最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、昨日Twitterでバズったコンビニエンスストア、「ファミリーマート」でのネズミ動画の「後編」です。
これね、今回はさすがにプロから見てお店や企業さんが可哀想なので、専門家から少々フォローするため書くことにしました

本日の時事食品ニュース
  • ファミマ店舗でネズミがウジャウジャ 動画にネット騒然….店舗は休止に(2019年8月6日)

 

 

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

ネズミはどこから侵入しているのか

さて。
前回の流れで、ちょっとお店が可哀想なので、プロとして代弁いたします。
まず前回を読んでおられないのであれば、前回から読むようにしてください。

 

前回のまとめ
  • この事件で問題になったのは、「クマネズミ」である。
  • その「クマネズミ」は都内のビルでは何処にでもいる
  • 「お店が不衛生にしていたらネズミが出た」のではない。
    「ビルの中で多量にネズミが増えたから、隙間からお店にネズミが侵入した」のが真実だ
  • ビルの中にネズミがいるのは、店だけではなくビルにも問題がある
  • でもその「隙間から店にネズミが侵入している」問題を長らく放置していたのが、お店側の最大の問題。でもその解決は簡単でも安くもない。

 

で。
「ビルの中で多量にネズミが増えたから、隙間からお店にネズミが侵入した」とお話しました。
ですが、一般的にコンビニの店内ってプロである私からしたって、そんなに隙間があるようには思えないものです。
というのも、クマネズミは3㎝程度の隙間からも侵入します。
3㎝、ですよ!?

ちなみに一般的なゼネコンや機械メイカーにとって、たかが3㎝程度の隙間は、普通考慮されません。
一般的なお店の設計、機械の製作で、「ネズミが店内に入らないようにつくる」ことは、考慮されないんですよ。
もしこれを考慮する、としたらそれこそコストがどんと跳ね上がります。
普通に考えたらこれはオーバーコストになります。
そんな無駄なことを、と普通は考えられます。
要するに、ネズミが侵入できる3㎝程度の隙間を全くないまま、店を作るってのはありえない話だってことです。
というか、断言しますが、今そこにいる貴方の部屋やオフィスにも、天井や内壁に通じている3㎝の隙間は、95%以上くらいの確立で、どこかにあるでしょう。
気付いていない、目に見えていない、ただそれだけです。
つまり、今いるあなたの部屋やオフィスにも、ネズミが出てきてもおかしくない、ということです。
そしてその場合、貴方は「ああ、それは衛生管理不足だね」って、何も知らない人から言われます。
それが今のこのお店の置かれている立場です。

で、実はそここそがネズミ対策の本当に難しいところでもあるわけです。
「ネズミの侵入経路の究明」って、そんな簡単じゃないんです。
プロだって、私だって、判らないことばかり。
経験と勘の長年にわたる職人世界。それが、実はネズミ対策です。
とくにネズミ天国な東京都内は、まさにそれ。本当に難しいんですよ。

さて。
前回にも冒頭で書きましたが、今回のケース、似たような経験が私にもあります。
コンビニさんの冷蔵ケース周辺からネズミが侵入していた。
これ、実は割とあるあるなんです。

冷蔵ケースってその電源やら何やらをどこかから取らないといけない。
そこで、内装時に冷蔵ケースで隠れる見えない壁に穴を開けて、そこから電源を引きこむことが、ままあります。
すると、壁面に電源ケーブルを引きこむ穴が生じる。
さて、前回もお話した通り、内壁や天井内にはネズミがいた。
ネズミは3㎝の隙間からも侵入します。
すると、下の図のように、内壁で生息しているネズミは、ケーブルを伝って店内の冷蔵ケース内にまで侵入が可能になる。
そして冷蔵ケースと壁面などの隙間から、店内に侵入する。
今回の動画では、冷蔵ケースの上に登って、そこから店内に侵入していました。

イメージ的にはこんな感じ。
恐らくはこんな状況だったのだろうと、経験的に想像がつきます。
ですけど、これに気付き、これを直せといったら結構大変です。
一旦店を閉めて、冷蔵ケースを空にして、移動し、問題を防ぐということになります。
思いの外かなりな大がかりでコストのかかる作業です。
当然、その間はお店は休業しなくてはならず、ただお金は出ていくばかりです。
貴方が経営者なら、その判断が出来ますか?

この店は不衛生だからネズミが生息していたのか

Twitterやネット上では、このお店の不衛生さがバッシングの対象になっています。
ですが、本当にこのお店は不衛生だったのでしょうか。

まず、「この店は元々下水臭がした。だから不衛生だ」というツイートが目に入ります。
ですが、ちょっと待ってください。
下水臭と鼠は本来、全くの別問題です。

例えば、これで下水の問題を放置していて「ドブネズミ」が店内を徘徊している、というのであれば多少ながらも関わることでしょう。
でも今回の問題は、「クマネズミ」。
下水の問題とは、全く関係ありません。
臭かった。そうかもしれない、でもネズミには関係ないし、衛生管理不足かどうかも別問題です。

そもそも下水集の多くは、雑排水槽や汚水槽などの下水設備の問題。
これはあまり店舗衛生の不足とは関係ない、ビルの問題でもあります。
まさにミソもクソも一緒の勝手な話です。

では、餌となるものが放置していた。つまりは、清掃の不足。
ええ、コンビニ内に?
ちょっと現実的ではありませんね。

前回も少しお話しましたが、はっきり言って不衛生だろうが衛生的だろうがどうだろうが、隙間があって建屋内にネズミがいて、その店内に餌があれば、ネズミは店内に侵入します。
その意味で、「衛生的だからネズミは入らない、不衛生だからネズミが入った」、というのは間違ってます。

