アイスクリームで時折報じられる回収事例。
なんでそんなにも、アイスクリームばかりが法違反品として検出されるのか。
今回は衛生管理のプロの立場から、そんなアイスクリームと菌についてお話したく思います。
なお、こちらは二部構成になっている記事の「後編」となっています。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことのできない真髄中の真髄、
プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教え致します。

 

今日のお話の概要
  • 食品には、食品衛生法に基づいた幾つかの「規格基準」がある
  • この「規格基準」を満たさないと、食品衛生法上、市場への流通が法的に許されない場合がある
  • ただし法的な「規格基準」が決められている食品は限定的である
  • 保健所も、この「規格基準」に則って収去検査を実施している
  • 時々起こる回収(リコール)もこれらに準じて判断されている
  • 法的な「規格基準」があり、夏場市場に出回りやすいアイスクリームは、収去検査の対象である
  • アイスクリームの大腸菌群検出は、しばしば加熱殺菌後の二次汚染が要因となっている

 

法違反品のダントツがアイスクリーム!?

東京都の保健所による収去検査の結果、ダントツでアイスクリームの法違反品が検出されました。
これはどういうことでしょうか。

なお、こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでください。
一応概要は下に載せておきますが、今回はちょっとばかり、「前編」を先に読まないと判らないと思います。

 

「前編」のお話の概要
  • この夏の東京都の保健所の検査で、菌汚染がアイスクリームだけ検出された
  • 時々アイスクリームは、大腸菌群の陽性で法律違反のためのリコールが起きたりする
  • これらのアイスクリームの法違反の根拠は、食品衛生法第11条第2項である
  • アイスクリームは「乳及び乳製品」であり、成分から3つに区分される
  • アイスクリームの規格基準は、「大腸菌群」陰性と「一般生菌」10万以下である
  • 保健所では、この規格基準に則って収去検査している

 

公的な規格基準の種類

さて、「前編」で、食品には幾つかの「規格基準」ってのがあるよ、という話をいたしました。
で、その「規格基準」に、菌に対する規格基準も書いてあるよ、とお話しました。

この規格基準というものは、「食品衛生法」に基づいてお役所さまが食品の成分規格やその他様々な基準を定めたものです。 
ですから当然、行政機関である保健所はそれに準じて検査を行っています。

では実際に、菌についての公的な規格基準にはどんなものがあるのでしょうか。

 

食品の公的な微生物規格基準
  • 「食品、添加物等の規格基準」(厚生労働省告示)
  • 各種「衛生規範」
  • 「生食用食肉の衛生基準」
  • 「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」

 

ここら辺が代表どころでしょう。
これらによって、この食品は一般生菌数がこのくらい、大腸菌群、黄色ブドウ球菌、大腸菌(E.coli)がこのくらい、などとアイスクリーム同様に定められています。

これらの多くは「食品衛生法」という法律上、守りなさいね、じゃないとあかんよという基準です。
行政機関である保健所さんは、当然これらに則って法の逸脱がないか、検査します。
そりゃ当然、ここに書かれているものが、保健所さんの収去検査対象に自ずとなりやすい。

今回の「乳等省令」によるアイスクリームもそうですね。
またユッケでの食中毒の一件以来、「生食用食肉の衛生基準」は結構重要視されるようになりました。

参考までに、今回の都の調査でも、生食用食肉に対する厳しさが表れています。

 

ところで、これらのうち「衛生規範」てのがあるじゃないですか。
この「衛生規範」というのは、一応、食品衛生法の枠外です。
つまり、ここでの規格基準を逸脱していても、食品衛生法違反とならない可能性があります。

弁当や総菜。漬物。洋生菓子。生めん。
これらの食品には、「食品衛生上、これを守ったほうがいいよ」という規範があります。
これを「衛生規範」というのですが、そこに幾つかの食品についての規格基準が書いてあります。

後に出しますが、例えば、シュークリームなどの「洋生菓子」は、「一般生菌」10万以下に「大腸菌群」と「黄色ブドウ球菌」が陰性ね、みたいな風に。

保健所も当然、これに則ります。
ですから、シュークリームやロールケーキなんかの「洋生菓子」も、よく収去検査対象の常連です。

とはいえ、世の食品全てが規定されているわけではない。
勿論、重要どころは押さえられていますが、それほど世の食品全体の種類からすれば、菌の規格基準が定められているのはそれほど多いわけではないんじゃないかな。

そこでアイスクリームが割と狙いうちされがちになる、ということです。
いや、それは言い方が悪いかもしれませんが、夏場の影響力を考えると重要な対象の一つになるのは間違いないでしょう。

菌の検出による回収騒動

ちなみに、企業が製品から「大腸菌群」が出て自主回収、みたいな話が時々あります。
あります、てか、こないだも似たような話をウチで取り上げましたね。

ファミマのシュークリーム。
ここから自分のところで検査したら、「黄色ブドウ球菌」が出たので自主回収したという話。

 

そう、この根拠が、これだったわけです。
「衛生規範」上の「規格基準」を越えて、黄色ブドウ球菌が検出された。

成る程、シュークリームである「生洋菓子」には「衛生規範」がある。
上でも触れましたが、この「生洋菓子の衛生規範」には、「一般生菌」10万以下に「大腸菌群」と「黄色ブドウ球菌」が陰性、と書かれている。
となると、「黄色ブドウ球菌」検出は明らかに「規格基準」を逸脱しています。

