3月を迎えても未だにに続いている、ノロウィルス食中毒被害。
今回は食品工場においてノロウィルス食中毒にどう向かえばいいのか、お話したく思います。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

ノロウィルス食中毒の現状

3月。冬から春になって、ようやく気温も上がってきました。
私などはかなり重度の花粉症なのでこの時期が非常に苦手なのですが、それはさておいて。
春にはなったものの、まだ続いているのがノロウィルスによる食中毒被害です。
このところも、和歌山県の幼稚園で66人の幼稚園児が集団感染したり、大阪ではパナソニックの社員食堂で107人が感染するなど、立て続いての大型食中毒の報道がなされています。

ノロウィルスによる食中毒のピークは確かに冬ではありますが、しかしこのように暖かくなっても油断は出来ません。
夏にだって、場合によっては感染することすらあるのです。
これは厚生労働省のデータですが、これを見れば必ずしも夏に発生しないとは限らないことが判るでしょう。

そもそもノロウィルスは低温や乾燥に強く、また飛沫感染、空気感染もします。
特に冬場は気温が低く空気が乾燥するため、空気の中に飛散したウィルスを吸い込みやすくなるのです。
しかも感染力が強いノロウィルスは、数百個などごく少量でも感染が可能です。
よって、感染者の吐瀉物、あるいは糞便などの処理がよっぽど徹底されない場合、乾いた後に塵埃とともに舞い上がり、二次汚染を引き起こしかねません。
そうした冬の危険性に比べ、比較的湿度が上昇する春以降は空気感染の危険は下がってきます。
しかし、それでも上のようにウィルスに汚染された食品製造従事者が食材に触れれば、交差汚染による経口感染は生じますし、そのリスクは冬でも春でも季節に関係がありません。

エキサイトニュース
 
焼きたてパンで46人食中毒 ノロウイルス検出 福井県で注意報! (2019年3月11日) - ...
https://www.excite.co.jp/news/article/Hazardlab_28532/
今月2日から5日にかけて、福井県坂井市のパン屋が製造したパンを食べた46人が下痢や嘔吐などの症状を訴えていたことがわかった。患者や調理スタッフからノロウイルスが検出されたとして、県の医療福祉センターは...

実を言えば一昔前、ノロウィルスといったら二枚貝、カキの加熱不足を摂食したから、というのが一般的でした。
今や昔の、なんとも純朴な時代の話のようにも聞こえますが、これ、そんな前の話ではなく、ほんの数年前の話なのです。
ですからその頃はまだ、このようにパンや乾燥食品などを食べてノロウィルスが発症する、などとは真剣には考えられていませんでした。
多くの乾物食品などは工程上で加熱されてノロウィルスのリスクはなくなるから大丈夫だろう、程度にしか思われていなかったのです。

そんな食品業界の常識が大きく覆されたのが、2017年2月の刻み海苔によるノロウィルス大規模食中毒による激震でした。
というのも、これまで海苔のような乾物は水分活性も低いため、そもそも微生物汚染の危険は元来低いものとされていたのです。
また海苔とは、いわば食の脇役。海苔巻きやおにぎり、ふりかけ、薬味などなど、海苔を食べることは多くとも、それだけを多量に食べるようなことも、そうはないでしょう。
にも関わらず、実際には少量で発症し、乾燥に強いノロウィルスの食中毒要因となってしまったのです。(この食中毒の場合、なんと親子丼にかける程度の使用だったのです)

更に言うなら、海苔は賞味期限も長いため、その長期保管の間ずっとノロウィルスが生存し、病原性が残っていないと発症しません。
つまりこの食中毒事件では、2ヶ月以上もの長期保管の間、乾燥した海苔にノロウィルスが付着、生存し、病原性を保っていたことになります。
いずれにせよ、このことから乾物、あるいは海苔のような長期保管される摂食量が少量の食品についても、ノロウィルスの対策が必要である、という認識を新たにされました。

これらのことからも判るように、この事件は、改めて振り返っても我々にノロウィルスの特質を伝えるのにこれ以上ない格好の題材でもあります。

刻み海苔のノロウィルス食中毒が我々につきつけたこと
  • ノロウィルスの感染力は非常に高い
  • ノロウィルス食中毒は拡散、大規模化しやすい
  • ノロウィルスは乾燥に強い(海苔のような水分活性の低い食材でも汚染される)
  • ノロウィルスは少量でも発症する
  • ノロウィルスは長期生存し病原性を残す

 

さて、上のような、パンでのノロウィルス食中毒についても同様のことが考えられます。
パンは焼成工程を減ることで他の食中毒菌同様、ノロウィルスもまた死滅させることが出来ます。
しかし問題は、この後。
焼成後、冷却、スライスなどを経て包装されるまでの間が、実は一番危険なのです。
勿論このことは、パンに限った話ではありません。
つまりノロウィルスも他の食中毒菌同様、加熱殺菌した後の汚染防止を如何に防ぐかということが重要になります。
このことを改めて、食品工場の衛生管理においても考えてみる必要があるでしょう。

