今の食中毒事情はどのようになっているのか。
どんな傾向が、トレンドが、今食中毒に見られるのか。
衛生管理のプロが、そんな食中毒データを判りやすく解析します。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 平成30年の食中毒データが厚生労働省から発表された
  • 食品衛生法により、食中毒が生じた場合は医師から保健所、自治体、厚生労働書へと報告する義務がある
  • 昨年ついにアニサキスが食中毒事件数のトップランカーになった
  • ノロウィルス、カンピロバクターはやはり事件数、患者数ともに多い
  • ウェルシュ菌での食中毒は大規模化しやすいため、患者数が多くなる
  • 自然毒での食中毒は時折死者が出る

 

 

平成30年の食中毒データを見てみよう

昨日の記事にも取り上げた、平成30年の食中毒データ。
これは厚生労働省が夏頃に集計してアップしたデータであります。

 

 

では、このデータから何が読み取れるのか。
そして、現在の食中毒の傾向やトレンドはどのようになっているのか。

今回はそれを見ていくとしましょう。

厚生労働省にあがってくる情報とは

その前に。
どうやって、厚生労働省が日本の食中毒情報を集めているか、少しお話しましょうか。

まず、飲食店などで食べたお客さんが食中毒になったとします。
そのお客さんは病院に行くでしょう。
お医者さんが診察し、こりゃ食中毒ですね、となる。
そうなるとお医者さんはそれを保健所に届け出しなければなりません。

食中毒というのは、広域性が一番怖い。
だからお医者さんは例え確定診断に至らなくとも、つまり「疑い」の場合であっても、24時間以内に最寄りの保健所へその情報を届け出る義務を受けています。

そしてそれを受けた保健所は、すぐさま自治体に報告するとともに、その調査を進めます。
保健所の立ち入り調査は、およそ1日程度。
更に食中毒になったお客さんにヒヤリングなどを行うなどして、数日内に飲食店への行政処分を決定。
その報告を、自治体にあげる。

で、その情報が自治体から厚生労働省へとあがります。
こうやって集まった情報が、この食中毒データとして集積されていくわけです。

 

このことは食品衛生法の第58条に書かれています。
以下がその法的根拠です。

【食品衛生法 第58条(中毒患者の届出)】

1、食中毒患者等を診断し、又はその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない。

2、保健所長は、前項の届出を受けたときその他食中毒患者等が発生していると認めるときは、速やかに都道府県知事等に報告するとともに、政令で定めるところにより、調査しなければならない。

3、都道府県知事等は、前項の規定により保健所長より報告を受けた場合であつて、食中毒患者等が厚生労働省令で定める数以上発生し、又は発生するおそれがあると認めるときその他厚生労働省令で定めるときは、直ちに、厚生労働大臣に報告しなければならない。

4、保健所長は、第2項の規定による調査を行つたときは、政令で定めるところにより、都道府県知事等に報告しなければならない。

5、都道府県知事等は、前項の規定による報告を受けたときは、政令で定めるところにより、厚生労働大臣に報告しなければならない。

 

平成30年の食中毒のトピック

では、そのようにあがってきた平成30年の食中毒事情を見てみます。

前回お話したように、食中毒データは幾つかの特徴的な見方があります。
それは「多い食中毒」というときに、何をもって「多い」とするのか、ということです。
というのも、食中毒の「多さ」は、「事件数」と「患者数」の二種に分けられるのです。

 

食中毒の「多さ」の見方:食中毒の状況別分類
  • 事件数:食中毒が発生した件数
  • 患者数:食中毒になった人の数

 

「事件数」とは、食中毒が発生した件数のこと。
「患者数」とは、食中毒になった患者の数のこと。
これら双方から、「食中毒の多さ」を判断します。

 

では、平成30年の「多かった食中毒」は何でしょうか。
じゃん。

 

事件数の多かった食中毒
  1. アニサキス:468件
  2. カンピロバクター:319件
  3. ノロウィルス:256件

 

患者数の多かった食中毒
  1. ノロウィルス:8,475人
  2. ウェルシュ菌:2,319人
  3. カンピロバクター:1,995人

 

とまあ、このように「事件数」と「患者数」では結果が大きく変わるから面白い。
このことから次のことが言えるでしょう。

 

平成30年の食中毒の注目点
  • ついにアニサキスが食中毒事件数のトップランカーに
  • 一番患者数が多かったのはノロウィルス
  • やっぱり多いカンピロバクター
  • 何故か患者数だけ多いウェルシュ菌

 

ではこれらを一つ一つ見ていくとしましょう。

ついにアニサキスが食中毒事件数のトップランカーに

昨年、一番事件数が多かった食中毒は、アニサキスでした。
これ、昨日のTBSのテレビ番組「ゲンキの時間」でも報じられていましたね。
赤い折れ線がアニサキスです。

 

昨年の食中毒統計の一番の目玉が、実はこれ。
そう、ついにアニサキスの事件数がノロ、カンピロの二大巨頭を抑えてトップに躍り出たのです!

