衛生管理・異物混入対策のプロフェッショナルが、大手一流食品メーカーに異物クレームをつけたらどうなるか!?
今回からはその顛末を、リアルタイムでお伝えいたします(笑)。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 異物対策のプロの家で、缶チューハイ内への金属片の混入事故が発生した
  • メーカーにとってクレームは重要な情報でもある
  • 異物混入の対応①まずは状況把握。自分由来の可能性を確認する
  • 異物混入の対応②異物をルーペや顕微鏡でよく観察する。明かに金属片。
  • 缶チューハイの製造工程上、金属異物の混入はほとんど発生しない
  • メーカーに連絡する前に、準備すべきこと、もの。これらが揃ってないと相手もしてくれない可能性大。
  • メーカーに電話し、クレーム担当に事情報告。案の定、大きく警戒される。
  • その後、検体は検査機関にてX線分析試験にかけられ、どんな金属かが検出される予定

 

 

二日続けての異物混入遭遇

それは、長野から帰ってきた日の夜のことです。
夜、長旅から帰ってきたぼくは、服を着替え、ふうと我が家のリビングに戻って、冷蔵庫にあった某社の缶チューハイとグラスを取って、テーブルに腰掛けました。

4時間もの長時間運転で疲れ切ったぼくは、ようやくウチに帰ってお酒が飲めるということもあって、意気揚々とチューハイの蓋をプシュり、グラスに注ぎました。

(敢えてメーカー名は伏せておきましょう)

 

んじゃあ、乾杯。
心の中で呟きながらグラスを傾けようとしたその時。

ん?
なんだこれ?

グラスの中にあるものを見つけたのです。

 

え、金属片!?

もしかして、これって、あれですか?
所謂、「異物混入」じゃないすか!?

 

異物混入対策・衛生管理のプロの道、20年以上のぼくですが、そんなぼくだって異物混入事故の被害者になることも、たまにあります。
ですが、二日連続で遭遇したのは、これが初めて。

昨日も実はあった。
そう、長野に向かうとき。
とある中央道のSAのご飯の中に、樹脂片が混入していたのです。

 

このときは、これから長野の嫁さんの実家に向かう最中ということもあったし、何より飲食店に文句つけても何も始まらないことを熟知しているので、簡単にスルーしました。

ですが、今回のお相手は、その名を出せば誰もが知っているであろう、大手一流の飲料メーカー。
プロの異物混入対策屋として、お相手に不足はない!(笑)。
ここは一つ、「プロとして」メーカーさんに物申そうではありませんか。

クレームは重要な企業情報

さて。
先に一応断っておきましょう。
このようなクレームを付けることはよくない、と思う人もいるかもしれません。
ですが、実はクレームは重要な企業情報となります。

何せ、メーカーさんと毎日顔を合わせ、20年以上も異物クレームに携わっているぼくですから、そのことは身に染みて知っています。

そりゃ言いがかりの類や粘着なモンスタークレーマーは、企業にとっての害悪に他なりません。
しかも、いつの間にか日本はクレーマー天国になっている。
困ったことです。

こうなると本来のクレームの重要性が大きく損なわれるところですが、しかし。
本来的にクレームは企業のサービス、製品の品質を高めるための情報源です。

実際、まともなメーカーの品質管理部門なら、ちゃんと出されたクレームをないがしろにしているところなど全くないでしょう。
もしあったら、そんな企業は市場競争で淘汰されていきます。

つまり、異物混入クレームを企業に付けること自体は決して悪いことではありません。
商品の提供者として真摯に企業は対応してくれるでしょうし、企業側としても再発防止のこれ以上ない情報となるわけで、これを嫌がる食品企業は世にはないと思います。

グッドマンの法則、というのがあります。
マーケティング界においては有名な法則で、クレーム対応と顧客の再購入決定率の間の相関関係について導き出した法則。
この法則の結論だけ言うと、要するに「クレーム対応をしっかりする企業は儲かる」ということです。

