実際に弊社が見てきた様々な事例に基づいて、実学として防虫対策の要訣を学ぶ「防虫対策ケーススタディ」。
今回は、真冬に食菌性の昆虫であるヒメマキムシ類が発生した件について、一緒に学んでいくことにしましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

今日のテーマ:真冬のドライ環境でヒメマキムシ類が発生!?(後編)

防虫対策ケーススタディ。
「工場の現場で起こりやすいこと」、「実際に起こったこと」を例題事例とし、「実際に実施し、効果があったこと、なかったこと」「現場に即したリアルな対処方法」を、ここではお教えしてきます。
今回は初回ということで、じっくりと細かにお話していきましょう。

というわけで、今回のテーマは、

「真冬のドライ環境でヒメマキムシ類が発生!?」
の後編です。
前編をお読みいただいていない方は、こちらから先にどうぞ。

では、改めて現状を整理してみます。

問題の状況
  • 洋菓子工場の箱詰め・仕分け室でヒメマキムシ類が発生
  • 問題エリアは、原則的に水を使用しないドライエリアである
  • 問題エリアは、冷蔵・冷凍施設から隔たれており、結露などの発生はみられていない
  • 問題エリアの床面や壁面に、目立ったカビなどの発生は確認されていない

 

ではこの原因を探っていきましょう。

原因究明調査とは

こういう場合、プロはどのようにするでしょうか。
問題の要因を調べるため、通常の定点のモニタリングポイントに加えて、臨時の生息調査トラップを増設します。
そしてその臨時トラップの捕獲状況を分析し、相関関係などを結びつけるなどしながら、問題が生じているポイントを限定的に絞り込んでいきます。
そしてそれらの情報に基づきながら、問題要因を究明するのです。
すると、問題がどこかに集中している、あるいはそこを中心にして問題が拡散している、などといったことが見えてくるはずです。

そしてもう一つ、ここでプロの知恵をお教えしましょう。
捕獲されたトラップの、各トラップ内での捕獲状況をチェックするのです。
虫が捕獲されている様子、集中的に捕獲されているポイント、向きなど。
つまり虫の捕獲がある一面に集中していたり、多くの昆虫の向きが内側に向かっている場合、問題のポイントも絞られてくることになります。
また逆に拡散的に捕獲されている場合にも、読み取れる情報があることが多いものです。

このような捕獲状況の場合、それらの情報で「アタリ」を付けることが可能になります。
上の図でいえば、右の方向に虫が集中的に捕獲されている場合、そちら側になんらかの不具合がある可能性が見えてきますね。

これらを踏まえて、情報を集約し、原因を探っていきます。
はっきり言って、原因究明調査は、常に、トライアンドエラーです
勿論、一発で究明できればそれに越したことはありませんし、プロとしての力量も高いように見えます。
しかし実際の現場は、そんなに甘くも単純でもありません。
多くの場合は、可能性を挙げながらこのような過去の事例をヒントに色々と探っていくというのが現実です。
(だからこそ、こうした「事例から学ぶ」という、ケーススタディが重要なのです)

要因は、台車に関係アリ!?

さあ、これらのことから、発生要因が次第に絞り込まれてきましたよ。
原因究明まであともう一歩。

現場には、箱詰めされた商品を移動するために多量の台車が置かれていました。
包装された商品を箱詰めし、内番重に入れて棚に移すためです。
内番重は隣の洗浄室で洗浄されて運ばれるため、清潔なものが使用されています。
ですが、多くの工場において台車は基本的に洗浄されません。
よって通常は使用されたまま、ほぼほぼそこに置かれます。
捕獲の多かったエリアには、台車が長いこと多量に置かれて保管されていました。

台車を裏返せば判りますが、基本的に台車は意外と凹凸が多い。
ここにカビが生えている場合が殊の外多かったりするものです。
それと、床面に接するホイール部。
今回の主要因はここでした。
これ、意外とどこの工場も多く見られることです。
ウチの工場の台車は綺麗だ、と自信を持って答えられますか?

実は直接的な発生箇所は、洗浄機上の排気ダクト内だった

更にもう一つ、発見がありました。
洗浄された番重は台車に乗せられてこの部屋に持ち運ばれます。
ということは、別のエリアに問題があるのではないか。
そこで調査エリアを別エリアにまで広げて拡大してみると、実は以前数ヶ月前に別の汚染作業区域である内番重洗浄室においてヒメマキムシ類が捕獲されていたのです。

洗浄機は温水を使います。
そしてその作業で発生する蒸気をダクトで排気します。
ダクト内は常に蒸気を取り込んでいるため、カビの温床になりやすい。
そう、ヒメマキムシ類はその中で発生していました。
しかし洗浄室は外部に面した、常温の汚染作業区域。
冬の到来で室温が下がり、ヒメマキムシ類の生息条件が整わなくなる。
結果、生息がぴたりと止んでしまった。
そして問題が箱詰め室に飛び火したのです。

当たり前ですが、台車は移動するためのもの。
この機能を介して様々な箇所に問題が拡散されるケースは、意外と多い。
俗に、「持ち込み」と呼ばれる現象です。
クモや多足類の虫(ゲジなど)、更にはゴキブリをはじめ、歩行性昆虫にはこうした「持ち込み」由来がまま見られるものです。
例えば、このような洗浄室での温水パイプ周辺に営巣したチャバネゴキブリなども、台車を介して別エリアへと拡散し、生息を広げる、などというケースも時折目にします。