…て、別にめでたいお話じゃないですね、すんません。

アニサキスが正式に食中毒項目と認められたのが、平成25年のこと。
それから、上のテレビで報じていたグラフのように、めきめきと事件数が上昇。
一昨年に、巨頭の一角、ノロを追い抜き、そして昨年カンピロを追い抜いて、登録5年目にして念願の一位を獲得。
いや、だからめでたいわけじゃねえっつーの。

そんなわけで、近年やたらめったら増えているのが、このアニサキスです。
実は今年の上半期の速報でも、結構な数を見ています。
カウントしていませんが、事件数だとやっぱり一番多いんじゃないかなってなくらい多い。


Wikipedia

アニサキス食中毒の事件数が増えた理由

そんな最近のトレンド、アニサキス。
なんでこんな増えたのかって話なんですが、諸説あります。

まず、よく言われるのが「元々昔から多かった」説。
だけど世に認知されず、公式に認められたのが5年前。
それでいきなり食中毒の表舞台に出てきた、という。
表なのか裏なのかは判りませんが(笑)、いずれにせよ可視化され、注目が集まった。
医師の報告義務も加わったので、ないがしろに出来なくなった

このような注目ぶりには芸能人も実は一役買っていたりします。
例えば渡辺直美さんがテレビで「痛すぎて泣いた」などと語ったりしたことで一躍有名になったのも、記憶にまだ新しい話。


吉本興業

 

また病院での内視鏡技術や、対アニサキスの診断技術の向上説、というのもあります。
こんだけ増えていれば、医療技術だってそりゃ上がるというもの。
結果的に、アニサキス食中毒だと診断される機会が増えた、と。
成る程、ぼかあ医療には詳しくありませんが、一理はあるかもしれない。

更には、魚介類の流通技術の向上説。
つまり生鮮食品の低温流通が発達して、遠隔地で水揚げされた新鮮な魚が出回るようになったから、なんてことも言われていますが、どうですかね。
5年でそんな変わるものかね?(笑)

いずれにせよ、アニサキス自体が増えているというわけではないことがわかるでしょう。

患者数も事件数も多いノロウィルスとカンピロバクター

一方で、毎年一定の安定した人気をほこっているのが、ノロとカンピロ。
いや、人気じゃねーよ。

特にノロウィルスは、事件数も患者数も多い。
これは感染力が高いので、患者数が上がりやすい、ということが大きく関わっています。

他方、カンピロバクターは、ここしばらくの鉄板食中毒。
昔はそれほどでもなかったカンピロですが、実はしかしこの20年で大きく件数を増やしています。

何せ90年代半ばくらいまでは年間50件程度だった事件数が、今じゃ300件越え。
明かにここ20年で増加している食中毒。
例えば(同じメインが鶏由来でも)サルモネラなどのように普通は減っていくものです。
実際90年代と比べて、サルモネラや腸炎ビブリオなどの細菌性食中毒は減っています。
ですが、カンピロは減らない。寧ろ増加すらしてる。


一般財団法人 東京顕微鏡院

いい表なので拝借。
つってもソースは厚生労働省データでしょう。
このようにカンピロバクターの発症施設は、飲食店がダントツで一番です。
若干古めですが、あるデータではその9割が飲食店(と旅館)。

次いで学校給食など。
一般家庭での発症は1割にすら達してない。

要は、飲食店でのカンピロバクター対策を進めない限り、カンピロバクター食中毒は減らない、ということです。
そして20年以上の昔と何が違うのかといえば、恐らくは飲食店での生食じゃないでしょうか。

昨日のテレビ番組では医者が家庭のキッチンにドヤ顔でダメ出ししていましたが、そんなことより飲食店、が実はカンピロなのです。

 

業を煮やした厚生労働省は、一昨年、おまいらいい加減にしろと「カンピロバクター食中毒対策の推進について」という指導勧告を飲食店向けに発表しました。
要するに、おまえら生肉食わせんなよ、加熱ちゃんとしろよ、とお上が飲食店相手に注意したわけです。

カンピロバクターは少数菌で発症します。
だから鶏刺しはカンピロのロシアンルーレット。
鮮度がいいから、とか関係ありません。
あ、カンピロは空気中で生きていけないので、寧ろ新鮮なほうがヤバイです。これ覚えといてください。
なおカンピロバクターについては、下記事も参照どうぞ。

 

なんでウェルシュ菌の患者数が多いのか

さて、もう一つこのデータの面白いのは、ウェルシュ菌の患者数が多いってことです。
これどうしてだと思います?

