テレビ番組でやっていた、「食中毒」の特集。
これをプロの衛生管理屋が見たらどうツッコミするのか。
今回は、「一年で食中毒が一番多いのは9月」が本当なのかウソなのか、探ってみたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • TBSテレビ「ゲンキの時間」(2019年9月15日7:00~放送分)で「食中毒」特集が放送されていた
  • 番組内では「9月が一番食中毒が多い」とデータを出して放映していた
  • 食中毒の「多さ」には、「事件数」と「患者数」の二つがある
  • 食中毒には、細菌性食中毒、ウィルス性食中毒、寄生虫による食中毒など種類がある
  • 平成30年の9月は、細菌性食中毒の事件数が年間で一番多かった
  • だからといって毎年9月が一番細菌性食中毒が多いというわけではない
  • 9月はカンピロバクターによる食中毒が多い
  • 結論として、残暑が厳しい9月は夏季とほぼ同様に細菌性食中毒が多い時期である

 

 

「9月が一番食中毒が多い」ってホント?

飲みすぎた今朝のこと。
ふと起きてテレビを付けると、TBSの朝番組「ゲンキの時間」で、「食中毒」の特集が扱われていました。
(2019年9月15日7:00~放送分)

 

 

ほうほう、こりゃ面白そうだとコーヒーを入れ、しばらく眺めていました。

医者が家庭の食中毒の危険性をチェック。
いや、あなた医療の専門家だけど、衛生管理や冷蔵庫のプロじゃないでしょ(笑)。

 

このほかにも、「セレウス菌」なんてマニアックめな食中毒菌を取り扱ったり、一番多い食中毒はアニサキスだなどと触れてみたりなど、そこそこ興味深い内容。

そして。
何よりぼくが一番ショッキングだったのは、微生物のガチな専門家が「芽胞」を、「が↑ほう↓」と発音していたことです。
ええ、「が↓ほう↑」じゃないの!?

おっと、
それはさておいて、本題。
見ていて時折「ん?」ということが。

それは「年間を通じて9月が一番食中毒が多い」、ということです。

これ、本当なのでしょうか。
今日はそんなテレビ番組の内容について、プロの衛生管理屋がチェックを入れていこうではありませんか。

何が「一番多い」のか

まず番組では冒頭に、「9月は食中毒が一番多い」とデータを出してきています。

 

さあ、9月が一番食中毒が多いってホントなの?

答えの前に、そもそも「このデータのソースは何よ」という話からしないといけません。

平成30年(2018年)、つまり去年の食中毒集計結果が、厚生労働省からこの夏に出されました。
世の多くの食中毒統計は、これを根拠にしていることが多いです。
そしてこのグラフも、そのデータを元に番組がオリジナルで作ったものであろうと思われます。

 

さて、それじゃこのデータを見ながら、「何月が多いのか」を見ていこうかと思うと、まず最初にとある疑問が浮かび上がることでしょう。
それは、

「一番多い」って、何が?

ってことです。

「事件数」、つまり食中毒が起きた件数のことなのか。
それとも「患者数」、つまり食中毒になった人の数のことなのか。

更に言えば、「死者数」だったり、「一事件あたりの患者数」だったりなど、統計からはいかようにも「一番多い」ものが言えることになる。

更に、「どこまでの食中毒とするのか」、ということも考えなくてはいけません。
実は「食中毒」といっても、その要因別に幾つかに分類されるのです。

「細菌」によるものだけなのか。
「ノロウィルス」など、「ウィルス」によるものも含むのか。
「アニキサス」など、「寄生虫」によるものも含むのか。
これでも話が大きく変わってきてしまいます。

 

更に突っ込んで言うならば、これらは行政(つまりは保健所)への届け出の件数であって、届け出されていないものの数は含んでいません。
また日本全国の件数であって、地域単位でも話は変わってくることでしょう。

ま、少なくとも「食中毒の多さ」を見るという場合、次のことは考えないといけません。

 

食中毒の「多さ」の見方 その1:食中毒の状況別分類
  • 事件数:食中毒が発生した件数
  • 患者数:食中毒になった人の数

 