ただし、注意!
こちらの基準はあくまで、「規範」。
ですから、食品衛生法の枠外です。
食品衛生法を違反している、違法だ、とはジャッジしづらい。

しかもこの場合、保健所が検査したわけではありません。
自社で自主検査をやったら、たまたまそこから「黄色ブドウ球菌」が出た。

恐らくは、たまたまこいつだけ。
でも、他が汚染されていない保障はない。
ましてや食中毒などなるわけがない。
(冷温保存されていると黄色ブドウ球菌は増えませんし、食中毒の原因となる毒素を作りません)

でも一応、うるさいから作ったぶんまるまるロットでどんと自主回収します、これでいいですかね?、ということです。
(詳しくは上の記事を読んでください)

そう、これ、保健所が指導したり命じたわけじゃないんです。
自分のところでの自主検査で出たから、自主的に回収した。
こういうのが凄く多い。

何故でしょうか。
さて、ここで思い出すのは10年くらい前ですかね、「白い恋人」の石屋製菓の大騒動です。

 

これでえっらい叩かれたわけですよ、石屋製菓さんが。

いや、賞味期限改ざんは、そりゃあまりよろしくはない。
でも(自主検査で)大腸菌群が出た、黄色ブドウ球菌が出た、なのに回収しない、ふざけんなと石投げつけても許されるだろうってなくらいに、クソミソに叩かれた。
ちょっとこれはどうだろう。

だってこれ、回収義務どこにあるんですか、と。
焼き菓子の法的規格基準なんてどこにあるんですか、と。
これ違法なんですか、と。
しかも保健所の収去検査じゃないですよ。

でもそれを横目に、世の食品メーカーは、黙りこくりつつ青ざめたわけですよ。
ああ、ウチもそれやりかねないわ、と。
で、その後、右習えで世の風潮となっていくわけです。

なぜ大腸菌群が出るのか

おっと話が脱線しましたね。
戻します。

んじゃなんでアイスクリームから大腸菌群が出るか、ってことですけど。
これについては既に前も話しました。
二度になるから、余り詳しくは触れません。

 

 

上のように、製造工程上、アイスクリームは「加熱殺菌」されて、凍結されます。
ですからここで大腸菌群は死滅してしまいます。

にも関わらず、大腸菌群が出た、ということは、「加熱に不備があった」か「冷却後に何かに触れて汚染した」のいずれかです。

もし仮に「加熱に不備があった」のであれば、「一般生菌」も死滅していないから、高い数値となっているでしょう。
つまり「大腸菌群」が検出されるのは、その後に汚染されているからです。

例えば、冷却時に機器に触れた、なんてこともあるかもしれませんね。
或いは店舗でアイスクリームを頼むとき。
お店の人はアイスミックスを機械に入れます。
そんなときに、洗浄不足なら二次汚染しかねない。

このように多くの場合、アイスクリームの大腸菌群の汚染は二次汚染(クロスコンタミ)でしょう。

さて、重ね重ねになりますが、「大腸菌群」と言うと世の一般の多くの人が、「きたない!」「うんこ菌!」だと思われがち。
ですが、それは違います。
「大腸菌群」というのは、そこらにいる土壌菌なども含めた総称です。
ただの衛生指標の菌です。
それがただ触れただけ。
それを食べたら即食中毒になんか、なりません。

「大腸菌群」が検出された、というのは、「病原性大腸菌」も含めた「大腸菌」がもしかしたらいるかもよ、というだけの話です。

アイスクリームだけが法違反品となった理由

この夏、前半だけで、都の保健所の検査の結果、アイスクリームだけが5件も法違反品とされた。
しかもその全てが、大腸菌群の検出でした。

アイスクリームは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」において、「大腸菌群」陰性という守らないといけない法的な「規格基準」がある。
これを逸脱すると法違反になるので、アイスクリームは保健所の収去検査対象です。
特に夏場多く市場に出され、子供が食べることが多く、また製品自体も多いので、その影響力も懸念される。

つまり、夏場のアイスクリームは、目をつけられやすいのです。

加えて、意外と大腸菌群くらいなら出やすかったりもする。
加熱殺菌されて冷凍されるアイスクリームは、一般生菌はそれほど懸念が少ないものの(とはいえ1件ありますから油断できないでしょうが)、製造工程で器具や手指に触れることはないわけじゃない。

勿論、直ちに食中毒にはならないでしょう。
ていうか、ほぼほぼならんと思います。

が、法律上としては、違法は違法。
そこで、アイスクリームの法違反品が出る、ということです。

 

今日のお話の概要
  • 食品には、食品衛生法に基づいた幾つかの「規格基準」がある
  • この「規格基準」を満たさないと、食品衛生法上、市場への流通が法的に許されない場合がある
  • ただし法的な「規格基準」が決められている食品は限定的である
  • 保健所も、この「規格基準」に則って収去検査を実施している
  • 時々起こる回収(リコール)もこれらに準じて判断されている
  • 法的な「規格基準」があり、夏場市場に出回りやすいアイスクリームは、収去検査の対象である
  • アイスクリームの大腸菌群検出は、しばしば加熱殺菌後の二次汚染が要因となっている

 

 

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