ご自身の工場でのゴキブリ(チャバネゴキブリ)対策について、どのようにすればいいか。
まずは現状把握として、具体的な手法と状況評価の基準を、前回お話いたしました。
ではそれを踏まえて、駆除施工について今回はお話していきたく思います。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

チャバネゴキブリを駆除するために

まず前回、おおまかなゴキブリ対策の流れと事前準備について、お話いたしました。

IPMに基づくチャバネゴキブリの駆除手順
  1. 生息状況の把握(生息調査)
  2. 営巣状況の把握と、対策選定
  3. 駆除施工の実施
  4. 環境対策の実施
  5. 効果判定(生存状況の把握)
  6. 補助施工
  7. 最終効果確認

 

前回までは「1.生息状況の把握(生息調査)」を終えて、「2.営巣状況の把握と、対策選定」に進むところまでをお話しました。

さて、ここでロジック的なお話をさせていただきます。
やや込み入ってますが、防虫管理においては重要なお話です。

「ゴキブリ対策」だって当然ながら防虫管理の一つです。
そして工場での防虫管理は、「IPM」が基本です。
「IPM」とは、「統合的有害生物管理」。
その名の通り、「統合的な手法で、有害生物を、管理」することです。

声を大に言いますが、余り言われませんがこれこそが「食品工場における、正しいIPMの考え方」です。
(これについてはまた別途お話します)

ですから、現状を把握したら次はおよその「目標」の設定が上の通り、必要になります。
この場合、「目的」は「チャバネゴキブリの内部発生防止」となるわけですから、当然それを達成させる「目標」は「内部発生しないレベル」となります。
つまりここで駆除施工の評価基準を設定するわけです。
前回の記事から、せめて「1トラップにつき1~2匹」程度とするのが妥当かと思います。

さあ、現状の捕獲数から「目標」である「1トラップ1~2匹」を目指すため、どうすればいいのか、その「方針」を定めていきます。
これが具体的な駆除施工内容です。
さて、上のようにIPMはソフト、ハード、双方の対策を組み合わせて行うことが重要です。
つまり、薬剤だけの駆除ではなく(「化学的防除」)、清掃や営巣要因除去などの「環境的防除」、場合によっては設備的な対策である「物理的防除」をも行ってください、ということを言っているわけです。

そこで、今回は「薬剤による駆除」という「化学的防除」と、「生息源の除去」という「環境的防除」を組み合わせて行います。

自社で出来るゴキブリの駆除方法とそのポイント

以上、ロジック解説終わり。
お待たせしました。
ここから実際に駆除していきます。

まず、チャバネゴキブリの薬剤での駆除方法は幾つかあるものの、自社内で実際に行うとなると効果を含めて意外と限られてくるものです。
なかでも最も効果的で手軽な手法は、「ベイト剤」を使用した駆除でしょう。
「ベイト剤」とはゴキブリにとっての毒餌のこと。
つまりゴキブリの毒餌を工場内に直接設置、あるいは何かに付着させたものを巣の周辺に置いていくのです。
内部発生が進行しまくっているような現場はもはや専門家に任せるとして、それほどの状況まででもないならば、このベイト剤で十分駆除が可能です。
(実際、我々プロも、こういう場合にはベイト剤を使用します)

さて、それではどんな薬剤を使えばいいのでしょうか。
よく市販されている「ベイト剤」といえば、コンバットやブラックキャップなどです。
これらはこれらで悪くはないのですが、しかし如何せん、個数が必要になる。
そのため高くついてしまう上、家庭でのご使用ならまだしも、工場内ともなれば喫食や効果なども期待しているほどでなかったりということも。
ではどうすればいいか。
最近は便利なもので、なんとネットでもプロが使用している業務用のベイト剤が入手可能なのです。

例えば、この住化エンビロサイエンスさんの「ミサイルジェルD」。
我々もよく使用しているので十分知っています。効果はプロの私の、折り紙付き。
加えて、これだけでワンセットで注射状に使えるのも、一般の方にはありがたいことでしょう。
(通常、プロ使用の業務用ベイト剤は、別途、ベイトガンという薬剤を設置するための専用の道具が必要になります。にも関わらず、この「ミサイルジェルD」はそれなしで使える、ということです)
しかもよく見れば、ベイト剤設置用のキットまでついてくるじゃないですか!
これを使わない手は、絶対にありません。
へえ、これが「楽天」で手に入るのか!
へえ、凄い時代だなあ…。