ノロウィルス食中毒と細菌性食中毒は何が違うか

ノロウィルス食中毒は、他の細菌性食中毒と大きな違いがあります。
最大の違いは、「ノロウィルスは、食品内で増えない」ということです。

ノロウィルス(に限らずウィルス)は、非常に微小であり、細胞を持っていない微生物です。
そのため自分自身だけで増殖が出来ず、増殖には生きている細胞が必要です。
人間の腸管内細胞に入り込んで自らを細胞にコピーさせることで、増殖するのです。
つまり「増殖するのは人間の体内」である、ということです。

一方、食中毒菌などの細菌はウィルスに比べ大きく、細胞を持っているため分裂によって増殖します。
そのため、食中毒となるケースは次のいずれかとなります。

細菌による食中毒の要因
  • 人体内で分裂して自己増殖することで、食中毒を発症させる
  • 人体内で分裂して自己増殖し、毒素を生産して食中毒を発症させる
  • 食品内で増殖し、それを摂食した人間が食中毒を発症させる

 

つまりこちらは「増殖するのは食品内」ということもありうる、ということです。
これらの違いは、ノロウィルスというものを考え、対策していく上で重要な違いとなってくるので、しっかり踏まえておきましょう。

検便でのノロウィルス保菌検査

従事者の検便にノロウィルスの保菌検査を組み入れている、という工場も皆様の中にはあることでしょう。
3項目、あるいは5項目の定期的な検便に加え、シーズンである冬場のみノロウィルスを検便項目に加える、という具合ですね。
「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成29年6月改正)にも、検便検査として「10月から3月のノロウィルス流行期には、月に1回以上または必要に応じてノロウィルスの検便検査に努めること。」と記載されています。

はっきり言って、ノロウィルスの遺伝子検査は値が張ります。
これでも数年前はやもすれば1検体あたり数万円もしたものですが、ここ最近はPCR法(遺伝子増幅法)の確立によって値段がこなれてきたせいか、ようやく数千円程度で出来るところが多くなってきました。
でもまあ、それでも他項目に比べたら、1検体(1人あたり)数千円(3,000円~4,000円程度が多いのかな?)というのは突出して高額ですよね。
また昨今では検査結果が出るのも早くなってきており、条件次第では即日での報告が可能というところも増えてきているようです。
(病院での即日結果の検査はその多くが抗原反応による簡易検査でしかないため、上の検査に比べて精度面で懸念されるところがあります。ご注意を。)
これらのことから、近年、従事者のノロウィルス保菌状況を定期的に検便でチェックし始めた、という工場が増えています。
このこと自体は、よろしいことだと思います。
しかしその場合、幾つか考えなくてはいけない点があります。

検便は保菌状況の現状確認でしかない

検便による検査は、今このタイミングでノロウィルスの保菌者がいるかどうか、ということを調べるために実施されます。
つまり、もし全員が陰性であった場合、従事者の中に保菌者がいないことの検証にはなるでしょうが、それはあくまで検査時の時点のみの話です。

更に、ノロウィルスは他の検査項目、例えば赤痢、サルモネラ、腸管出血性大腸菌(多くの工場がこれらを通常の検査項目とされていると思いますが)などに比べて、陽性率が非常に高いです。
何せ、ノロウィルスは感染しても症状が出ない場合も少なくありません。
およそ1割から2割程度が、そうした不顕性の無症状病原体保有者と言われています。
よってそれらの方々は検査してみないと結果が判りませんし、自覚症状もないまま陽性との結果を見て驚いたなどということも結構聞く話です。
また感染から1週間以上経過しても陽性として検出されることもままあります。ノロウィルスの体内期間はかなり長いのです。
以上のことから、この検便結果をもってして取引先様に対し保菌者がいないことの証明書としたい、などとは全く考えないほうがいいでしょう。
そもそもこうしたことを目的化することは本筋ではありませんし、高確率で結果がそぐわなくなると思います。
本来の原理原則として、ノロウィルスの検便は「工場内のルールや個人衛生管理が遵守されているか」、「その効果が出ているか」、あくまでその検証のためのに行われるべきです。
(後にもう少し詳しくお話しますが、他の衛生管理と同様に、ノロウィルスについてもマネジメントシステムとして対応すべきでしょう。)

陽性の場合の対応措置について

上のことも踏まえながら、最も考えなくてはいけない点がこちら。
つまり、意外と出やすい陽性結果に対し、ただちにしばらくの間出勤停止という措置が、現実的にとれるのか、ということです。
冬、特に年末にかけては、いわずもがな食品工場の繁忙期であり、どこでも人手不足に悩まされがちなことでしょう。
そんな多忙な時期に、感染率の高いノロウィルスが陽性だった場合には1週間以上の出勤停止措置を徹底することの出来る工場は、案外と多くはないのではないでしょうか。

これらのことを考えると、やはり製品の取り扱いといった衛生管理とともに、手洗いやトイレの清掃などといった日頃のサニテーション管理、そして万が一の場合にそれを拡散させないための緊急時対応の準備の重要さが際だってくることでしょう。

長くなってきてしまいました。
具体的な対策については、また次回にお話いたします。

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