最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、「ファミリーマート」での黄色ブドウ球菌によるシュークリームの回収についてお話させていただきます。

本日の時事食品ニュース
  • ファミマのシュークリームから「黄色ブドウ球菌」1万9000個回収(2019年8月20日)

 

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

今日のお話の概要
  • ファミマが回収した理由、「黄色ブドウ球菌」は、どこにでもいる菌です
  • なので、これ自体を食べても、食中毒にはなりません
  • そもそも「黄色ブドウ球菌」の有無を調べるのは、「食中毒にあるかどうか」よりも「正しく製造されたか」を知るためです
  • にも関わらず、ファミマは自主回収しています。これは別に「ファミマえらい」だからではありません
  • あとこの基準は、そもそも結構厳しめであることを知るべきです
  • シュークリームで一番出るのは「大腸菌群」です

 

ファミマでシュークリームが回収に

少し前の話ではありますが、なんでもファミリーマートでシュークリームが「黄色ブドウ球菌」の陽性検出によって、自主回収だそうです。

はあ、このくらいで1万単位の自主回収ねえ…。
勿体ない、ファミマのシュークリーム、美味しいのに。

 

コンビニ大手ファミリーマートは、関東甲信越地方などの広い範囲で、今月18日から19日にかけて販売したシュークリームから、黄色ブドウ球菌が検出されたとして、1万9253個を回収すると発表した。

 

 

こないだ渋谷でネズミコンビニ騒動起きて間もないのに、次はシュークリームの回収だそうで。
まあ、忙しいですねえ、ファミマさん。

さて、このニュース。
意外と珍しいのは、「黄色ブドウ球菌」の「陽性」(つまり、食品の中に「黄色ブドウ球菌」が見つかった)で回収ということ。
これ、案外とそんなに多くはない。
というか、これで自主回収すんのかよというレベルです。

どういうことか、少しずつお話していきます。

「黄色ブドウ球菌」は何処にでもいる

「えー、黄色ブドウ球菌って、よく判らないけれど、食中毒菌なんでしょ?
それってファミマのシュークリームに食中毒になるものが売っていたっていうこと!?」

そう思うあなた。
今このブログを読みながら、食べようとしている、そのポテチ。

うん、何味がいい?
個人的にはコンソメかのり塩かな。
最近は湖池屋も結構美味しいですよねえ。
いやまあ、うん、何でもいいんです。

袋から一枚つまんで、口に…。
はーい、そこでストップ!
あなた、指でそれつまみましたよね。
それ、食中毒要因の菌である「黄色ブドウ球菌」が付着してるかもしれませんよ。

ってそういう話です。

 

「黄色ブドウ球菌」というのは、人間の皮膚にいつでもいる菌です。
そういうのを、「常在菌」、と言います。
要するに、人の皮膚には普通にいる、ということです。
あなたの皮膚や粘膜にもいるんですよ。

で、これがどう食中毒に繋がるかというと、こいつらがかなりの量に増えたときに、毒素を作る。
「エンテロトキシン」っていう毒なんですけど、それが食中毒を起こす。
だから、「黄色ブドウ球菌」がいることが問題なのではなく、こいつらが増えると毒素を作るから問題なのです。

逆に言えば、こいつらが仮に少々存在していたとしても、数自体は少ないときは食中毒にならない。
だって毒素を作らないから。
環境が整って、菌が増えて、そこで毒素を作って、でそれを食べて、で初めて「黄色ブドウ球菌」が食中毒菌になる。

それにもう一つ。
冷蔵保管するような環境では「黄色ブドウ球菌」は増えません
10℃を切ると、「黄色ブドウ球菌」はほとんど増殖出来ないのです。

先のようにポテチについた黄色ブドウ球菌は、無毒です。
だって増えないし、毒素も出さないから。
だから大丈夫、食べてください、食中毒にはなりません。

シュークリームだって、同じこと。
これ食べても、無毒です。

シュークリームは冷蔵保管しますよね。だったら「黄色ブドウ球菌」は増えません。
増えないから、毒素を作りません。毒素を作らないから無毒です。
だから冷蔵しているシュークリームは、「黄色ブドウ球菌」の食中毒にならない。

