい」回収した8万本は、当然全て廃棄処分です。
どこにも流しません。
速攻、廃棄です。
もっかい流通したらクソ叩かれるので、そんなアホでリスキーなことは誰も絶対!にしません。ていうかするくらいなら最初からロット回収なんてしません。

どっかで、「安く再販売すればいい」「申告者にキャンペーンすればいい」などと無責任なことを書いているのを目にしましたが、そんなこと出来るなら最初からこんなことになってません。
大体、一旦流通した保管状態がよく判らないものを、どうしてメーカーが販売出来るんでしょうか。そこらの街の安居酒屋のパセリじゃあるまいし、再加工に必要な工場やラインや人員や流通や商品規格はどう用意するんでしょうか。
意味が微塵もわからない。
非現実的もいいところ、これで食中毒なんかが出た日には泣きっ面にスズメバチです。

毎度書きますが、「自主回収」というのは、原料資材を大量に使用し、資源も使って製造し、市場に流した食品を、何の問題もない可能性の高いものなのに、「万全を期す」だのといった言葉の裏での「けしからん」対策&「ごめんなさい」対応のために、大金を投じて回収し、全部残らず廃棄する、というものです。
これこそ無駄の極地、フードロスの真逆の行為以外の何者でもないでしょう。

それに何より、本来そんな大金は企業のためにもまた消費者のためにも、事故の原因究明と再発防止対策にこそ投資すべきじゃないですか。
にも関わらず、実際にはそのコストの多くが無駄な回収にあてられてしまっているのが実状だというのは、余りにバカらしい本末転倒な話でしかありません。

まとめ

このように、「製品回収」はただすればいい、というものでも、ましてやそれで企業の姿勢を見せようというものでも、元来的にはありません。
にも関わらず、多くを知らない人は、回収すれば「素晴らしい姿勢だ」と賞賛し、しなければ「けしからん」と非難しがちです。
こういう風潮こそが、企業がこのような大規模ロット回収を行う土壌となってしまっています。

出来ればこのような事実を多くに知っていただきたい、というのが食品衛生に関わる一介のプロの私的意見です。

 

今日のお話の概要
  • キューピーのパスタソースに異物混入が確認され、自主回収が発表された
  • 今回の回収対象商品は、同社の「トマト&マスカルポーネソース」他計3品
  • 今回の混入異物は、破損したラインの設備由来の樹脂リングかと推測される
  • トマト加工品のシェアNO.1は「カゴメ」である
  • 自主回収は、本当にすべきかは甚だ疑問である

 

 

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