夏になると問題化しがちな貯穀害虫。
前回の前編に引き続き、今回は、そんな貯穀害虫対策についてお話したく思います。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
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貯穀害虫をモニタリングする

前回、貯穀害虫について、その特徴や代表種の紹介をいたしました。
それに引き続き、貯穀害虫対策を行う方法についてお話いたします。
なお、前回の「前編」をまだお読みになっておられない方は、そちらから読んでいただくことをお勧めいたします。
(後編だけ読んでも全くわからない内容にはなっていませんが、そのほうが理解が深まるでしょう)

さて。
虫の生息を防止するためには、どのくらい虫が生息しているのか、またどのようなところで発生しているのかを知る必要があります。
貯穀害虫しかり、それは同じこと。
そのための昆虫モニタリングです。

しかし。
得てして貯穀害虫は光に集まりづらい。
メイガなどがまさに典型です。
となると効果的なモニタリングがなかなかしづらいことになります。
さあどうすればいいでしょうか。

フェロモントラップとは

便利なもので、世にはそうした貯穀害虫を捕らえることに特化した「フェロモントラップ」というものがあります。
特許開発された画期的な商品で、富士フレーバー株式会社さんなどが商品を出しています。

 

基本的に昆虫は雌の分泌した性フェロモンに雄が誘引され、交尾して増殖します。
フェロモントラップとは、この性フェロモンを人工的に合成し、誘引剤として使用し、捕獲するトラップのことです。
フェロモンによる誘引力は相当のものですから、かなり高確率に誘引されます。
つまり、いればほぼ、捕まる。
光誘引でのライトトラップより遙かに誘引力がハンパなく高いんです。
ですから光誘引(走光性)が余りされない貯穀害虫は、フェロモントラップでモニタリングするのが一番手っ取り早いのです。

このようなフェロモントラップは、非常に便利かつ強力で、貯穀害虫対策としてしばしば使われます。
この「ニューセリコ」とともに、ノシメマダアメイガ用の「ガチョン」という、ちょっとユニークな名前のフェロモントラップも有名です。
そこで粉体を扱う工場では、この二種のフェロモントラップのセットで貯穀害虫をモニタリングしているところも多いことでしょう。

 

それ以外にもシバンムシのなかでもジンサンシバンムシといって、源薬工場などでしばしば問題になるようなものに対して効果を見せる、トリオスというものもあります。
ごくまれに、上のニューセリコで捕獲されないのにシバンムシの内部発生が見られることがあります。
そういうときにはもしかすると、ニューセリコでは捕獲されずらいジンサンシバンムシ類が発生している危険があります。
そうしたときには、この右の「ハイレシス」というフェロモントラップが有効です。

 

その他にもコクヌストモドキ用のものなどもあることはあるのですが、これは、うーん…個人的には余り信用しとりません(笑)。
普通に床置きトラップでいんじゃないかな。

 

とまあ、このように貯穀害虫別には様々なフェロモントラップが出てますので、種類によって使い分けるといいでしょう。
尤も最初はやっぱりニューセリコ(一般的なシバンムシ対策)とガチョン(メイガ対策)の二種でいってみて、問題があれば他にって感じですかね。

フェロモントラップのデメリット

と、このようにシバンムシ類はじめ貯穀害虫にはうってつけ、対策には絶対欠かせないフェロモントラップですが、幾つかデメリットがあります。

フェロモントラップのデメリット
  • 一種の虫しか利かない
  • オスにしか効きめが弱い
  • 有効範囲が限定される
  • フェロモンが有効な種が限定されている
  • フェロモンの有効期間が短い
  • 高額である

 

まず、フェロモンでのトラップですからメスには余り効きません。(※1)
だからフェロモントラップだけでは基本的に昆虫を完全駆除することは出来ません。
時折業者が「フェロモントラップで捕獲して駆除します」と言うときは、信用しないほうがいいでしょう。
フェロモントラップは、あくまでモニタリングのツールです。
これだけで捕殺しようとしてシバンムシ類が減る、いなくなるということはありません。
こういうところは、大概問題がひたすら継続しています。

それと、フェロモントラップの効果対象は各種トラップにつき、およそ虫一種だけです。
例外もあるのですが、そんなに多くはないのが一般的です。
だからシバンムシ類が問題である工場はシバンムシ類専用のものを、メイガ類が問題である工場はそれとは違ったメイガ類専用のものを、それぞれ使う必要があります。
兼用のフェロモントラップというものは、原則的にそれほどないし、効果もそれほど期待が出来ません。

またフェロモンの有効範囲は、割と限定されます。
だだっ広いエリアではトラップ一つでは難しく、5メートルに一つ、といった範囲指定があります。

ただしこのことは、逆に言えば、これによって営巣箇所の特定が出来るということです。
つまり、あちこちに分散して設置することで原因究明調査を行い、捕獲数が多い箇所はその近くに発生源があるということになります。
しばしば専門業者はこのようにこのフェロモントラップを使います。
あちらこちらにトラップを設置し、昆虫の生息調査や発生源の究明を行うわけです。

