最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、こちらのニュースです。

本日の時事食品ニュース
  • 悲報かな。脅威の繁殖力を誇るチャバネゴキブリの耐性が更にアップ。殺処分不能な超進化を遂げつつある(米研究)(2019年7月2日)

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

あらゆる殺虫剤に耐性を持つゴキブリが激増中?

先日、「薬剤への抵抗性をつけたゴキブリが増えている」という海外の研究レポニュースがネットにあげられていました。

あ、このゴッキーのトップ画像、ええな!
ってのはさておいて(笑)、海外でのニュース内容はおよそ、次の通り。
(GIGAGINEさんの記事抜粋)

教授らの研究チームは、インディアナ州インディアナポリスとイリノイ州ダンビルにあるアパートの低層階で、3つのチャバネゴキブリの個体群に対し、6カ月にわたって様々な殺虫剤の組み合わせを試しました。

実験実施にあたっては、事前にゴキブリを捕獲して抵抗性の低い有効成分を調べ、マクロライド系殺虫剤・アバメクチン、ホウ酸、ネオニコチノイド系殺虫剤・チアメトキサムの3つを用意。使用方法は「単一」「混合」「交互(ローテーション)」の3種類が採られました。

その結果、大部分の個体群で、ゴキブリの数は変化しませんでした。殺虫剤が効くのであれば、時間の経過とともに個体数は減少していくはずですが、生き残った個体が殺虫剤に対する抵抗性を持った子孫を産むことで、排除効果が失われていくことが示唆されています。

調べた結果、ゴキブリは交差耐性により、まだ出会ったことのない殺虫剤に対する抵抗性すら身につけており、1世代重ねるだけで抵抗性は6倍にも強化されていたそうです。

なお、殺虫剤を混合して使用した場合には、むしろ個体数は増加する傾向すらあったとのこと。

うーん。
どうなんでしょうか。

殺虫剤も効かないスーパーゴキブリ!?

そもそもゴキブリの殺虫剤への抵抗性は、かねてから問題となっていたことです。
ある薬剤を使用し、駆除施工をし続けているとします。
まずその薬剤に弱いゴキブリが淘汰されます。
しかし一方で、その薬剤に強いゴキブリが生き残ります。
そのゴキブリが何世代かかけて、その薬剤に強い抵抗性遺伝子を持った個体が残っていきます。
こうしてその薬剤に効きづらい耐性ゴキブリが爆誕する、というもの。

ただし、抵抗性を備えたこのゴキブリも、最初に使い続けていたある薬剤にのみ抵抗性を持っているだけであって、違う薬剤、専門的に言うなら「作用機序が異なる」薬剤には抵抗性を備えていません。
だから抵抗性対策として、薬剤を時折ローテーションで変えながら施工する。
言ってみれば、これは防虫屋の業界の常識です。
どんな薬剤も全く効かない、スーパーゴキブリがいる!なあんてのは、ネタとしては面白いですけど、科学的では全くない都市伝説のレベルでしょう。

耐性ゴキブリとは?

そもそも、この殺虫剤抵抗性は、チャバネゴキブリについてのもの。
所謂クロゴキブリのことではないので、お間違いないよう。

どういうことかというと、チャバネゴキブリは屋内でしか生きられません。
それも集団で固まって、狭いところで生きています。
その行動範囲は、せいぜい1~2mといったところ。
寿命も短い。
そのため繁殖力を高め、多くの卵を短い期間で産んで、生態サイクルを早く回転させることで生き延びてきた。
だからこそ、薬剤駆除の対象にされ絶滅の危機にさらされやすく、そうして生き残りをはかってきた。
言ってみれば薬剤の抵抗性も、彼等の生命としての対応策なのでしょう。

一方でクロゴキブリは(成虫)ほぼ単体で生息し、屋外で生活する。
そんな薬剤への抵抗性の危機には余りさらされていないので、そうした能力を鍛えていないのです。

耐性ゴキブリの正体

そもそもこの抵抗性は、「ピレスロイド系」という薬剤でよく言われてきたことです。
殺虫剤には幾つか種類がありますが、その中でもこの「ピレスロイド系」薬剤は、非常に扱いやすいため、昔から、それこそ100年くらい昔からよく使われてきました。
勿論ながら、今でも現役で使われ続けています。

ピレスロイド系薬剤の特徴
  • 即効性が高い
  • 忌避効果が高い(フラッシングアウト効果が期待できる)
  • 昆虫への効き目が高い一方で、人畜への安全性が高い(選択毒性が高い)
  • ただし魚毒性は高い
  • 残効性が低く、分解性が早い
  • 安価で入手しやすい
  • 抵抗性が養われやすい

 

ピレスロイド系薬剤とは本来、安全性が極めて高いとされる除虫菊(シロバナムシヨケギク)由来の殺虫剤です。
「フェノトリン」や「エトフェンプロックス」などが代表どころ。
昆虫への効果が非常に高い一方で、他の動物には安全性が非常に高く、吸収してもすぐに分解されてしまう。「選択毒性が高い」などと専門的には言います。
また即効性が早い分だけ、空気中での分解も早く、すぐ消えてしまう。つまり環境に優しい、ということにもなります。
さらに忌避効果も高い。虫が嫌がってこなくなる、ということですね。
蚊取り線香はそれを利用した忌避剤です。