とはいえ。
衛生管理上問題が全くなかったのか、と言われればそういうわけでもないでしょう。
何より最大の問題は、「こういう状態をずっと放置していた」ことです。
そこに多少ながらも衛生意識の甘さは、見ることは出来なくもありません。

意外と選択肢が少ない鼠の防除

しかし。
ネズミがいる、衛生管理不足だ、と言うのは誰でも出来ますが、そういう人はそもそもネズミ対策って何があるか、知ってますか?
実はそれほど効果的な対策がないのが、ネズミ対策なのです。

ネズミ対策
  • ハード的(設備構造)対策
    侵入防止対策=ネズミを「入れさせない」:①隙間対策
  • ソフト的(管理運用)対策
    駆除対策=ネズミを「殺す」:②捕殺、③毒殺

 

実はネズミ対策って、「入れさせない」ための①隙間対策、「殺す」ための②捕殺、③毒殺、の3種しか、ほとんどないんです。
しかも、②捕殺は、粘着トラップの設置なのですが、ネズミは学習するので、それが「殺す」ための罠であることを学ぶので、そんな簡単に捕まりません。
③毒殺も、強い毒は美味しくないので好まず、なかなか難しい。
つまり、ネズミを店からいなくさせるする、て実はそんな簡単な話じゃないんですよ。

例えば、この店の点検口に粘着トラップを設置する。
②捕殺、の対策です。
まあ、やってもいいでしょう。
恐らくは幼獣(子ネズミ)は数匹捕まるかもしれません。
でもその間に、他のネズミは危険だと学習します。
なお、親ネズミになると捕獲はされません。罠だと知っているからです。
で、その親ネズミは、また子供を産んで、ネズミの数を増やします。

となると、現実的には、ハード的(設備構造)な侵入防止対策、つまりネズミを「入れさせない」という隙間対策しかなくなります。
つまりゼネコンや機械メイカーもスルーするような3㎝の隙間を全てつぶし「ネズミを入れさせない」ことしかない、ということです。
ですがこれ、補修工事を要するので、高額になります。
今回の場所だと6万円~10万円かそれ以上はかかるんじゃないかな。
だから経費を抑えて薄利多売ビジネスなコンビニが二の足を踏んでいたのも、判らなくもない。

とはいえ深刻な現状

そうは言っても、この現状、かなり酷いです。

動画から察するに、幼獣(子ネズミ)が3~4匹。
その全てが同じ体長であることから、同時繁殖であることがわかります。
通常ネズミって5~6匹を産みますので、まあそのくらいか、世代が進んでいればそれ以上はいるのでしょう。
警戒心が強いとはいえ、経験が少なく好奇心旺盛な幼獣は、このように出てくることが多い。
若さですね。
とはいえ、これほど集団で出てくるというのは、ほぼ活動が恒常化している証かと思います。
つまり、問題はかなり進行している。
2~3世代は多分、いっちゃってるんじゃないのかなあ。
何度も言いますが、もっと早くに手をうつべきだったでしょう。
別に衛生管理不足だとは私は思いませんが、少なくともこの店、ケチってババを引きましたね。

今後の対策

さて、ネットの情報ではすでに本社さんが動いているようです。
んじゃ、どう対応しているか。
考えられる手は次の対策ですね。

今後の対策
  • ネズミの個体数の減数対策:極力捕殺する
  • ネズミの営巣箇所撤去
  • ネズミの侵入防止対策
  • ネズミの生息跡の除去

 

まず、個体数を減らします。
先の②捕殺、です。
粘着トラップをとにかく設置しまくり、極力数を減らす、という力業です。
粘着トラップを数百枚単位で店内に設置し、捕殺して数を減らします。
それでも完全に獲りきることは出来ません。
だってネズミはもうそのトラップの存在を学習してしまう。
だから捕まらなくなるのです。
捕まるのは精々若い幼獣、子ネズミだけでしょう。
親が残れば、また子を産んで増えることになります。

同時に、店内に営巣箇所がもしあるなら撤去し、生息源をなくします。
今の状態だと、冷蔵ケース内がそうなっている可能性も考えられます。
そのためには一旦製品を移動し(要するに処分し)、機械を止めて移動します。
移動するにはメイカーの依頼が必要です。勿論タダではありません。数万円程度のコストが、これにもかかります。

そして、何より侵入防止。
これが一番効果的でしょう。
ありとあらゆる隙間を防ぎます。
とはいえ、そんな簡単に侵入経路ってわからないものです。
これにはプロのサポートが必要でしょう。
一般の人で出来る話ではありません。
これも安くはないでしょうね。
いやこれはムリだなとなれば、ゼネコンや工務店などの出番です。
場合によっては数十万円かかります。

そして最後に、ネズミの糞や足跡(ラットサイン)の除去です。
これによって異物混入防止や再発発見を促します。
清掃屋さんに特別の仕事を依頼します。
これだってそれなりかかることでしょう。
現在、このお店は「四の五の言っている場合ではない」「そうしている間にも、根も葉もない無責任なことがTwitterに流れ、風評被害に遭ってしまう」と、こうしたおよそ数十万円のコストを払って、この対応に追われていると思われます。

最後に

今回の騒動で、コンビニさんはかなり痛手を喰らったことでしょう。
と同時に、しばらくは似たような騒動が見られるかもしれませんね。

これまでに語ってきたように、今回のケースではちょっとだけお店が可哀想な気がします。
プロによるこの記事を読んで、少しでも正しいご理解が広まれば幸いです。

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