へえ、なるほど…と自社管理的にもそうしたいところでしょうが、これ、一つ問題があります。
このトラップ、めっちゃ高いです。
独占市場の強みですね、何せ1つ千円以上します。
amazonで、「ニューセリコ」で1つ1,200円。

上のこの三つで四千円超えますからね。
た、た、高ェーっ!!
しかもフェロモンの有効期間は1ヶ月。
つまり1ヶ月後にまた購入する必要があります。
ですから通常は10個入り1ケースを購入するのですが、そうすると1万円くらいつきます。

フェロモントラップの使用目的を踏まえる

現場にフェロモントラップを設置する際に、知っておくべきことが幾つかあります。
フェロモントラップの使用目的、これをしっかりと把握しておきましょう。
フェロモントラップを使うのは、次の理由、目的があるはずです。
これを踏まえておかないと、むやみやたらに置くことになりかねませんし、発生要因の特定が難しくなるでしょう。

フェロモントラップの使用目的
  • 貯穀害虫の生息状況の把握(定期モニタリング、事前生息・事後効果判定調査)
  • 貯穀害虫の発生源の究明(発生源究明調査)

 

まず、貯穀害虫が生息しているのかどうか。その「生息の有無を知る」、という目的からフェロモントラップを使用する。
そのエリアに問題、リスクがあるかどうかを見る、監視する、モニタリングする、という場合です。
日々の定期的なモニタリングなどがそうですね。
また駆除施工を行う前、行った後に、問題やリスクがどうなったかを知る、というとき。
その場合、穀粉を扱う各エリアに1つずつ程度の設置数でよいでしょう。

一方、貯穀害虫が生息しているのがわかった、でどこに問題があるのか、どこに発生源があるのかを特定したい、という場合。
この場合、ただエリアに1つだけ置いたとして、それで発生要因が究明できるかはちょっと微妙です。
というのも、貯穀害虫の発生源の特定ってプロでも結構難しいのですよ。

そこでどうするか。
プロは、いくつかの発生源に目星を付けながら、場内にトラップを複数設置します。
そこでの捕獲数や捕獲状況を見比べながら、更に目星を絞り込んでピンポイントでトラップを設置していくのです。
それらを何度か繰り返して、やっと発生源に辿り着く。
そのくらい、貯穀害虫の発生源究明は難しいものです。
いや、こうしたって判らないなんてケースは、ままあります。
ですからこうした発生源の究明調査に使う、というのであれば場内1つではトラップ数は当然足りなくなります。

まずは、生息の有無の確認なのか、発生源を絞り込みたいのか、それによって設置数や場所は変わってくるものです。

フェロモントラップの捕獲結果

1ヶ月ほど、フェロモントラップを場内に設置し、その捕獲数をカウントしてみましょう。
どのくらいの貯穀害虫が捕獲されたでしょうか。

貯穀害虫の1ヶ月の捕獲状況分析
  • 0匹:生息なし
  • 1匹~10匹未満:内部発生リスクはまだ余り高くない
  • 10匹~30匹未満:内部発生の初期段階
  • 30匹~50匹未満:内部発生進行中
  • 50匹以上:内部発生が深刻に進んでいる

 

なんとなくですが、私の経験からおよそこんな状況にあるものだと思ってよろしいかと思います。

捕獲数が10匹未満だった。
まだ貯穀害虫は外部から、あるいは原材料などと一緒に持ち込まれているレベルかと思います。
ただし!
フェロモントラップの有効範囲は狭いですから、油断はしないほうがいいですね。

10~30匹未満、という場合。
ちょっと危機感を持ったほうがいいですね。
対策をするなら今のうちです。
何故なら、同種の昆虫の成虫が一定数以上生息しているってことは、すでに卵が産み落とされている、ということです。
だから、内部発生なのです!
それが始まっているのだから、急いだほうがいい。

それ以上という場合。
完全に内部発生が進行しています。
どこかに必ず問題があります。そしてそれは既にかなり進行している状況です。
早急な対応が必要でしょう。

まとめ

今回は貯穀害虫対策として、それに欠かせないフェロモントラップについてのお話を中心に致しました。
なるほど、貯穀害虫のモニタリングとその方法は判った。
それじゃ内部発生していた場合の対策はどうするんだ。
そう思いません?(笑)
大丈夫、次はその駆除について、ケーススタディしていきましょう。

 

※1:メーカーさんのページでは、メスにも効果があるとうたってますけど、うーん。私は正直、薄いと思いますね。「食ルアーを用いる」、ってだって発生源って餌があるから発生してるんですよ?

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