前回はクロゴキブリのお話をいたしました。
どちらかといえば一般の方々向けのお話だったようにとられるかもしれませんが、しかし。
食品工場のゴキブリ対策においても知っておくべき基礎知識、お役立ち情報があったかと思います。
そして続く今回は、完全に食品工場の方々向け。
基礎知識から、現場で使える実践的な情報までお伝えいたしましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

チャバネゴキブリの特徴

前回に続いてゴキブリのお話です。
今回は、特に都心の食品工場では非常に厄介な、チャバネゴキブリについて、プロならではのお話をしていきます。
まずは、ざざっとチャバネゴキブリの特徴を抑えていきます。
そんなん知ってるよ!と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。
意外と盲点があるものですし、そこにこそ重要なポイントがあるんです。

まず知らない方へ。
この薄茶色の小さい虫が、チャバネゴキブリです。
時折都心の飲食店や居酒屋さんなどで見ることがあるかもしれません。
身体の斑点も特徴です。
はい、ウィキペディア様よりご拝借の画像がこちらです。

チャバネゴキブリの特徴
  • 体長1.5㎝程度(クロゴキブリより小さい)
  • 黄褐色、背中に縦の黒スジあり
  • 温かい場所と水周りを好む(機械の熱源、温水パイプ周辺、冷蔵庫内モーター部、コンロ周辺など)
  • クロゴキブリよりも寒さに弱い(20度以下では繁殖不可)
  • 活動期は室内なら1年中
  • 工場内での内部発生がしやすい(室内でしか生きれないため)
  • クロゴキブリに比べて短命な分、繁殖力と繁殖期間が短い
  • 孵化するまで卵鞘(卵)を腹端に保持している
  • 夜行性である
  • 行動範囲が狭い
  • 都心部に多く生息

 

こうしてみるとクロゴキブリとの共通点もあるものの、違いがかなり目立ちます。
で、そういうところが実は重要だったりするんです。

まず成虫の体長は1.5㎝程度、ということはクロゴキブリのおよそ1/2ほど。
つまり、小さくて薄茶色です。

上の画像からも判るように、クロゴキブリよりいくぼか細めでシュっとしており、背中に2本の縦筋がある。それが特徴となっています。
うん、いかにも都会的。

そう、チャバネゴキブリは都心部に多く生息しています。
都内の飲食店の厨房や食品工場の製造施設内などがそうですね。
具体的な生息場所については別項でお話しますが、ここで重要なのは一部例外を除いてチャバネゴキブリは室内でしかほとんど生息していない、ということ。
気温の高い真夏にはそうではないかもしれませんが、チャバネゴキブリは基本的に屋外では生息できません。

つまりチャバネゴキブリは寒さにとかく弱いので、屋外では基本的に活動できないのです。
ここ、すごく重要。

そしてそのぶんだけ行動範囲が狭いのも、チャバネゴキブリの特徴です

チャバネゴキブリは、このように行動範囲が限られているからこそ、限られた狭いところで大量に繁殖して生き残るようにしている。
実際、チャバネゴキブリの行動範囲は、半径1~せいぜい2m程度だといわれています。
ですので、生体を見つけたら、その周辺に生息要因があると思ってよろしいかと思います。

ということは、逆に言えば、生体を見つけた周辺内にチャバネゴキブリの巣がある、ということになります。
ちなみに害虫駆除のプロは消灯後の飲食店店舗の灯火をいきなりつけ、そこに生息していたチャバネゴキブリをチェックすることで、営巣箇所の目安をつけて、駆除施工を実施します。
(勿論、私もそうです)

この「目安のつけどころ」、「カンの働きどころ」こそが、実をいうと、ゴキブリ駆除屋の腕の見せどころ。
私もこの道ウン十年のベテランですから、もし駆除施工をやらせていただけるなら、ほぼほぼの巣を叩くことが出来る、と自負しています。
これはもう、プロならではの現場経験で培われた直感、アンテナとしか言いようがない世界です。
そして(私を勿論含む)虫屋のプロは、こういう現場経験だけが物言うスキルを持っている者のことを言うのです。