それからもう一つ。
フラッシングアウト効果といって、これを浴びた昆虫は混乱して潜伏箇所から飛び出してきます。
手の届かない暗所などに隠れているチャバネゴキブリに有効なのは、このためです。
しばしばプロの駆除業者は、より殺虫効果の高い有機リン系薬剤とこのピレスロイド系薬剤を併合して使用します。
まず周辺床面に有機リン系薬剤を散布しておき、その後営巣箇所に対してピンポイントでピレスロイド系薬剤を散布する。
するとフラッシングアウトしたゴキブリが飛び出して、周辺に散布された薬剤を浴び、致死する、といった昔ながらの殺虫方法です。

さて、このように便利な薬剤であるピレスロイド系薬剤ですが、反面、ゴキブリの抵抗性が付きやすいと言われてきました。
一般的に耐性ゴキブリというのは、このピレスロイド系薬剤への抵抗性を備えたチャバネゴキブリのことを言います。

ですが、同時にピレスロイド系ではない薬剤への抵抗性を備えたゴキブリも出始めているというのもまたよく聞く話。
上にも少し出た、有機リン系薬剤ですね。
ピレスロイド系の薬剤に対して抵抗性は非常に付きづらい、と言われていますが、中にはこれに対する耐性ゴキブリもいます。
ここまではよく言われている話です。

更に、近年ではベイト剤に対する抵抗性を備えたゴキブリの存在も、耳にするようになりました。
毒餌であるベイト剤が、効かない、食べても死なない、というのです。
ただしこの話、よく調べてみると、ただ単にゴキブリがベイト剤(毒餌)を食べていないだけ、というケースも非常に多い。
よく「このベイト剤がきかない」なんてことを言われたりもするのですが、大概の場合は、そうじゃない。
しかるべき箇所に、しかるべき種のベイト剤を、しかるべき量、しかるべき状態で設置すればすぐにゴキブリが死滅した、なんてことは何度もこれまで私自身が経験してきたことです。

本当にそんな耐性ゴキブリがいるのか?

さて、今回のニュースに戻りましょう。
このニュースは、上のように昔からいた耐性ゴキブリではない、と言っています。

「ゴキブリは交差耐性により、まだ出会ったことのない殺虫剤に対する抵抗性すら身につけており」

ここですね、重要なポイントは。
と同時に不可思議というか、マユツバというか(笑)、ホントに?と思うポイントでもあります。
だって、「ずっと毒を与えていたら、まだ与えていない違う種類の毒への耐性もついてきた」、と言ってるわけですよ?
マジすかそれ?
猛毒柳もびっくりだよ!

(裏返りません笑)

ホウ酸という殺虫剤

しかも今回与えている殺虫剤が興味深い。
「ホウ酸」、与えているんですね。
そう、あの「ホウ酸ダンゴ」のホウ酸です。
これ、実は他の殺虫剤とは全くタイプの違うものなのです。

ホウ酸の特徴
  • 虫に脱水症状を起こさせて殺す
  • 忌避効果がない(毒だと認識されない)
  • 抵抗性が生じない

 

ホウ酸は、ゴキブリに脱水症状を起こさせます。
人間にとってはほぼ毒性のないホウ酸ですが、腎臓機能のない虫は排泄しきれず蓄積していく。
その結果、脱水症状を起こして致死します。

ゴキブリというのは水が必要な生物なんです。
ゴキブリは、食べるものがなくても水だけでしばらく生き続けます。排水には栄養もあるので、それで十分生きていける。
ですが水がないと、ほんの数日しか生きられない。
そのくらい、水が重要。ゴキブリが水回りでしばしば営巣して生息しているのはそのためです。

だから脱水症状は非常に効果的。ホウ酸の効果はここにあります。
しかも毒だと気付かれない。
未解明のことが多いのですが、ゴキブリは殺虫剤などの生命の危険に会うと仲間に対して警告フェロモンを発する、などと言われています。
ですがこのような蓄積毒には、恐らくそうした働きはないのではないか。
つまり、蓄積させて死ぬので効果は非常に遅いのですが、しかし反面、毒だと思われず、しかも誘引もするため食べ続けられ、そして食べればいつか確実に死ぬ。
それがホウ酸です。

その抵抗性というと、脱水症状が起きないということでしょうが、これは他の毒に対する抵抗性とはまた全く違う話。

そもそも殺虫剤の抵抗性というのは、ものすごく乱暴に言うと「薬に対して鈍感になる」ということです。
ある機能を破損させて殺すのが殺虫剤ですから、それをスルーできるような「鈍さ」を遺伝的に養っているのが耐性ゴキブリです。
ですが、ホウ酸はそれとは違う。
どんなにスルーしても排泄できないのだから、いつかは脱水症状が生じる。
これをどのように耐性を高めるというのか、それをどう遅らせるのか、現段階ではまだよく判りません。
いずれにせよ、「ホウ酸は抵抗性が生じにくい、ていうか原理的に生じない」と長年教えられ続けてきた身としてはこの話、興味が尽きません。

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