食中毒の「多さ」の見方 その2:食中毒の要因別分類
  • 全ての食中毒総数
  • 細菌性食中毒
  • ウィルス性食中毒
  • その他の食中毒(寄生虫、化学物質、自然毒など)

 

 

平成30年は9月が、細菌性食中毒の事件数が一番多かった

それらを一応踏まえて、厚生労働省の集計データを見てみましょう。
以下はぼくがそれに基づいて作ったグラフです。

まず、平成30年度の全ての食中毒総数を、事件数別、患者数別に見てみます。

 

全ての食中毒を見ると、9月だけが多いように見えません。
4月、5月のほうが、食中毒件数は多いですし、患者数からすれば寧ろ9月は少なめ。
12月が一番多く、ほぼ々くらいに3月、4月となっています。

これを見れば、普通3~5月に食中毒は多いのかな、と思うことでしょう。

ただしこのデータは細菌性、ウィルス性、ともに含めた全ての食中毒を含んでいます。
一般的にノロウィルスは冬に多いですし、細菌性の食中毒は夏季に多い。
それらをひっくるめるとこうなりますよ、というデータです。

続いて細菌性食中毒のデータを見てみます。

 

おお、この事件数のデータでやっと9月が、にゅん!と伸びてきましたね。
番組のデータはこれを元にしています。
数値もまさにその通りです。

 

その意味では、9月に食中毒が一番多かったというのは、確かに正しい。
ただしこれ、正確には「平成30年の9月は、細菌性食中毒の事件数が年間で一番多かった」です。

それと番組で取り扱ったアニサキスも、ここには入ってません。
つまり、こっちじゃ9月が多いことを伝えたいためにアニサキスの入っていないこのグラフを使い、向こうじゃ食中毒で一番多いのはアニサキスだと、アニサキスの入っているデータを使っている。
ウソでは全くないし、判りやすさ重視だと言えますが、でもダブルスタンダードだと言われても仕方ないかな、位には「少しだけ」思いますね(笑)。

細菌性食中毒の患者数が6月に多かった理由

さて一方で、患者数を見てみましょう。
はい、もっかいグラフを。

 

すると6月をピークに段々と減っているではないですか。
これは何故でしょうか。
これはウェルシュ菌の大規模食中毒が6月に発生したせいなのです。

そのうち大きくとり扱いますが、実は、ウェルシュ菌の食中毒って大規模になりやすいんです。
だから1回の事件で、どばーっと大量に患者が出る。
そこでいきなり患者数が跳ね上がる。

例えばついさっき知りましたが、警察学校で昨日ウェルシュ菌の食中毒が発生しました。
これなんかもいい例です。

NHK NEWS WEB
警視庁警察学校で集団食中毒|NHK 首都圏のニュース
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20190913/1000036062.html
東京・府中市にある警視庁の警察学校で、先月下旬、研修生86人が下痢や腹痛などの症状を訴えていたことが分かり、保健所は、昼食で食べた弁当が原…

 

この例でも、86人が食中毒になっている。
こうやって給食や弁当などで発生しやすいので、患者が増えやすいんですね。
でも事件数からすれば1件は、1件です。

ちなみにノロウィルスのデータも見てみましょうか。

 

事件数のデータでは、11月から上昇し始め、3月がピーク。
一方で患者数では12月がピークです。

それと7月は少ないですが、意外と8月、9月にもノロウィルスが発生していることもわかります。
へー、面白い。
勉強になるなあ(笑)。

9月はやはり食中毒が一番多いのか

先程、厚生労働省のデータを元にして、
正確には、「平成30年の9月は、細菌性食中毒の事件数が年間で一番多かった」
と書きました。

つまり、このことは毎年9月に細菌性食中毒の事件数が多いというわけではない、という意味を含んでいるわけです。

では実際にはどうなのでしょうか。
本当に9月が1番多いのでしょうか。

先程の厚生労働省のデータをあと数年振り返ってみてみます。

まず、一昨年から。
平成29年(2017年)の細菌性食中毒の事件数を見てみます。

 

