初心者向け衛生管理講座。
今回は、前回の続き。「ISO 22000」について基礎的なお話をしたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 「HACCP」とは、科学的に微生物汚染を予防して食品安全を維持するための仕組み、手法のことである
  • よって「HACCP」は、本来「マネジメントシステム」そのものではない
  • 「一般的衛生管理プログラム(PP)」をも含めた「HACCPプラン」を行うことで、「HACCPシステム」が構築される
  • 「ISO 22000」は、「IS09001」+「HACCP」である
  • 「HACCP」導入のメリットは、食品安全上のリスクの「見える化」であり、その管理が出来るようになることである
  • 「HACCP」のデメリットは、国際基準としては弱いこと、「食品製造」が主対象であるため、認証業種が限られることなどである
  • 「ISO 22000」導入のメリットは、全フードチェーンに関わる事業体が認証取得出来ること、より強固な食品安全の管理体制の構築となること、国際基準としての品質のアピールが出来ることなどである
  • 「ISO 22000」のデメリットは、コスト(費用、人、時間など)が高いということである

 

 

HACCPとは

前回、「マネジメントシステム」や、食品におけるマネジメントシステム、「FSMS」、そしてその代表的な存在である「ISO 22000」について解説させていただきました。

 

そこで、「ISO 22000」てのは、「ISO 9001」をベースに「HACCP」を取り入れたものだよというお話をしましたね。

 

ISO 22000
ISO 9001+HACCP=ISO 22000

 

 

では、ここで超簡単にHACCPについても、「一応」触れておきましょう。

といっても「HACCP」とは、なんていくらでもネット上に情報としてあるでしょうし、「HACCP」についてはまた別途ガッツリとお話をせねばなりませんので、ここではえらく簡単にすませておきます。

さて。
つまるところ「HACCP」というのは、科学的に微生物汚染を予防して食品安全を維持するための仕組み、手法のことです。

これまでの食品安全は、出来た製品の幾割かをサンプリング検査し、それが安全であることで全体も同様だというような考え方によって成り立ってきました。
ですが、それだとたまたま偶然それが安全だっただけで、全体の安全を担保出来ません。

そこで考えられたのが「HACCP」です。
「HACCP」の根幹は「7原則12手順」ですが、ざっくり言えば次のような仕組みです。

「HACCP」では、食品の製造工程において何が危険なのかをまず分析します。
これが「危害要因分析」。
英語で言うなら、「Hazard Analysis」。
頭文字で略すると、「HA」。「HACCP」の「HA」がそれに当たります。

そしてそこで見つかった危害における工程上で最も重要な管理点を定め、そこを「監視」(モニタリング)することで全体の安全性を論理的に担保しよう、というわけです。

で、この「重要管理点」を英語で言うなら、「Critical Control Point」。
頭文字で略すれば「CCP」。
先の「HA」に続けて「CCP」となれば、「危害分析及び重要管理点」。
これが正式名、「Hazard Analysis and Critical Control Point」、略して「HACCP」です。

HACCPはマネジメントシステムか

ここで一点。
時折誤解されることがありますが、「HACCP」というのはもともとを言えば、元来的に「マネジメントシステム規格」ではありません。
というか、そもそも「マネジメントシステム」ではありません。

まず基本として、「HACCP」の目的は、「食品製造における安全の担保」です。
ですから、「ISOシリーズ」のような「マネジメントシステム」が求める全体的な継続的改善、あるいは顧客満足の向上などは、そこにありません。

またそのために、「HACCP」には重要管理点以外の一般的な衛生管理、いわゆる「一般的衛生管理プログラム」に対し、具体的な活動内容にそこまで逐一触れません。

凄い極論を言えば、「HACCP」ってのは、「工程上、せめてこれだけは絶対外すな」って話です。
「とりあえず、最低ここだけは外すなよ!食中毒やヤバイ事故になんぞ!」を守るための大枠、仕組み、ガイドラインが「HACCP」です。
(だからこそ、義務化に動いているわけです)

 

「HACCP」以前に、守るべき基礎的な衛生管理要件が「一般的衛生管理プログラム(PP)」です。
従業員の衛生管理、設備構造の不具合、防虫防鼠の管理などがそれに含まれます。