グッドマンの法則
  1. 不満を覚えた顧客のうち、しっかりクレーム対応した顧客は、不満を申し立てなかった顧客より多く、再びその企業の商品を購入してくれる
  2. ネガティブな体験は、ポジティブな体験より2~4倍噂が広がりやすい
  3. 企業の適切な情報伝達は顧客に信頼を与え、企業の市場拡大に貢献する

 

と、まあ書いてみると何てことはない。
当たり前にも聞こえますが、それを論理的に法則化したのが、この「グッドマンの法則」です。

この法則、大手メーカーの品質管理なら誰でも知ってる有名な法則です。
ですから一流の企業であれば、これを基本的に踏まえているでしょうし、そうでなければ3のように、信頼関係を築けずに消えていきます。

このことからも、「正しく異物混入クレームを付けること」自体は、本来的に悪いことではありませんし、企業側にも自社の問題要因分析においての貴重な情報になるはずです。

 

プロが身をもって教える異物クレーム①まずは状況把握

そんなわけで、一応の断りを付けてから。
さあ、ここからが「異物混入対策のプロが身をもって教える異物クレームの付け方」です(笑)。

以前にゴキブリが混入したときどうするか、をお話しましたね。

 

今度は金属異物、それも自分に起きた異物混入です。
他人事じゃありません。(笑)

さて、そんな場合どうするか。
まずは落ち着いて、状況把握です。

「缶チューハイの蓋を開けて注いだら、中から異物が出てきた」

ここで考えるべきは、消費者由来ではないか、ということです。
つまり、ぼくがそれ入れたってことはないかということです。
まず自分を疑ってみましょう

実は異物混入クレームの中に、結構な割合で「消費者由来」というのがあります。
消費者が、買って開封して食べて、或いは保存してまた食べたら、その客先で何か混入した。
にも関わらず、こりゃどういうことだと食ってかかってくる方々が、一定数存在します。

「ポテトに歯が入っていた、こりゃどういうことだ!」
逆にこっちが聞きたいです、おたくの頭はどうなってんだと。

 

なのでメーカーを疑う前に、まず自分を疑いましょう。
この場合はどうか。

今回の異物混入ケースが消費者由来である可能性
  • グラスの中に入っていた
  • 蓋を開けるときに蓋片が落下し混入した
  • グラスを準備し、注いでいる間に混入した

 

グラスの中に入っていた。
あり得ない。
だって我が家ではグラスは皆、飲み口を下にして保管しています。

証拠写真(笑)

 

蓋を開けるときに蓋片が落下し混入した。
あり得ない。
蓋の構造上、蓋片が発生するような構造にはなっていない。
もしそんな構造なら、こうやってクレームが幾度も上がって改良されているはずです。

グラスを準備し、注いでいる間に混入した。
あり得ない。
用意したグラスに注ぐ時間はほんの2、3秒です。
リビングの頭上にそんな異物リスクはありません。

さあ、消費者由来の要因はつぶした。
あとは製造工程上の要因です。

プロが身をもって教える異物クレーム②異物の観察

さて、ここからがプロの本領発揮。
ほこ×たて企画、「異物対策のプロ VS 大手一流飲料メーカー」の始まりです。

まずは、衛生管理屋の先手。
異物の分析です。

 

まず、異物をピンセットでつまんで壊さぬようにシャーレに。
そして、目視にて外観観察。

なんだろ、表面に印字みたいのが見える。
形態は長方形。
長さ1㎝、といったところか。

続いて実体顕微鏡で、より精緻に観察。

うん、見事なまでの金属片。
導電性検査しなくてもすぐ判る。
どう見ても金属です。

 

印字に見えたのは、塗装跡でした。
それが剥離して、サビている。
サビということは腐食、つまりその周囲に酸素と水が共存していたことになる。

外観から、劣化金属片ではないよう見える。
何かから千切れたのか。
加工品。切れ込み加工みたいのがある。
例えば蓋片のような。

 

