食中毒の発生時、あるいは漏水や雨水の浸水などが生じた場合、どのように殺菌消毒を実施すればよろしいでしょうか。
その手順を、今回はお教え致します。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える防虫管理」を、毎日皆様にお教えしています。

緊急時の殺菌作業と殺菌剤について

前回、漏水や雨水の浸水や食中毒事故の発生時における殺菌消毒の作業の流れを、ざっくりとお教えしました。

今回はこれに続き、もう少し殺菌剤の基礎について学んでいくことにしましょう。
というのも、殺菌剤はただ何でもいいからやみくもに使えばいいというわけではありません。
対象や現場の状況によっては効果が低い、或いは全く期待出来ないこともありますし、また強い薬剤で施設を痛めてしまう、あるいは最悪、人体への影響を及ぼすことだって十分に考えられます。
まずは殺菌剤に対しての最低限の知識と、適切な使い方を知る必要があります。

そして。
最初にお話しておきますが、これらだけは注意するようにしてください。

殺菌作業時の注意
  • 薬剤の使用前にその取り扱い説明書をしっかり読んで、用法・用量を守ること
  • 防護服を着用し、また液剤がかかってはいけない箇所をしっかり養生した上で行うこと
  • 使用中は、場内の換気に気を付けること
  • 場内の事前清掃、およびすすぎ洗いをしっかり行ってから作業すること
  • 浄化槽への殺菌剤散布はしないこと(浄化微生物への影響)
  • 使用状況や場所、使用方法によって希釈倍率や使用量などに違いが生じることを知っておくこと

 

安全管理の面も踏まえ、最低限、これらのことは必ず守るようにしてください。

それと、補足を。
多くの殺菌剤は、一般的に室温18~20度前後での使用を想定して商品開発・製造されています。
よって特に今のような冬季や、使用環境上冷温管理をしている場所などでは、温度がそれに至らず、効果を発揮しきれない可能性も考えられます。
その場合は希釈倍率や浸漬時間などの調整が必要な場合もあります。

あ、それともう一点だけ。
余談になるかもしれませんが、多くの殺菌剤はあくまで「微生物」対象の薬剤です。
「殺虫剤」の替わりにはなりません。
というのも時折、「殺菌剤で虫が殺せる」、「殺菌剤は、殺虫剤が使用出来ないときの替わり」と勘違いしている方を(結構な頻度で)見かけます。
これ、寧ろ衛生管理を半ば囓っている人にこそ、意外と多い誤解です。
確かにチャタテムシ類やヒメマキムシ類などの食菌性の昆虫については、その生息源である微生物を殺すことで生息を減らすこともあるでしょう。
(私もこうした提案は致しますし、ここまでは十分に理解出来る話です)
また、微小な昆虫にエタノールが触れることで体内水分が揮発し、死ぬことも場合によってはあるかもしれません。
更には(洗剤などでよく言われますが)液剤が虫体に付着することで虫の呼吸を止め、窒息死することもないわけではありません。
ですが、これらはいずれも「場合によっては」という副次的な効果でしかなく、また殺虫剤の替わりというには余りに非効率であり効果が希薄です。
まあ、中には兼用の薬剤などもあるかもしれませんが、しかしあくまで殺菌剤は「微生物」を殺すためのものであり、虫を殺すのであれば専用の「殺虫剤」を選択し、使用するというのが、少なくとも食品工場の衛生管理における本来の原理原則、セオリーです。

おっと、話が逸れてしまいましたね。
それでは殺菌剤についてお話しいたします。

薬剤の特徴と選択

前回にもお話しましたが、最もポピュラーな殺菌剤は次のようなものです。
勿論、これ以外にも殺菌剤には山のように種類があるのですが、今回は比較的使いやすいものを選んでみました。

代表的な殺菌剤
  • 次亜塩素酸ナトリウム
  • エタノール
  • ベンザルコウニウム塩化物 など

 

これらの薬剤はおよそ、上から大体順に微生物への効果が高いと期待出来るものです。
ですが、その分、設備などの環境や人体への影響も大きなものとなっています。
尤も、既に皆さん現場でご使用なられているのばかりでしょうから、なじみもあることでしょう。
ここで改めてそれらについて、触れ直してください。
いずれの薬剤にしても、それらの特徴を踏まえて選択、使用することが重要です。

次亜塩素酸ナトリウム

薬剤の特徴
  • (高~)中水準
  • 比較的安価で、即効性に優れている
  • 有機物汚染状態には無効
  • 漂白・脱色作用がある
  • 金属や布への腐食性がある
  • 独特の臭気がある
  • 生体には不使用
  • 時間経過につれて効果が減少

 

一番なじみ深い殺菌剤の代表が、この次亜塩素酸ナトリウムではないでしょうか。
強アルカリ性の塩素系薬剤であり、工場以外でもご家庭のキッチンやお風呂の漂白剤、あるいは水道水の消毒など、幅広く使われています。
工場で使用する場合、そのほとんどは希釈して使用するものが多く、薬液塩素濃度6%程度が一般的かと思います。
注意点として、まず金属や布を腐食、変色させてしまうので、サビの要因になりかねないということ。
更に、アルカリ性ですから酸性物質との混合により有毒な塩素ガスを発生させます。
いわゆる、「混ぜるな危険」、というやつですね。
ですからマスクなどの着用なしで使用しないようにしてください。
それともう一つ。有機物が混入すると効果が著しく激減します。
よって、現場の事前洗浄にはくれぐれもご注意下さい。
また、このことから木材の材質の殺菌には不向きです。
(清拭のペーパーなどでも大幅に効力が落ちることが多いですので、使用資材にもご注意ください)