さてこの薬剤を打ったキットを、ゴキブリが捕獲されていた箇所のすぐ付近に置いていきます。
尤も私、食品工場ではこれではないものを、実はお薦めしています。
これについてはまた別途何処かで。

ベイト剤でのゴキブリ駆除のポイント

非常に効果的で、お薦めの駆除方法であるベイト処理ですが、幾つか使用の際のポイントがあります。
これを守らないと、効果が出ない可能性が高いのでよく踏まえてください。

まず重要なのは、捕獲があった生息箇所のすぐ付近に置く、ということです。
というのも、チャバネゴキブリの移動範囲は非常に狭く、室内においても潜伏箇所のごく1~2m内だとされているからです。
つまりむやみやたらにどこにでもベイト剤を設置してもそれほど効果がない、ということです。ゴキブリが生息していない行動範囲外のところにベイト剤を置いても、食べてはくれません。
そしてこの「食べてくれないと駆除が出来ない」ということを、一般の方々は軽視する傾向があります。ここが実は一番重要にもかかわらず、です。
要するに、ベイト剤は食べてもらってなんぼ。ただ置けば食べてくれるものじゃ、全くない、てことです
ほんと、「この認識こそがプロと一般の方々との最大の違い」だと思ってもらっても全然かまわないでしょう。

時にこのベイト剤の選定に対して「強力な駆除剤を使うこと」などと書いてある素人さんのブログを以前に見たことがありますが、プロから言わせればベイト剤が強力かどうかはそれほど重要な話ではありません。
んなことより、「ゴキブリが食べるかどうか」のほうが少なく見積もって数十倍は重要です。
何せ食べなければ、死にません。
そして置けば食べるかというと、そうでもなかったりするんです。
汚れた環境下で他に美味しい餌があれば、毒などよりもそちらを選ぶでしょうし(だから清掃が重要なのです!)、何故かは判りませんが、現場現場でよく食べるベイト剤の種類が違う、なんてケースはザラにあるもの。
ゴキブリの研究からも、雑食性であるゴキブリは好みの傾向はあるものの、「逆に雑食性であるがゆえにずば抜けた誘引物はみられない」というのが研究結果としてあげられています。
(だから、前回書いた誘引剤の効果についても、精々そういう程度のことなのです)
一方で多量に集中して置けば多量に全部食べてくれるわけでもありませんし、だったらまだ少量をあちこちに設置するほうが「下手な鉄砲」なぶんだけマシでしょう。

ベイト剤ここに注意!
  • いないとこで、食べると思うなベイト剤
    →巣の付近に置きましょう。じゃないと効きません。食べないから。
  • 置けば全部、食べると思うなベイト剤
    →ゴキブリの喫食量は決まっています。多量に置けばいいってものではありません。
  • 食べれば皆、死ぬと思うなベイト剤
    →一口食べれば死ぬなんてものは食べません、生きてるから。致死量があります。
  • 置けば皆、食べると思うなベイト剤
    →貴方も好みがあるでしょ?ゴキブリにも嗜好性というのがあります。
  • 掃除もせず、食べると思うなベイト剤
    →他に餌があるのに、毒なんかわざわざ食べる生き物はいません。
  • いつまでも、食べると思うなベイト剤
    →ベイト剤はすぐ「食べ飽き」にぶつかります。致死量食べないから死にません。
  • いつまでも、死ぬと思うなベイト剤
    →後に触れますが、ゴキブリには抵抗性があります

 

ベイト剤以外の駆除

ベイト剤を使わない、となるとまず古典的な駆除方法として、エアゾール剤と液剤の二種を使う方法があります。
我々プロもよく使用します。
ですがこれを一般の方がやろうとすると、薬剤の選定や使用が結構大変だと思います。
まあ、色々な意味でお薦めしません。

それと時折、熱湯や洗剤、殺菌剤などをかけて殺すという話も聞きますが、効果は限定的でしょうね。
1匹のゴキブリにそれをして殺す、というのであればまだ話はわかりますが、営巣している全てのゴキブリをそれで死滅させるのはさすがにムリがあります。
ですからこれをやるためには、一旦巣からゴキブリを薬剤などで追い出す(フラッシングといいます)必要がありますが、ではそれをどうするのか。