さあ、困りましたね。
というのも、劣化金属片以外の金属異物となると、工程上の可能性がぐっと減ります。
となると、消費者由来を疑われる可能性が俄然高まります。

企業側の究明調査結果も、「原因不明でした(てゆーかお前です)」と解答されることが多い。
ていうかぼくがこれお客さんに「どう思う?」と尋ねられたら、同じく答える可能性が高い。
これ、ちょっと形勢的には、かーなーり、不利ですな。

缶チューハイの製造工程上で金属異物の混入はあり得るのか

そもそも、缶飲料メーカーの人は、金属異物なんてそうそう起こる訳がない、と思っています。
というかぶっちゃけ、ぼくも思ってます。

だから缶飲料メーカーにクレームの電話を入れて金属が入っていたと言うと、「お客さーん、またまたー(苦笑)」と返ってきます。
てのは勿論ウソですが、申し訳なさそうな顔の裏で真っ先に心の中でそう思われます。
うん、まあそう思われてもしょうがないかなって思います。

そもそもこうした缶飲料は、製造工程上、ストレーナーやフィルターを経てろ過されてから、缶やペットボトルなどに充填されるので、基本的に混入異物はそこで除去されます。

飲料の場合、ストレーナーでのろ過以降、暴露工程は充填時のみです。
要するに、缶に機械で注がれて蓋で密閉される、ほんの瞬間しか異物が入る可能性は少ない、ということです。


ウォーカープラス

一方で、ペットボトルや缶についても洗浄されてから使用するため、異物が混入する可能性はこれまた低い。
絶対にない、とは言えないだろうし、そりゃもしかしたらストレーナーを経ての飲料混入に比べれば高いかもしれませんが、いずれにせよ可能性はかなり低い。

もし考えられるとすれば、製造機械の劣化、あるいは破損などによる混入でしょう。
これはもしかすると、ないわけではない。
ただしそれも、上の通り、充填時のみの混入に限ります。

となると、缶飲料における金属異物の混入はかなりのレアケースということになります。
さあ、困ったぞ。
でも入っていたのだからしょうがない。
腹を据えます。
これはやはり真正面からクレームを付けていきましょう。

メーカーに連絡する前に準備すること

それではメーカーにクレームを伝えましょう。

と、その前に。
準備しておくべきことがあります。
最低、以下のことくらいは事前に押さえておきましょう。

クレーム前の準備
  • 混入異物の保管
  • 異物混入した製品の容器
  • 異物混入事故日時と場所
  • 混入製品の製品名
  • 混入製品の賞味期限
  • 混入製品の製造情報
  • 混入製品の購入先と購入日時、レシートなどの購入情報
  • 近々で自宅にいる時間帯

 

最低このくらいは情報として聞かれます。
電話などをする前に用意しておきましょう。

異物がない、或いは購入情報がない、或いは製品容器がない、というと「そんなん証拠にならんでしょ、こっちゃ暇じゃないしクレーマーの相手もしたくないので対応出来ません」と言われます。

いや、さすがにそうダイレクトには言われませんが、「申し訳ありませんが、製造情報からの原因究明調査が出来ないので対応しかねます」などと遠回しに、しかし確実に言われます。

まずはこれらを準備してから連絡します。

あ、最後にもう一点。
最終的には、誰かがご自宅に異物を引き取りに来ることになるでしょう。

こりゃヤバイなってときは、QUOカードや菓子折やらそのメーカーの商品詰め合わせやらを片手に持ったそのメーカーの営業マンが。
ごねる可能性が低かったり大したことのないケースの場合には、宅急便やさんが、自宅に異物を引き取りに来ます。
「金出してあなたが郵送してください」とは言ってきません。
なので、自分が自宅にいる時間帯を想定しておきましょう。

異物対策のプロが実際にメーカーに電話してみた

さあ、以上を踏まえた上で準備万全。
早速電話です。

 

 

ぷるるるるー。

しばらくの呼び出し音の後、クレーム対応の可哀想な人達が電話に出てくれました。
以上の事情を話します。

想定(マニュアル)通りの対応の後、QUOカードを渡すというので、そういうつもりじゃないからいらないと断りました。
が、意外としつこく送ると食い下がる担当者。
そうしないと怒られるのかなあ(笑)。
仕方ないので、承諾。

異物はどのように保管しているか、と聞かれたので、シャーレに入れて緩衝パックに入れてある、というと、

「シャーレから出してサランラップなどにくるんでください」

は?

