最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、前回の「前編」に引き続き、こちらのニュースです。

本日の時事食品ニュース
  • 自主回収のおから 旭川や札幌の66人が食中毒(2019年7月19日)

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

セレウス菌で食中毒が発生する仕組み

前回の「前編」では、セレウス菌の特徴などについて、お話させていただきました。
まだお読みになっていない方は、そちらからお読みいただくようにしてください。


Wikipedia

さて、前回お話したように、セレウス菌は食中毒事例は少ないのですが、土壌をはじめ自然界に普通に存在する腐敗菌であり、また高熱な調理にも耐える芽胞を形成する、ちと面倒くさい食中毒菌です。
ご飯や炒飯、今回の事例のような大豆食品など、菌数は少ないけれど多くの食材に存在していますし、それを常温放置すれば増殖し、毒素を産生します。
こうなるともう高熱では取り除けない。
ではどうすればいいのか。
今回の後編は、そのセレウス菌の「対策」についてお話いsたいと思います。

食中毒予防の三原則から考える

何事も、困った時には原理原則に立ち戻るのが一番です。
このことはセレウス菌対策についても言えること。
食中毒の原則といえばこちらです。

「つけない」「ふやさない」「やっつける」。
これは食中毒防止の三原則、大前提ですね。
では、これを踏まえてセレウス菌について、考えてみましょう。

まず、「つけない」。
これはどうでしょう。
セレウス菌は、土壌内はじめ自然界に普通に広く生息しています。

詰まり米をはじめ、農産物などには元々セレウス菌が付着している。
ということは、「つけない」というのは、難しい。
難しいというか、現実的ではない。

また高熱に強い芽胞形成菌ですから、「やっつける」こともなかなか困難です。

ではどうするか。
そこでセレウス菌を「増やさない」、これが重要性を帯びてくるわけです。

毒素を作らせないという対策

先のように加熱され芽胞を形成したセレウス菌は、48度以下の活動温度域(至適25~35℃)まで温度が下がると、今度は休眠をやめて増殖を始めます。
ちなみに、一旦芽胞を形成したセレウス菌がそれを解いて再び発芽し増殖する時間はそれほどかかりません。
まあ時間にしたって10分もあればたやすいかと思います。
つまり活動温度域に至ればセレウス菌はたやすく芽胞状態から発芽し増殖をはじめる、と考えていいでしょう。

しかし。
少数の菌数では、問題となる毒素「セレウリド」を産生しないのです。
つまり、セレウス菌は少量の摂取では食中毒にならないのです。
セレウス菌が問題になるのは、食品内に菌数が10万個を超えた段階。ですから、そこまで菌数を高めなければ問題は生じない。

セレウス菌による食中毒は、長時間放置による食品内での多量増殖が必要前提なのです。

そもそもどうしてこんな話だけ聞くと厄介なセレウス菌の食中毒の発生件数が少ないのかとえいば、「よっぽど増えないと問題にならないから」、です。
つまり、よっぽど常温状態で放置されないとセレウス菌の食中毒は発生しない、ということです。
実際、土壌菌であるセレウス菌を様々な食材で調べれば、それなりに存在しているかと思います。
また例えば炊きたてのご飯などを調べても、菌数はゼロではない、ということもあるかと思います。
それでも、全く問題にならない。
何故なら、その程度では毒素を作らないからです。
つまりはセレウス菌を、「増やさない」。
そのために、長時間、食材を常温で放置しない。これが鍵になります。

食材の常温長時間放置はこれだけ危ない!

そもそもセレウス菌の食中毒事故は、その大概が「食材の常温放置」が原因となっています。
炊いたご飯を、炒飯を、焼きそばを、パスタを常温で一日放置した。
それで食べて、食中毒になってしまった。
こんなパターンが大概です。

先にも言いましたが、セレウス菌は、菌数10万個を超えないと食中毒の原因である「セレウリド」を産生しません。
また広く自然界に存在し、耐熱性芽胞を形成するセレウス菌は、調理された一般食品にも意外と生存しています。
細かなデータは手元にないのですが、一般的に米や麺類などの穀類やナッツ類、野菜類、調味料、あるいは今回の問題に関わる豆腐などは、50%程度の牽出率で10~1,000/g程度のセレウス菌が生存しているものです。
しかし、そのくらいじゃ発症しないので問題にならない。
ところがその食材を常温で放置していると、セレウス菌はどんどん発芽増殖し、やがて毒素を産生するまでに至るのです。

ではどのくらいの放置時間で問題が生じるのでしょうか。
ここで少しデータを見てみます。

まず上のグラフから。
これは米飯にセレウス菌約1,000/gを接種させ、各温度条件でセレウス菌の増殖性を追ったデータです。
これを見ると、35℃で保温するとセレウス菌は4時間後に毒素産生可能個数域にまで到達しています。
しかし20℃では約10時間程度までそこに至りません。
そして、全ての温度帯において、16時間放置以降が危ないのは、ここから判るかと思います。

さて。
さらにもう一つのデータは、同条件で産生毒素量を追ったものですが、こちらも20℃では16時間程度まで毒素が増加しません。
これらから、セレウス菌対策にはいかに低温での管理が重要かがわかりますし、また25℃以上の長時間保管がいかにリスクが高いかがわかることでしょう。

やっぱりセレウス菌も酢は苦手!?