おっと私や業者のことより、話を戻しましょう。

また卵鞘(卵)を産み落とすクロゴキブリと違って、チャバネゴキブリは自身の卵鞘(卵)を腹端に保持して生息します。
ですから卵鞘を抱えたチャバネゴキブリのメスは、自身の巣からあまり活動しなくなります。

ぐはっ!
インパクトある画像ですみません。
こちらもウィキペディア様の画像を拝借いたしました。
これはクロゴキブリですが、このようにゴキブリは「卵鞘」という卵の塊を産み落とします。
このクロゴキブリの場合、この卵鞘はその後産み落とされ、どこかに固着されます。
しかしチャバネゴキブリは、同じようなこの卵鞘を、ずっと抱えて生きるのです。

そもそも、チャバネゴキブリはクロゴキブリより短命です。
そしてチャバネゴキブリ対策で最も重要なことですが、それゆえにチャバネゴキブリはクロゴキブリより繁殖力が高くなります。というか寧ろ、繁殖力を高めることで、種を存続させているのです。
つまり、チャバネゴキブリのほうが明らかに内部発生しやすく進化してきた、ということになります。
チャバネゴキブリの駆除において、このことは非常に重要な意味を持つことになります。

繁殖力の高いチャバネゴキブリ

チャバネゴキブリは、クロゴキブリより繁殖力が高い。
これはどういうことでしょうか。

上の通り、チャバネゴキブリはクロゴキブリと違って卵鞘(卵)をそこらへんに産み落とすようなことはしません。
そうしてしまうと、天敵に食べられたり、環境変化についていけなかったりなどといったリスクがあるため、繁殖率が低下します。
だからチャバネゴキブリは大切に自らの腹部に付着させ、巣の安全な箇所にとどまって繁殖をより確かにさせるのです。

先にも述べましたが、チャバネゴキブリはクロゴキブリより寿命が短い。
例えば、チャバネゴキブリの幼虫期間は、1~2ヶ月。
これはおよそ半年~1年幼虫期間があるクロゴキブリに比べてえらく短いことになります。
幼虫期間が短いということは、すぐに成長し、繁殖期に達するということです。

ちなみに成虫寿命は、1年以上生きるクロゴキブリに対し、チャバネゴキブリは半年以内。
だから、彼らとしてはその間に種を存続させるようにしなくてはいけません。
そのためチャバネゴキブリは一年中温かいところに巣を作って集団生活し、そこで一年中繁殖が可能であり、またメスが卵鞘(卵)を保持することでより繁殖の可能性を高め、その卵鞘(卵)内の卵の個数もクロゴキブリより多く、このように生態サイクルを早くまわしてより効果的に繁殖を進めるのです。

当然ながら「繁殖力が高い」ということは、我々側にとっては問題(内部発生)の進行が早く、またたやすく、被害が広がりやすく、根絶が難しい、ということになります

チャバネゴキブリの生息箇所

都内の飲食店でチャバネゴキブリに悩まされているところは非常に多いと思います。
食品工場も同様でしょう。
え、チャバネゴキブリの多い業種ですか?
私の経験では、水を多用し、加熱工程があって、また湿度が高い工場。
例えばパン工場などやお菓子工場、弁当惣菜工場などなど。
つまり、高温高湿多水。これがチャバネゴキブリの注意信号です。

その一方で、低温管理が基本な食肉一次加工や鮮魚、それほど餌の多くない飲料や野菜カット工場などは比較的少ないかもしれません。
ただし、油断しないように。出るときは、出ます。
しかも彼らも追い込まれているから、冷蔵庫電源ボックス奥や電話の中やエアコンパネルの中、コンセントボックス内やパソコン内なんかで生息していたりします。こうなると薬剤処理が届かないので(機械が壊れますから、我々業者は手が出せません)問題が根深くなりがちです。

また別にお話しますが、これは決して差別などではなく現実的な話として、はっきり言わせていただきます。
外国人労働者の多い工場はチャバネゴキブリが多い傾向があります。
これについては次の記事で扱う予定ですので、そちらにて。

