最新の食品関連ニュースから話題をピックアップし、衛生管理のプロの目線からその裏側や真実を教えます。
今回の話題は、こちら。
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
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秋田市の学校給食への異物混入が過去最多に
先日、相次ぐ秋田市内での学校給食への異物混入に、市政が動いたとのニュースが上がっていました。

今回はこうした学校給食の異物混入について、異物対策の専門家としてお話していきましょう。
秋田市の小中学校の給食に異物が混入していた事案が相次いだことを受け、未然に防ぐための対策委員会が設置され8日、1回目の会議が開かれた。
この対策委員会は市の関係者や食品業者など10人で構成されている。秋田市では2019年度、市内の小中学校の給食に金属片やプラスチック片などが混入していた事案が5件報告されていて、2013年度と並んで最も多くなっている。
事務局は原因を特定できていないが調理中や学校内での配膳の際に異物が入り込んだ可能性が高いとしている。
委員からは食材や器具の管理のルールを明確にするべきといった意見が出されたという。小中学校の授業の再開は今月26日だが、市では7月下旬から給食を作る調理場すべてで一斉点検を行った。
福田徳行委員長は「各調理場ではこのまま使い続けたらちょっと危険なものを廃棄してもらうなど一通りやっている。抑止のひとつになったとは思っている」と語った。次回の会議は8月下旬に開かれ、具体的な対策について話し合うという。
(秋田テレビより引用)

秋田市での給食への異物混入の実状
今年まだ半分の段階で市内での給食への異物混入が5件というのは、確かに多いです。
まあ、この程度の異物件数なら他の自治体にも大して変わらない、或いはそれより多いというところもあるでしょう。
さて今回の秋田市の、給食への混入。
調べてみると、プラスチック片から始まり、アルミ片、糸状の金属片、ホチキス針…と硬質異物ばかりが続いている。
これらが調理中に生じた問題(資材由来ではない)だと委員会が結論づけしているので、以下、それを前提に話を進めます。
確かに、この自治体だけなく、一般的に給食への異物においては、どでも金属異物が相当大きなウェイトを占めているものです。
ヘタすると、一番多いのが金属関係じゃないかな。
(プラスチック、樹脂類がそれに次ぐのではと思います)
にしても、です。
プロから言わせてもらえば、硬質異物、金属異物の混入がこれだけ多いのは、ズバリ、調理場で異物になりやすいものを使っている、持ち込んでいるからです。
典型が、ホチキス針。
いまどき調理施設内にホチキス止めした書類なんて持ち込んでいるから、こんなものが異物混入するのです。
普通、食品工場や衛生管理レベルの高い飲食店では、今やホチキス止め書類なんてやもすれば事務所内ですら控えているところも少なくありません。
我々も、こうしたお客様にはホチキス止めで書類を出しません。
「なくしても判らないものを場内に持ち込まない」
「劣化したら異物になるものを場内で使わない」
これは異物対策の基礎中の基礎。
これは場内のルール作り、管理のしくみ作りに失敗している好例です。
とりあえず、ここら辺のものは一般的に調理施設に持ち込みはあかんとされているものです。
作業上、全部全く駄目というわけにはいかないかもしれませんが、今や一般的にこの程度は普通に禁止されているものだと思ったほうがいいでしょうね。
小規模クラスの食品工場だって既にそう見なくなってますから。
金属製の装飾品や私物(指輪、ピアス、イヤリング、ピン留め、時計、ネックレス他、小銭)

更に言うのであれば、プラスチック片、アルミ片や糸状の金属片の混入。
(後者は釜洗浄用の清掃用具でしょうか)
これらは劣化した調理器具を使っていることに由来する問題です。
要するに、調理器具や場内設備の保守点検を怠っている。
「学校給食衛生管理基準」では、衛生管理責任者が定期的に施設設備の日常管理を行うよう規定されれていますが、されていないということにないかねない。
これもまた場内のルール作り、管理のしくみ作りの失敗です。

金属の異物混入が発生する原因とは
金属などの硬質異物が混入する原因は、次の通りです。
これ、一番上から多い順、ありがちな順になっています。
- 調理場で異物になりやすいものを使っている、調理場に持ち込んでいる
- 劣化した調理器具を使っている
- 場内の5S管理不足
- 調理施設の設備的不具合
- 金属探知機の取り扱い、点検上の不具合
ここでも最大の問題は上から3つなのでしょう。
なんとなく、状況が目に浮かびます。
特に一番上、「調理場で異物になりやすいものを使っている、調理場に持ち込んでいる」。
これは要するに、
「持ち込み制限ルール、使用制限ルールがない」
ってことでしょう。
管理のしくみ上で言うなら、PDCAサイクルでいう「P:Plan」の問題です。
要するに「管理のしくみ」が最初から出来てない。
再発してもおかしくない。
ちなみに管理のしくみ上の問題は以下のようなものです。
上から、ダメな順です。
- 「ルール自体がない」(「P:Plan」の問題)
- 「ルールはあるけれど、曖昧で明確に規定されていない」(「P:Plan」の問題)
- 「ルールはあるけれど、守られていない、教えられていない」(「D:Do」の問題)
- 「ルールはあるけれど、チェックされない、指導されない」(「C:Check」の問題)
- 「ルールはあるけれど、現場に即し改善されてない」(「A:Action」の問題)
このように、衛生管理においたって、PDCAサイクルは管理(マネジメント)の根幹です。
れくれぐれも忘れなきように。

関係者や食品業者とは誰なのか
それと、少し気になったのが、この対策委員会の構成。
近隣の保健所の職員さん、これはまあ多分いるんでしょう。
あとどうも器具製造の人がいるみたいですけど、これ意味あるかな?(笑)
何が言いたいのか。
あのね、
本当のこと言ってしまいますけれど、「異物混入対策のプロ」ってすごく少ないんですよ。
すごく少ない上に、長けている分野やレベルが違います。
「食中毒対策のプロ」と、「異物混入対策のプロ」って、実は違います。
前者は、微生物対策と検査分析のプロです。
後者は、食品衛生と有害生物防除を筆頭にして、その他毛髪管理や5S管理など、それらを総合してのプロです。
扱うもの、ジャンルが双方違うんですよ。
それをお互い、越境して掛け持ちしあっているのが、この業界です。
例えば、元 メイカーの品管上がり。
元 保健所職員の監査員。
元 流通や小売業関連の店舗指導者。
大概こういう方々が「異物混入対策のプロ」と一般的にされています。
が、ぶっちゃけてしまうと、その力量はマチマチです。
誰がというわけではなくあくまで一般論ですが、彼等の中には、食中毒と微生物には確かに滅茶苦茶詳しいけれど、しかし実は異物混入にはそれほど詳しくないことが非常に多い。
精々、「他ではこうやっている」、「昔はこうやっていた」という程度の知識しか持ち合わせていないことも少なくありません。
あーあ、本当のこと言っちゃいましたね…。

意外と連発している給食への異物混入
ところで、この秋田市だけでなく給食への異物混入って結構頻繁に起きていたりします。
先日は愛知県で、保育園の給食にネジが混入していたという報道がみられました。

その他沖縄でも、保育園の給食へのプラスチック片の混入がみられています。

とまあ、例を挙げればキリがない。
勿論、これらが全部調理施設内で起こった異物混入ではないでしょう。
結構、実際は資材由来、つまり最初から仕入れた原材料に入っていたというケースも多いものと推測します。
でもそれはそうとしたって、やっぱり多い。
では、これらはどうして発生しているのか。

…長くなってきました。
今日はこの辺で。
後編は、その理由や背景について、もう少しお話するとしましょう。
・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!
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