つまり「予めちゃんとしてますよね?大丈夫ですよね?」という前提の条件としてそれを経た上で、「工程上、これだけは絶対外すな」を守る、というのが「HACCP」の基本コンセプトです。
つまり本来はその基本的な衛生管理、「一般的衛生管理プログラム(PP)」の上に、「HAACP」があるべきです。
なので、「一般的衛生管理プログラム(PP)」の管理(マネジメント)は、「HACCP」内には含まれないのが、元来的な考え方です。

 

これらのことから、元来的に「HACCP」というのは、食品安全のための「マネジメントシステム」ではなく、あくまで食品安全のための工程上の考え方、概念、仕組み、ガイドラインであることが判るでしょう。

HACCPシステムとは

ただし。
一般的に「HACCP」と言ったら、「HACCPの認証をとるよ」、って話として出されますよね。
これは何かと言ったら、「HACCP」という考え方、仕組みを使った「マネジメントシステム」のことを指しています。
これを「HACCPシステム」と言います。

これは「HACCPプラン」、つまり「一般的衛生管理プログラム(PP)」が有る程度出来ていて、そしてその上で、しっかりと「7原則12手順」による食品安全のための工程管理を遂行出来ているかどうか、を評価するものです。

 

HACCPシステム
一般的衛生管理プログラム(PP)+HACCP(7原則12手順)

 

「HACCPプラン」を遂行しているか。
それを「HACCPシステム」というのですが、これは「HACCP」の管理のみならず、その根幹である「前提条件プログラム(PP)」が土台として出来ているか、が原則となっています。

つまり、「一般的衛生管理プログラム(PP)」をも含めた「HACCPプラン」を行うことで、「HACCPシステム」が構築されるのです。

ISO 22000は、ISO 9001+HACCP?

で、話を「ISO 22000」に戻しましょう。

 

「ISO 22000」というのは、先にも書いたように「ISO 9001」をベースとして作られています。
食品安全のニーズの高まりに対応すべく、食品業界特有の「要求事項」で作られていますが、そのベースとなっているのは、「品質マネジメントシステム規格」である「ISO 9001」です。

で。
ここに、「HACCP」の工程管理手法を加えることで、「ISO 22000」は成立しています。

言ってみれば、「ISO 22000」というのは、「HACCP」という食品安全の仕組みを、「ISO 9001」という品質に対する「マネジメントシステム」のベースに組み込むことで「FSMS」に仕立てたものです。

 

「ISO 9001」をベースにしているだけあって、製造業に偏っていた「HACCP」よりも適用範囲が広いのが特徴です。
生産は勿論、流通、販売まで。
フードチェーンに関わる全ての事業体がその対象となり得ます。

「HACCP」が当初にうたっていた理想、「農場から食卓まで」を全て補ったのが、この「ISO 22000」となります。

そもそも、「HACCP」はかの80年代冷戦期に、食中毒が許されない宇宙空間での安全性確保のため、「アメリカ航空宇宙局(NASA)」で生まれた考え方です。
それが、「史上最悪の食中毒」と呼ばれる悪名高き1988年のO-157での大規模食中毒をきっかけに広まり、その後1993年にコーデックによってガイドライン化されました。

ところがこのガイドラインを元に、各国が各々の「HACCP」を作り始めます。
そこで各国ごとの「HACCP」が生まれ、基準化され、やがて非関税障壁になっていきました。
各国の「HACCP」に適合しないと輸入輸出が妨げられる、となったのです。
そこで貿易の自由化のため、国際的な基準が求められ、2005年に「ISO 22000」が生まれた、というわけなのです。

「ISO 22000」と「HACCP」のメリットとデメリット

各々の違いがわかったところで、次によく出てくるのが、では「ISO 22000」と「HACCP」のどちらの「FSMS」の認証を取得すればいいのか、という話です。

これは双方のメリットとデメリットを比べてみれば、自ずと自身の企業に適したものが見えることでしょう。
では改めて各々の特徴を並べてみましょう。

「HACCP」のメリットとデメリット

まず「HACCP」は、先の通り、食中毒などの微生物汚染を予防するための仕組みです。
これを用いた「HACCPシステム」は食品製造業種に特化したマネジメントシステムです。