いやいや(笑)。
これ検査屋の普通の検体の送り方なんですけど(笑)。

え、割れる可能性があるから?
どんだけの重量かけるつもりなんすか(笑)。

必要ないですよ、私この道20年以上のプロなんでと伝えました。
プロなので、そちらがどういう対応をするかも、よく知っている。
別に健康被害が生じていないので謝罪もいらないが、せめてなんでこうなったのか、教えてください。

さしあたって(御社でも異物が上がってきた場合はクレーム処理上、どうせ決まりで作成するのでしょうから、その)スペクトル分析報告書と、それに基づいた究明調査結果報告が欲しい、と伝えます。
少々お待ち下さい、と言われてから待つこと数分。

ああ、警戒されてる(笑)。
待ちましょう。

この後に想定される流れ

このような場合、メーカーはまずつきあいのある検査機関に異物の鑑定依頼をします。
この場合、恐らくは金属です。
ですが金属といっても鉄だステンだアルミだなどと色々ある。
それを調べてもらうのです。

検査機関は、まず実体顕微鏡で外観観察します。
ああ、こりゃ金属だわ、となります。

一応、「導電性試験」で、金属である根拠を検出します。
また電気がどのように通るかで、およその目星が付きます。

次に、「蛍光X線分析試験」をします。
いわゆるスペクトル分析です。
これで含有元素を調べ、どんな金属か検出します。

この情報と形状などから、工場での混入経路や要因を調査します。
とはいえ、要因なんてそう簡単に判るものでもないので、「不明」となることが多い。
今回も、「どうせ消費者由来でしょ」と思われる条件が揃っているので、ペライチの報告書で終わりだと思います。
(あ、スペクトル分析表が付くから、2枚かな笑)

メーカー担当の返答とその後

あ、帰ってきた。
数分の後に、
「わかりました」と、メーカー担当。

明日、そちらに宅急便やさんが検体を取りに来る、とのこと。
結果はどのくらいで出るのでしょうか、と聞くと、「約2~3週間」との答え。

随分かかりますね。
普通この手の検査は、検査機関が受け取ってから営業日3日、立て込んでいたとしてもせいぜい4~5日といったところです。
そんなかかるもんじゃない。
まあ、有る程度ゆとりを持てるように対応マニュアルに書いてあるのでしょう。
そう答えろと命じられているだけの窓口の人に、何か言ったところで始まるもんじゃない。
「判りました」と返答。

さあ、この後、どんな報告が出されるのでしょうか。
楽しみに待つとしましょう。

 

今日のお話の概要
  • 異物対策のプロの家で、缶チューハイ内への金属片の混入事故が発生した
  • メーカーにとってクレームは重要な情報でもある
  • 異物混入の対応①まずは状況把握。自分由来の可能性を確認する
  • 異物混入の対応②異物をルーペや顕微鏡でよく観察する。明かに金属片。
  • 缶チューハイの製造工程上、金属異物の混入はほとんど発生しない
  • メーカーに連絡する前に、準備すべきこと、もの。これらが揃ってないと相手もしてくれない可能性大。
  • メーカーに電話し、クレーム担当に事情報告。案の定、大きく警戒される。
  • その後、検体は検査機関にてX線分析試験にかけられ、どんな金属かが検出される予定

 

■□貴方の工場・店舗で悩んではいませんか■□
・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
    この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです
  • そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
  • どうですか?
    そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?