さて、チャバネゴキブリはそうした厨房や工場の製造施設の、比較的温かい場所に営巣します。
代表的なところでは、機械熱源や、冷蔵庫やコールドテーブルのモーター部、あるいはコンロ周辺、配電盤内、さらには温水パイプの周辺。カバー内の断熱材などですね。
ここら辺は、プロなら必ず生息チェックを行う場所であり、そうした温度が常時高い箇所で、チャバネゴキブリは生息しているのです。

あるいは、シンクの裏側などもそう。
シンク側面や裏側に、折り返しがあるでしょう。
あるいはその下の棚ですね。
その内側や裏側がチャバネゴキブリの巣になっていることは、非常に多いものです。
洗浄機の周辺などもそうですね。
高温の温水を使い、水が多い洗浄機周辺はチャバネゴキブリの最高の生息箇所になりがちです。

そしてこのように、シンク下や洗浄機横などに台車を保管(というか放置)しておくと、この台車に落下、付着したゴキブリがそのまま運ばれて、工場各所に広がります。
例えば元々洗浄室などにしかいなかったゴキブリが別エリアのシンクの温水パイプなどに広がる。
何度も見ている話ですが、こうしたときは、このように何らかによって運ばれていることが殊更多い。
これが「持ち込み」と言われる問題です。
これについては別欄で詳しくお話致します。

おっと、「ゴキブリと水」について話を戻しましょう。
クロゴキブリなどもそうですが、ゴキブリは水の付近でよく生息しています
例えば排水由来のコバエのように、ゴキブリ自体が水中で生息、あるいは水中に卵を生むことはないにも関わらず、です。
これはゴキブリにとって、それだけ水が重要であることを意味しています。
あるデータでは、チャバネゴキブリは水だけで1ヶ月の生存が可能だということ。
しかし、水分がない状況では、10日と持ちません。
そのくらいゴキブリの生息には水が重要なのです。

また、チャバネゴキブリが生息している場合、糞の跡で確認できます。
黒い点々が、それです。
冷蔵庫周辺などがおびただしい微笑な黒い点で汚れているときは、チャバネゴキブリが生息している、あるいは生息していたことを物語っています。

スチールロッカーの中で多量に営巣してしたチャバネゴキブリ。(駆除施工直後)
ロッカー内側の底板や壁面にある、黒いポツポツ。これがチャバネゴキブリの糞です。
このように、ゴキブリが多量発生している箇所には、糞が多くみられますので一目で営巣がわかります。
(ちなみにロッカーの中でもこのようにチャバネゴキブリは生息しています。とくに横の穴の空いた空間の内側に生息しているのです)

チャバネゴキブリはどうやって工場に侵入するのか

ここでひとつ疑問がわくかもしれません。
屋外で生息できないチャバネゴキブリは、どうやってそもそも工場や厨房に入ってくるのか、です。

何もない空気から、虫は発生しません。
だから最初に必ず「外部侵入」という事実があり、それが場内で繁殖することで「内部発生」へとつながるのです。

では、最初にチャバネゴキブリはどこからやってくるのでしょう。
屋外で棲息できないのだから、自力で侵入してくることは極めて稀です。
ここに、「持ち込み」という現象が生じるのです
これは工場内に入る「もの」に付着し、一緒に持ってきてしまう、という問題です。
例えば、原材料と一緒に入ってくる。
あるいは、それらを入れた包装材料と一緒に入ってくる。
これ、実は結構多いです。
野菜の段ボールなどにゴキブリが付着して入ってきてしまうことは、そう珍しいことではありません。
もしくは、「人間」と一緒に入ってくる。
つまり、従事者の体や衣類に付着して工場に入ってくる。
いやいや、ないない、と思うでしょ?
でも実は多いんです。
「どうしてウチの工場は、更衣室だけ、あるいは下足場だけ、チャバネゴキブリがいるんだろう」
そんな工場もあるでしょう。現に、私も何度も対応しています。
上のスチールロッカーの写真も、実はそうでした。
このことは、次回のお話につながる大きなヒントです。

屋外にいるチャバネゴキブリ!?