これのメリットは、これをしっかりと導入、構築すれば、食品安全上のリスク管理が出来るようになることです。
工程を分析し、様々な危害を想定することで、リスクの「見える化」がなされます。

と同時に、このところ急増しているとはいえ、国内では認証取得企業も限られているため、「HACCP」義務化に向けた差別化になるかもしれません。

一方のデメリットは、この通り「食品製造」が主対象であるため、認証業種が限られる、ということ。

それから「HACCP」の運用基準は、国、あるいは各認証団体によって異なるため、国際基準としては弱いところがあります。
それが国際基準である「ISO 22000」と最も大きく違う点です。

ただし、そもそも国内流通に限定している企業において、「ISO 22000」が求められるほどの国際的な規格認証が必要か否かは、各事業種に大きく事情が異なるところでしょうから、各々の事情に照らして考えればいいと思います。

更に言うなら今後益々「HACCP」義務化の動きが進むにつれて、先のような差別化の意味合いが希薄化する可能性だってあるかもしれません。

「ISO 22000」のメリットとデメリット

かたや「ISO 22000」は、より本格的なマネジメントシステムです。

先にも触れたように、「ISO 22000」は「HACCP」以上に対象が広く、生産、流通、販売に至るフードチェーンに関わる全ての事業体が認証取得することが出来ます。
これをしっかりと導入、構築すれば、より強固な食品安全の管理体制を作ることが出来ます。
と同時に、「ISO 22000」は国際規格ですから、それによるサービス、製品のアピールも出来るでしょう。

その他食品安全におけるメリットは、「HACCP」を軸にしているため、基本的には同様です。
これらに加え、社内業務の画一化は、業務のムリ、ムダ、ムラの解消にもよる効率化を進めることにもなるかと「期待」できるところでしょう。
(期待、ね。)

それとこれは「HACCP」にも言えることなのですが、まだ比較的「ISO 22000」のほうが一歩踏み込んでいる、ということで一つのメリットかもしれません。

「HACCP」にも「ISO 22000」にも、「重要管理点(CCP)」以外の守るべき衛生管理項目があります。
「一般的衛生管理プログラム(PP)」というものです。
これについて「HACCP」では明確な内容や基準を定めていません。
ですから、各認証団体で各々の基準を定めるといった状況になっています。

対して「ISO 22000」は、規格要求事項に「前提条件プログラム(PRP)」、「オペレーションPRP(OPRP)」として、規格要求事項に定めてあるのです。
尤も、その内容は各社それぞれで決めるので、実際に差が生じることがあるのもまた事実でしょう。

 

一方のデメリットは、「ISO 22000」の認証取得はそれなりにコストが大きいということでしょうか。
コンサルを入れないと認証が難しい場合が多く、またそのぶんだけ相応の出費を覚悟したほうがいいでしょう。
同時に、人、時間、手間などについても、思いの外かかるかと思います。
恐らく、コンサルを入れて1年がかりで、200万円以上のコストを費やして認証取得するのが一般的かと思います。

まとめ

前回、今回と、「ISO 22000」について、また「マネジメントシステム」や、「HACCP」との関連性についてお話してきました。

少々複雑なお話だったかもしれませんが、ご理解が進んだら光栄です。
この調子でそのまま「FSSC 22000」についても解説をしていく予定です。
おたのしみに。

 

今日のお話の概要
  • 「HACCP」とは、科学的に微生物汚染を予防して食品安全を維持するための仕組み、手法のことである
  • よって「HACCP」は、本来「マネジメントシステム」そのものではない
  • 「一般的衛生管理プログラム(PP)」をも含めた「HACCPプラン」を行うことで、「HACCPシステム」が構築される
  • 「ISO 22000」は、「IS09001」+「HACCP」である
  • 「HACCP」導入のメリットは、食品安全上のリスクの「見える化」であり、その管理が出来るようになることである
  • 「HACCP」のデメリットは、国際基準としては弱いこと、「食品製造」が主対象であるため、認証業種が限られることなどである
  • 「ISO 22000」導入のメリットは、全フードチェーンに関わる事業体が認証取得出来ること、より強固な食品安全の管理体制の構築となること、国際基準としての品質のアピールが出来ることなどである
  • 「ISO 22000」のデメリットは、コスト(費用、人、時間など)が高いということである

 

 

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