 

ウェルシュ菌は、事件数でいえば、かなり少ない。
だって、年間32件しかない。
同じ細菌性食中毒だって、先のカンピロバクターは年間300件越えしてるのに、です。

にも関わらず患者数が多いってことは、つまり大規模な集団食中毒が起こりやすいってことです。
何せウェルシュ菌は一発出ると、たやすく三桁レベルの集団食中毒になる。

結果、たった年間8件なのに、患者数がカンピロより多い2000人越えになっている。

アニサキスと逆なんですね。
あっちは魚1匹の問題だから、患者数が多くて数人レベル。
つまり、事件数と患者数が解離せず、ほぼ同じになりやすい。
だから年間の事件数468件に対し、患者数478人と、10人しか差が生じていない。

かたやウェルシュの事件数と患者数の差は、ハンパない。
桁に注目して見てください。
下は、昨年の「ウェルシュ菌」だけの食中毒の「事件数」と「患者数」の月別数値グラフです。

 

左の桁を見比べてみてください。こんなに差があります。
特に6月、やばくないですか?
事件数が4件なのに、患者数は900人近い。
何が起きたんでしょうか。

実はこれ、昨年イチの大規模集団食中毒による影響です。
やっぱりウェルシュ菌。
京都の刑務所で、6月に621人もの集団食中毒を引き起こしたった。

 

さらに集団食中毒の二番手も、やっぱり同月に発生した刑務所でのウェルシュ菌食中毒でした。
こっちは仙台の刑務所で、249人。
この二つの刑務所食中毒だけで、計870人ですよ。
両方ともウェルシュ菌。
事件数はたった2件なのにもかかわらず、です。

で、その結果、ダントツに6月の食中毒患者数が高まっています。
これ、こいつの底上げがめっちゃ効いている。
何せ二発で870人ですからねえ。

昨年の細菌性食中毒全体の「患者数」と「事件数」グラフを見てみます。
6月に注目。

 

ほら、6月を見ると、下の「事件数」に対して上の「患者数」がやっぱりめっちゃ高くなってるでしょ?
これ、そういう理由です。

ちなみにそれらは刑務所での食中毒でしたが、おととい警察でもやらかしがありました。
こっちはこっちで、ウェルシュ菌で、一発86人。
あやうく三桁台手前です。
捕まえる方も捕まった方も、両方ともウェルシュ菌にやられたった。

NHK NEWS WEB
警視庁警察学校で集団食中毒|NHK 首都圏のニュース
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20190913/1000036062.html
東京・府中市にある警視庁の警察学校で、先月下旬、研修生86人が下痢や腹痛などの症状を訴えていたことが分かり、保健所は、昼食で食べた弁当が原…

 

たまに出る自然毒での死者

最後に。
数は少ないのですが、たまに見るのが自然毒での食中毒。
似たものを間違って食べて、ヘタすると死者が出ます。

 

昨年の食中毒での死者は3人。
いずれもこの自然毒での食中毒です。
みんな田舎で起こってる。

例えば、田舎のじいさんやばあさんが、庭に生えているスイセンをニラだと思って食べて、食中毒になる、という話。
食べるかフツー!?と思うのですが、実際ぽろぽろ起きています。

昨年は4月に北海道で、自宅に生えていたイヌサフランをギョウジャニンニクと間違えてジンギスカンに入れて死者が出ました。
入れるかフツー!?と思うのですが、やっぱりこうやって起きている。
しかも同じ北海道で、同じイヌサフランで、7月にも同じことやらかして、死者が出てる。
繰り返すかフツー!?

なので厚生労働省も、おじいちゃん家に生えてるもんむやみに食べないでね、と勧告を出してます。

まとめ

今回は、平成30年の食中毒データから読み取れることをプロの観点からお教えいたしました。
既にこの夏の食中毒データも速報として上がりはじめています。
もう少ししたら、これらについても触れてみたく思います。

 

今日のお話の概要
  • 平成30年の食中毒データが厚生労働省から発表された
  • 食品衛生法により、食中毒が生じた場合は医師から保健所、自治体、厚生労働書へと報告する義務がある
  • 昨年ついにアニサキスが食中毒事件数のトップランカーになった
  • ノロウィルス、カンピロバクターはやはり事件数、患者数ともに多い
  • ウェルシュ菌での食中毒は大規模化しやすいため、患者数が多くなる
  • 自然毒での食中毒は時折死者が出る

 

 

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