このように、ハイ、「黄色ブドウ球菌」がいた。食中毒菌がついてる、だから危険、じゃない。
「黄色ブドウ球菌」がいるということは、それが増殖して毒素を作り出し、それを食べて食中毒になるリスクがあるかもよ、だから危険かもね、なのです。

よく知らない一般の人は、大概ここを勘違いしています。


公益社団法人日本食品衛生協会

 

黄色ブドウ球菌
  • 人や動物の皮膚や粘膜の常在菌
  • 化膿している傷口、ニキビなどには特に多い
  • 髪や手指に保持している人もいる
  • そのため、人の「手」を介してしばしば汚染される
  • 耐熱性の毒素(エンテロトキシン)を作って、食中毒を引き起こす
  • 大規模な食中事故を起こしかねない

 

ファミマが自主回収した理由

んじゃどうして食中毒に直ちにならないにも関わらず、回収されてんのか、ってことです。

結論から言えば、
1、法律あるいは公的に定めてある規格外だから
2、一応、社の取り決めとして
3、つーかぶっちゃけネットがビービーうるせーから自己防衛
で、回収になったのです。

ちなみに1について。
公的に、「食品製造はこの規格で作ってくださいね」っていう規格があります。
この基準のことを「規格基準」って言います。

ここで、少しだけ専門的なお話を。

「食品衛生法」やその他厚生労働省令、あるいは衛生規範などには、食品の「規格基準」が書かれています。
これに基づいて、各地の保健所は「行政検査」として、市場に出回っている食品を集めて、日々微生物検査を行っています。(収去検査、といいます)
で、その結果、先の規格基準に従って、これは規格外だ、市場に出したらあかんよ、と指示します。
それにしたがって、食品メーカーはやむなく回収(リコール)を行います。
これが「行政回収」です。
今回の場合は、行政からではなく、先回って自主的に回収した、とそういうことです。

さて、シュークリームの規格はどうなっているのか。

シュークリームは、「洋生菓子」とされています。
「洋生菓子」とは、以下のものを指して言います。

菓子類のうち、ショートケーキ、パウンドケーキ、シュークリーム等小麦粉、卵、牛乳、乳製品、チョコレート、果実等を主要原料としたものであつて出来上がり直後において水分を40%以上含むもの(ただし、あん、クリーム、ジャム、寒天又はこれに類するものを用いたものにあつては、出来上り直後において水分を30%以上含むもの。)をいう。
(「洋生菓子の衛生規範について」)

 

そして「洋生菓子」は、「洋生菓子の衛生規範」で、次のような「規格基準」が決められています。

 

「衛生規範」に基づく、洋生菓子の規格基準
  • 一般生菌、100,000/g以下
  • 大腸菌群、陰性
  • 黄色ブドウ球菌、陰性

 

つまり今回は、この規格基準を逸脱したので、自主的に回収します、という話。

ところで「衛生規範」というのは、「絶対に守るべき法律」ではありません。
厚生労働省が、「このくらいを基準にしてね」と指標として出している、一応の衛生の「目安」です。
これを逸脱したから取り締まる、とか、逸脱したら即回収、とかそういうものではない。

でも今回、ファミマは、その「目安」を越えたから回収しています。
何も知らない一般人は、ここまでの話で、やれ「えらい」だの「さすが」だの言うかもしれませんが、ファミマだって企業です。
彼等は「えらい」と言われたくてやるんじゃない。
ネットでガーガーうるさく叩かれるくらいなら、回収したほうがまだマシだと踏んでやってるんです。
2000年の不二家以降、ここ最近は、こういうことがやたら増えています。
この風潮、ほんとどうにかならんもんかな…。

黄色ブドウ球菌はただの指針

先のとおり、「黄色ブドウ球菌」ってのは、毒素を出さなければ、ただの常在菌です。
つまり、シュークリームに付いていたって、冷蔵保管すれば無毒です。
だからこれを食べて食中毒にはなりません。

じゃあ、なんでこれを指針、目安にするのか、ということです。

同様のことが、「大腸菌群」にも言えます。
「大腸菌群」というのは「大腸菌」ではありません。
その広い仲間で、環境、土壌などにも生息している一般的な菌のことです。

よく「大腸菌群」が出た、うんこ菌だ、汚染されている!などと一般の人は騒ぎますが、全く違います。
糞便由来の「大腸菌」は、そのごく一部です。
更に言えば、これらは「糞便由来」と聞こえが悪いですが、これを食べてもおよそ無害です。
食中毒になるのは、さらにその一部、「病原性大腸菌」です。