折角ですので、さらにもう一つのデータもご紹介しておきます。
これ、結構面白い!

様々な食品にやはりセレウス菌を少量(1,000/g)接種させ、25℃24時間放置した場合の菌数と毒素量を調べてみたデータがこちらです。
このように、常温放置によってほとんどの食品が高いセレウス菌数を示す結果となりました。
また毒性も随分と高まっています。
これを食べれば食中毒になりかねない状況です。

しかし面白いのは、「酢飯」、「イタリアンスパゲティ(ケチャップを用いたもの)」、「ポテトサラダ」といった、酢を含むものの毒素産生が低いということです
これらにおいてはND値(不検出)レベルにまで抑制されている。酢飯も検出はされているものの、かなり低い数値。
しかも、これらの3つはセレウス菌数も他より低い結果になっている。
見ての通り、普通の「スパゲティ」と、原料に酢を使用しているケチャップを使用した「イタリアンスパゲティ」とでは大きく菌数が違っています。
「マッシュポテト」と「ポテトサラダ」も同様ですね。
つまりこのことから酢が加わるとセレウス菌の増殖も、また毒素産生も抑制されることがわかります。
いやあ、酢の力ってほんと凄い!
余談ですが、セレウス菌だけじゃなく、酢飯って一般生菌数もそれほど上がらないんです。
海鮮系のお弁当を酢飯にしたがるのもよく判ります。
酢、マジすげえ。

冷却工程の重要性

これらのことから、セレウス菌を増殖させないためには20℃を切る温度帯での保管が重要であることがわかるかと思います。
さらにいうなら、セレウス菌の活動温度域は10℃以上であることから、できれば10℃以下での低温保存こそがセレウス菌を「ふやない」ための対策に有効な手段となるでしょう。
ということは、高熱で調理した食品を、いかに迅速に冷却させて、その増殖温度帯を切り抜けるか。これこそがセレウス菌対策のかなめとなるということです。
つまり、セレウス菌対策とは、ズバリ急速な冷却による増殖防止、ということです。

炊飯工程のある食品工場では、炊いた米飯を急速冷却機で冷やします。
まあご飯だけではなく、加熱調理した食材は大概すぐに冷却されます。
こうした冷却機は、いかに高熱の食材を短時間で冷却させるかという目的にこたえた機械です。
これによって、セレウス菌をはじめとした多くの微生物の活動温度域を切り抜けて、安全な温度域に製品を迅速に至らすことがその役目です。


急速冷凍機ナビ

厚生労働省による「大量調理施設衛生管理マニュアル」にも、加熱調理した食品は、食中毒菌の発育至適温度帯(20℃~50℃)の時間を短くさせ、30分以内に中心温度を20℃付近、あるいは60分以内に中心温度を10℃付近にまで下げることが重要だと書かれています。
これはつまり、ブラストチラーや真空冷却機を用いての冷却が明らかに望まれているようなものでしょう。
冷やすといえば、冷蔵庫、と思いがちですが、そもそも冷蔵庫の目的は、「保冷」、「保存」です。
ですから高熱の食材を中にいれると機能負担が高く、また冷蔵庫内の温度が高まってしまいがちです。
そもそも冷蔵庫は、「熱い食材を冷やす」という機能としてはあまり向いていないのです。
また送風による冷却は、中心温度を下がるのに大きく時間をかけてしまいますし、送風をあてている反対側の温度はなかなか下がりません。
「高温のものを冷やす」って、普通に考えるより意外と難しいんですね。
工場内でブラストチラーや真空冷却器を使うのは、こうした理由があるからです。

まとめ

今回はセレウス菌による食中毒を通じて、製造工程における「冷却」工程の重要性を学びました。
これらからもわかるように、そもそもセレウス菌が問題になるケースというのは、そのほとんどが長時間の放置による冷却工程、あるいは冷蔵保管上に要因があるのです。
細かいことはわかりませんが、今回の事例もおそらくはそこに問題があったことはすぐに想像が及ぶことです。
そして当然ですが、このことはセレウス菌対策だけの話にとどまりません。
特に似たような芽胞形成菌であるウェルシュ菌などについては、同様の対策、予防策が求められることでしょう。

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