成る程、確かに9月が一番多く発生しています。
やっぱり9月が一番食中毒が多いのでしょうか。

では三年前、平成28年(2016年)は…

 

おや、8月に抜かれましたよ!?
四年前、平成27年(2015年)は…

 

んんんー?
6月をピークに、9月はかなり激減していますね。

んじゃ五年前、平成26年(2014年)は…

 

7月がぐんと上がってます。
9月は多いけれど、別段突出しているわけではない。

とまあこのように追ってみていくと、成る程、確かに9月は細菌性食中毒の件数が多い月ではある。
でもだからといって9月が毎年一番多いというわけではないことがわかるでしょう。

9月にはどんな食中毒が多いのか

ではもう少しデータを追ってみます。

少なくとも昨年、平成30年(2018年)は、9月が一番細菌性食中毒の事件数が多かった。
これは事実です。

また毎年、一番じゃないときはあっても、それなりに9月は食中毒が多い月だというのも、これまでで判りました。

ではどうして9月は食中毒が多いのでしょうか。
どんな細菌性食中毒が多いのでしょうか。
まずは昨年、平成30年(2018年)の細菌性食中毒の事件数の要因うちわけを見てみましょう。

 

これは平成30年9月の細菌性食中毒の事件数のうちわけを示したグラフです。
これを見ると、成る程、9月度は「カンピロバクター」による食中毒が一番多いことが判ります。

実はカンピロバクターは、細菌性食中毒の中で一番事件数が多い食中毒菌の常連トップランカーです。

ちなみに平成30年の、細菌性だけでなく全食中毒の事件別うちわけがこちらのグラフです。

 

食中毒全体の事件数として見ても、ノロウィルスより高く、一番多いとテレビでも言われていたアニサキスに迫っていることがグラフからもわかるでしょう。

ではこの一番多いカンピロバクターが、どのように発生しているのか。
平成30年の月度別カンピロバクター食中毒の事件数を見てみます。

 

ほら、9月がやっぱり多い!

このように6月、9月にカンピロバクターの食中毒が増えています。
これらのことから、9月はカンピロバクターによる食中毒が多いために増加したことがわかります。

何故9月に細菌性食中毒が多いのか

さて、どうして9月に食中毒が多いのでしょうか。

テレビ番組では「夏の暑さによる免疫力の低下」を指摘していました。
でも、だったら真夏のほうがより免疫力は低下しているはずですよね。
それは理屈に合わないんじゃないかなあ(笑)。

行楽シーズンなので、外で食べる機会が増える。
まあそれは確かでしょう。
でもだったら真夏も海や山に出かけたり、お弁当食べますよね。

そもそも9月だけが毎年突出して細菌性食中毒が多いわけではないことは、上のデータの通りです。
ですから「9月も」多い、という話です。

10月ほど涼しくもなく残暑が厳しい9月は、夏同様に菌の活動が高まりやすい。
結果的に、夏場とそれほど変わりなく、食中毒が発生しやすくなる。
これらから言えることはそのくらいの話でしょう。

まとめ

今回は平成30年の厚生労働省のデータに基づきながら、9月の食中毒の実状について迫ってみました。
ですが、このデータ、他にも見どころが一杯あります。
また別の機会に少しそれらを追っていきたく思います。

 

今日のお話の概要
  • TBSテレビ「ゲンキの時間」(2019年9月15日7:00~放送分)で「食中毒」特集が放送されていた
  • 番組内では「9月が一番食中毒が多い」とデータを出して放映していた
  • 食中毒の「多さ」には、「事件数」と「患者数」の二つがある
  • 食中毒には、細菌性食中毒、ウィルス性食中毒、寄生虫による食中毒など種類がある
  • 平成30年の9月は、細菌性食中毒の事件数が年間で一番多かった
  • だからといって毎年9月が一番細菌性食中毒が多いというわけではない
  • 9月はカンピロバクターによる食中毒が多い
  • 結論として、残暑が厳しい9月は夏季とほぼ同様に細菌性食中毒が多い時期である

 

 

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