つまり、「黄色ブドウ球菌」が出た、「大腸菌群」が出た、ということは、言うなれば「もしかしたら食中毒になる、そんな可能性がある」ということを言っています。

そんな菌をどうして指標にするのか。
一言で言えば、次のことを見るためです。

 

指標菌の目的
  • しっかり加熱殺菌がなされているか
  • 加熱殺菌後の汚染がなされていないか
  • 衛生的な環境で作られているか

 

これらの菌は、加熱がなされれば死滅します。
死滅した食品の中にいる、ということは、加熱が甘かったのか、器具や手指など、その後に触れたということになります。

これらを知るために、「一般生菌」「大腸菌群」「黄色ブドウ球菌」を見るのであって、それがすぐさま食中毒になるという話ではありません。

んじゃ次に、このシュークリームは不潔な環境で作られたのか、という話ですが、んなわけがない。
この程度の汚染は製造上、時として発生します。
全く無菌のまま作り上げる、なんてのは現実的にホント難しいんですよ。
だって、絶対に何か(空気だってそうです)に触れるから。

「黄色ブドウ球菌」が出た、ていうと、製造上で鼻くそほじった素手でシュークリームつかんだ、とか素足で踏んだ(なわけない笑)とか、そういう想像するかもしれませんが、んなわけがありません。
「大腸菌群」が出た、というと、トイレ行って手洗わずにそのまま素手でシュークリームつかんだ、とかウンコなすりつけた(なわけない笑)とか、そういう想像するかもしれませんが、んなわけがありません。

何か器具や機械が、たまたまちょっと汚染されていた。
それで触れてしまった。
交差汚染、クロスコンタミネーション、なんて言いますが、それが起こったのでしょう。

ちなみに加熱不足じゃない。
だって、一般生菌はちゃんと規格以内なんでしょ?
じゃあ、しっかり加熱されているじゃないですか。

割と規格外が出やすいシュークリーム

ところで、シュークリームは意外と、このような規格外が出やすいものの一つです。
先のように、40%以上と、水分が多い。
製造環境も割とウェットで湿度が高い。
すると、当然菌も増えやすい。

この「大腸菌群」ダメ、「黄色ブドウ球菌」ダメってのは、結構厳しい条件です。
簡単にダメっていうけど、どこにでもいる菌ですから、そりゃ時折は出るもの。
出たからハイ回収、ってのは厳しいというか、ちょっとどうなの?って思いますね。

なお、海外でそこまで厳しくしている国って、確かそんな多くはないです。
EUでは有る程度の陽性(菌がある状態)でも毒素がなければ問題にしていません。
これは確かに理にかなっている。

あと保健所がよくシュークリームを「収去検査」します。
つまり市場のシュークリームをよく保健所が一斉に集めて菌検査するんですね。
そりゃ当然、シュークリームの規格外が報じられる。
だから、シュークリームには規格外の結果がよく出る。
そういう実状も、実はあります。

ただし、シュークリームで最も多いのは「大腸菌群」が出たという話ですね。(陽性)
まあ、どこにでもいる菌ですので、何か触れれば時折出ます。
人に由来する黄色ブドウ球菌は、事例としてそれほど多くはありません。

まとめ

この時期になると、シュークリームのような生洋菓子や、アイスの回収が時折ぽろっと世に出ます。
「保健所の収去検査で陽性が出た」、という話です。

ですが、それがすぐに食中毒になるわけではありません。
何も知らずに企業を叩く前に、このような事情を知っておくことが重要です。

 

今日のお話の概要
  • ファミマが回収した理由、「黄色ブドウ球菌」とはどこにでもいる菌です
  • なので、これを食べても、食中毒にはなりません
  • そもそも「黄色ブドウ球菌」を調べるのは、「食中毒にあるかどうか」よりも「正しく製造されたか」を知るためです
  • にも関わらず、ファミマは自主回収しています。これは別に「ファミマえらい」だからではありません
  • あとこの基準は、そもそも結構厳しめです。
  • シュークリームで一番出るのは「大腸菌群」です

 

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