尤も、確かにゴキブリは腹部にある気門で呼吸しますから、そこを洗剤で塞いでしまうという殺虫方法も実はないわけではありません。
実際、有機JAS認定工場など、使用薬剤が大幅に制限されているような工場では、殺虫剤での駆除が出来ないため、やむなく発泡洗浄剤などでくるんで窒息死させているところもあります。
ですがこれはやはり、特別な条件下で選択がないから、であり積極的に行うにはあまりに無駄が多すぎることでしょう。
結局、何故殺虫剤がここまで広く使われ、研究され、進化してきたかというと、他のどんな方法より手軽で便利で、そして何よりも効果が高いからなのです。

また、よく燻煙剤を使うのはどうか、という質問をいただきます。
室内じゅうを薬剤で充満させる燻煙剤は、便利だし設置すればエリア内の虫は全部死滅してくれるだろうから、誰にでも効果を出せそうだというイメージがなんとなくあるからだと思います。
我々プロも、それをさらにプロユース化させた「炭酸ガス剤」という、炭酸ガスに殺虫剤を混合したものを空間に散布することがあります。

ですが全ての殺虫剤は万能じゃないし、皆が思うほどに燻煙剤だって万能ではありません。
それは一重に薬剤の浸透性の問題です。
そもそもチャバネゴキブリは何処に生息しているのでしょうか。
それは例えばコールドテーブル内モーターの下だったり、配電盤の内側だったり、冷蔵庫パッキン内部だったり、シンク側面の折り返しの深い内側だったり、温水パイプカバー内だったり、といったところです。
皆様のイメージではなんとなく、燻煙剤というのはそういった部屋の奥の隅々まで浸透してくれると思っているかもしれませんが、意外とそうでもないことが多いのです。
誤解されたくありませんが、よっぽど生息が進んでしまっている場合、確かに減数対策にはある一定の効果を出すことも可能でしょう。
ですが、これで殲滅は、まあムリでしょうね。
どうしてもというのであれば、ベイト剤での駆除を後回しにして、期待をせずにまずは減数処理というつもりで行ったほうがよいでしょう。

ちなみに燻煙剤で汚染されたベイト剤は、当然ながらチャバネゴキブリは食べません
だって殺虫剤が付いていますから。
つまり、燻煙剤とベイト剤は併用できません。これはエアゾール剤も同様のことですが。

環境対策も忘れずに行うべし

また薬剤による駆除と同時に「環境的防除」、つまり清掃による生息源除去という環境整備対策が必要です。

このことはベイト剤による駆除において非常に重要です。
なぜなら、他に餌があるとゴキブリはわざわざ毒であるベイト剤を食べないからです。
ベイト剤を食べなければ、当然ゴキブリは死滅しません。
そもそも、清掃もしないでゴキブリ駆除をする、なんてそんな虫のいい話は世にありえません。(←虫だけに!)
大体ゴキブリが増加する環境を与えることは、ゴキブリの繁殖機会や営巣を許すようなものです。
はっきり言って私はそんな仕事を絶対に受けませんが、清掃もしないのに「ゴキブリが減らない」なんて駆除業者に文句を言うのは完全に筋違いもいいところな話です。
それは暴飲暴食をし続けているのに、医者に対して「薬を飲んでいるが生活習慣病が治らない」と文句を付けるのと何ら変わりもありません。
「駆除と清掃はワンセット」だと、どうか頭に叩き込んでください。じゃないと、ゴキブリはいなくなりません。

そもそも雑食性であるチャバネゴキブリの餌は多岐に及ぶため、ありとあらゆるものが餌になりかねません。
ですが考えてみれば、その行動範囲の狭さから、少なくとも捕獲された箇所の近辺には間違いなく餌となるものが存在しているはずです。
それらを除去するとともに、日々の清掃の中でも残渣や粉溜まりなどの除去を欠かさずおこなうようにしていくことが有効です。

言いたいことを言っていたら、予想以上に長くなってきてしまいました。(笑)
次回は、こうした駆除施工に対しての「効果判定」についてお話したく思います。

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