要因の整理

つまり、今回の問題の要因はこういうことでした。

ヒメマキムシ類の発生要因
  1. 洗浄室の排気ダクト内でヒメマキムシ類が発生していた
  2. ぽろぽろと室内に落ちたものが、洗浄機周辺の汚水滞留水に生息拡散
  3. 更にその滞留水で台車ホイールにカビが発生
  4. 台車自体に生息拡散
  5. そのまま箱詰め室に持ち込まれる
  6. 箱詰め室内で生息が大きく拡散
  7. 長期的に保管されている台車に隠れた床面でヒメマキムシ類が徘徊

 

これ、チャタテムシ類にも言えることですが、外界から遮断されて外敵が存在せず、かつ温湿度などの環境が一定な室内ではこうした昆虫は増殖しやすいものです。
これが工場内において、一旦内部発生した虫がなかなか現象しない最大の理由です。

またこれら食菌性の昆虫は、室温およそ16度を切らないと内部発生が止まりません。
つまり暖房を付けっぱなしの部屋では、意外と冬でもこうした内部発生が続いたりします。

対策を考えよう

要因がわかれば、対策は自ずと立てやすくなります。
今回においては、このような対策が取られるようになりました。
ちなみに、こうした問題への対策を多面的かつ実用的に提案出来るかどうかは、衛生管理屋の腕の見せどころです。

対策提案(優先順位順に)
  1. 台車の洗浄による発生源除去
  2. 床面の清掃による生息除去
  3. 洗浄機上排気ダクト内のカビ除去清掃
  4. 洗浄機周辺の滞留水対策
  5. 問題箇所への薬剤による駆除施工
  6. 台車保管ルールの検討・変更
  7. 台車を移動しての、日々の作業後の床面及び台車を含めたアルコール散布
  8. 室内の温湿度コントロール
  9. サーキュレイターなどでの問題箇所の気流攪拌

 

生息源の元を叩く、というのは当然なのですが(→1)、しかし台車を洗浄する、というのは実際問題、皆さんお判りのように言うほど簡単ではありません。
ですが、ホイール部のみの次亜液漬け程度ならば、問題発生時にはそれなりに対応出来るのではないでしょうか。

更に、床面のモップ掛け。(→2)
これね、前も書いたかもしれませんが、私はこうした問題には、湿式のクイックルワイパーをお薦めしています。
これ、ほんとよく作られていて隅々まで小回りも効くし、コスパ最高。
アルコールが含まれているタイプはカビ除去にも役立つし、しかも付着した虫の確認も出来る上、そうした虫の除去にはポイと拭き取り部を捨てればいいだけ。
ちなみに手の届かない壁面の結露なんてのにも意外とこれ、いいですよ。

それと一番手っ取り早いのは、やはり殺虫剤の散布。(→5)
簡単にエアゾール剤をプシュっ、で構いません。
この手の微小な昆虫駆除は大概薬剤には弱いものですから、さっと散布するだけで問題解決する場合も多いです。
場内に薬剤を散布することに、抵抗というか何も知らないが故の不安を覚える方も少なくありませんが、しかし殺虫剤とは最低限の知識を付けて上手に付き合うことが重要です。

日々のアルコール散布。(→7)
これはヒメマキムシ類、チャタテムシ類対策には非っ常ー!に効果的です。
現場の担当者に、霧吹きを渡して、作業後にプシュっとエリア内を散布する。
何もしないでこれだけでヒメマキムシ類がいなくなったお客様を私は知っています。
あわせてクイックルワイパーをどうぞ。

それと温湿度コントロール。(→8)
一般的にヒメマキムシ類は、室温14度(これは常温だと真冬以外は厳しいかな…)、湿度60%以下で生息が大きく減少する、と言われています。
実際、その程度になるとこうした食菌性昆虫の問題は著しく減少します。
なので、これらが可能なら試してみる価値はあると思います。
何せ、上とはまた別に、これ一つでチャタテムシ類、ヒメマキムシ類とおさらば出来た工場、私は知っています。

それともう一案。
食菌性昆虫やダニ類などでお困りの方は、一度室内の気流攪拌対策をお試し下さい。
私はそうした部材の専門ではありませんからこれがいい、と言ったことは判りませんが、しかしホームセンターの安いサーキュレイター1台で問題が解決したお客様も少なくないです。
特にダニ対策などにも、これは有効です。

まとめ

第1回目のケーススタディ、ということで今回はヒメマキムシ類を取り扱ってみました。

なお、工場での防虫対策は、昆虫についての学術的な生態を知れば現場での対応が出来る、というと実際はそれほど甘いものではありません。
(だったら昆虫の生態学の博士は皆防虫管理のプロになれますが、実際はそんなこと全くありません。)
虫を知り、衛生管理を知り、工場を知り、幅広く知識を知り、こうした現実のケースを幾つも幾つも踏まえ、経験を重ねることで、ようやく様々な対応が可能になります。
事実、防虫管理業界に入った新人を育てるには、四の五の言わずにこうしたハードな現場経験を踏ませるのが何よりの近道だったりします。
はっきり言って、昆虫の細かい生態なんかよりもこっちの経験や知識のほうがずっと重要です。

このように、この「ケーススタディ」では様々な現実の事例を扱いながら、皆さんに生の知識をお伝えしたいと思っています。
今後もどうぞよろしくお願いします。

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