エタノール

薬剤の特徴
  • 中水準
  • 速乾性
  • 入手がたやすく、手頃に使いやすい
  • ゴム、合成樹脂等には変質する危険あり
  • やや臭気あり
  • 引火性あり
  • 生体に使用する場合、粘膜には不使用
  • 一部ウィルス、および芽胞には無効

 

これも毎日の使用頻度が高い殺菌剤でしょう。
いわゆるエチルアルコール。つまりアルコールの一種です。
よって通常は水分を含まない高純度の無水アルコールを水で薄めることで、殺菌剤とします。
揮発性、速乾性のため、水を使えないものの殺菌にも便利です。
ですがゴムや合成樹脂、発泡スチロールは変質、変色の危険があるので使用しないでください。
なお、インフルエンザウィルスなどのウィルスにも効果があるものの、ロタやノロなどを不活性化は出来ません。
よって、これを用いて「ノロウィルス対策」にはなりませんので、ご注意ください。
また引火性の薬剤ですので、室内への多量噴霧には安全上不向きです。それも含めて、大量に作り置きしたりはしないほうがいいでしょう。
(場合によっては消防署への届け出などが必要になります)

ベンザルコウニウム塩化物

薬剤の特徴
  • 低水準
  • 低臭気性
  • 金属腐食性なし
  • 手指など人体にも使用可
  • 一般の石鹸と同時に使えない
  • ウィルス、および芽胞には無効

 

陽イオン界面活性剤、いわゆる逆性石けんです。
石けんとありますが、いわゆる石けんと違って洗浄力は備えていません…って知ってますかね(笑)。
それどころか何せ陽イオン界面活性剤ですので、当然、陰イオン界面活性剤、つまり普通の石けんと一緒に使ってしまうと効果がなくなります。
(シャンプー後のリンスや洗濯用の柔軟仕上げ剤にも使われていることからも判りますね)
なお陽イオン界面活性剤であることから、そのタンパク質変性作用によってマイナス帯電の細菌細胞を破壊することで強い殺菌効果を果たします。
ということは、タンパク質変性作用が効かないもの、つまりウィルスには効果がない、ということです。
尤も、一般細菌への効果の高さや(それなりな)洗浄効果、更には金属の腐食性や臭気のなさ、引火性などもないことから、O157などの食中毒発生時において、室内への多量散布可能な殺菌消毒の主役としても非常に有用な薬剤であります。

それと、上記を踏まえて使用上の注意を。
ベンザルコウニウム塩化物を散布によって使用する場合、まずはよく場内を事前洗浄、およびすすぎ洗いを行ってください。
というのも先のようにベンザルコウニウム塩化物は、汚れがあると殺菌力が著しく低下するからです。
更に洗剤を用いて事前洗浄した場合、念を入れてのすすぎ洗いによる洗剤除去が不可欠です。
(石けんでの無効化と同じです)

殺菌剤の水準について

殺菌剤はそれぞれ、高・中・低水準とレベル分けされています。

高水準の殺菌剤は、芽胞も含めてほぼすべての微生物を死滅させることができる反面、高額で入手が難しく、安全性にも注意が必要です。
さらに材質の劣化や金属などへの腐食性もあるなど、使用条件がかなり限られています。

またここにあるような中水準の殺菌剤は、比較的手ごろで使いやすい一方、芽胞や一部ウィルスなどへの効果の面で劣るものとなります。
さらに低水準の殺菌剤は、安全性が高く手指などへも使用可能な一方、ウィルスなどへの効果の面で劣るものとなり、主に一般細菌の殺菌を目的とした汎用性の高いものとなります。

殺菌方法

これらの知識を踏まえて、殺菌作業を実施します。
主な殺菌作業は次の3段階です。

塩化ベンザルコニウムでの散布作業

予め、事前洗浄およびすすぎ洗いをした床・壁や棚に、ハンドボンベなどを用いて塩化ベンザルコニウムを広く散布します。
散布量の目安は、1㎡につき50~60ml。これを2~3回繰り返して作業します。
全体を大きく殺菌したり、或いは細かい隙間や立体的な奥部など、清拭清掃で届かない個所に効果的です。

エタノールでの清拭殺菌

次に、製造機器やラインなど食品が触れる個所、設備に対し、エタノールによって清拭殺菌します。
殺菌剤を清掃用具(モップやウエスなど)に染み込ませて、拭取りによって作業を行います。
床面については奥側から手前に、壁面は上から下に、いずれにおいても一定方向に拭取るのがポイントです。

次亜塩素酸ナトリウムでの漬け込み殺菌

最後は、汚水が触れた危険性のある調理器具や食器類を殺菌します。
これは次亜塩素酸ナトリウムに対象機材を漬け込み、殺菌剤を浸漬させることで殺菌します。
浸漬時間はおよそ10分程度でよろしいかと思いますが、薬剤などの取り扱い説明書に従うようにしてください。

まとめ

今回は、緊急時の殺菌作業についてお話を致しました。
これらは雨水や故障での漏水を対象にはしていますが、食中毒の発生時などにも応用出来る内容となっています。

ただし!
ノロウィルスでの嘔吐などの際にのみ、ご注意ください。
上にも書いたように、エタノールや塩化ベンザルコニウムはノロウィルスには失活効果がありません。
その場合は、次亜塩素酸ナトリウムを使用するのがよろしいでしょう。
これについてはまた近くお話することに致します。

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