最後に一点。
基本的に屋外では生息が困難なチャバネゴキブリですが、唯一というか、屋外生息性のチャバネゴキブリがいるのです。
これを「モリチャバネゴキブリ」といいます。

このゴキブリを私が実際に目にしたのは、20年くらい前の初秋のことでしょうか。
煮物の具材を扱っている関東の地方工場で、そこでは廃棄物を屋外コンテナに入れて管理していたのです。
結果、その排水が屋外に垂れて、コバエ類の発生要因になっていたのですが、防虫管理上、定期的に毎月、契約上その周辺の屋外排水溝に殺虫剤をハンドボンベで散布する、という作業を行っていました。
するとあるとき、たまっていた落葉に対して殺虫剤を散布したらなんと、そこからチャバネゴキブリが忌避してワラワラと出てきたのです。
恐らくは温かい多量の落葉の下で暖を取りながら、その栄養素の高い排水を生息源として生きていたのでしょう。

 

「え、チャバネゴキブリって屋外生息出来るの!?」

そう思って、しばらく薬剤を集中的に散布していると、なんとそのチャバネゴキブリが飛んで移動するではないですか!?
これには驚きました。
だって、それまで入社以来、チャバネゴキブリは屋外では生息できず、飛翔はできない、ということを徹底的に教えられてきたものですから。

はや、これは新種か!?と思って当時勤めていた大手衛生管理屋の研究部署に問い合わせたのが、彼らとの出会い。
まもなく、それがモリチャバネであることを私は初めて知ることになりました。

このように、モリチャバネゴキブリは、屋外に生息します。
落葉などに混じって生息し、必要に応じて飛翔します。
ですが、私も実際見ていますが、飛ぶといってもジャンプ程度。
それほど器用に飛翔するわけではありません。
また屋外生息も恐らくはかなり限定的で、それほど広範囲に生息するものではなさそうです。(注:私の経験則ですが)
ただし、場内では発生しません。
おそらく、侵入しても、例えば他のチャバネゴキブリのように、熱源などに営巣することはどうやらなさそうです。
よってあくまで緑地由来の歩行性の外部侵入昆虫、と考えてもよさそうです。

まとめ

今回はチャバネゴキブリの基礎知識と、生態などについての基礎知識をお話いたしました。

さて。
このようにチャバネゴキブリが発生している場合、多くの場合、専門業者に委託することになると思います。
(私を含めてですが)彼らの専門技術はそれこそ職人といえるレベルであることが多く、多くの場合、専門家に任せたほうが問題解決が早いのは全くもって間違い有りません。
その意味では、多くの駆除屋さんはさすがに餅は餅屋だといえる技量を備えています。
それはもう、プロはやっぱりプロというもの。
ちなみにプロは、現場の「糞の臭い」でわかります。
先にも軽く触れましたが、例えば私を鍛えていただいた昔の先輩は、ぱっと現場に入って瞬時に「問題はこことここだな!」とほぼ確実に営巣箇所を差し当ててみせていたものです。

ただしその一方で、そうした職人肌が根強いこの業界、多くの駆除施工は「カンや経験」で行われることが多いです。
ですから、
「効果判定は?」
「事前調査は?」
というと、
「いやあ、そういうのは大丈夫っすよwww」
とごまかされる…という言い方は彼等にさすがにかわいそうでしょうが、経験値のレベルではぐらかされることも少なくありません。
(最近さすがにそういう業者は少なくなってきたと思いますが)

ただし誤解のないように。
そうしたことは彼らの高い優れた職人的技量あっての話。
別にだまそうなどというような話ではなく、本当にそれで問題が治まると長年の経験で知っているからこそそういうわけです。
(そしてそういうプロは本当に凄いです!)
なので正直な話、小さな飲食店などは結果が伴うのであればそれでもいいというところも多いと思っていますが、でも記録や文書化を求められる食品工場は事情が違うでしょう。
また、出来るだけ業者に任せず、自分で出来ることは極力自社で管理したい、という方もおられることでしょう。

ということで次回は、食品工場でのチャバネゴキブリ駆除をどうするか、についてお話したく思います。

■□貴方の工場・店舗で悩んではいませんか■□
・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
    この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです
  • そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
  • どうですか?
    そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?