毎日のように告知されている食品の回収ニュース。
しかしその実状は意外と知られていないのではないでしょうか。
今日はそんな「製品回収(リコール)」について、少しお話させていただきます。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える防虫管理」を、毎日皆様にお教えしています。

相次ぐ食品の回収事例

ネットの広がりとともに、昨今メディアのみならずあちこちで食品事故が取り沙汰されるようになってきました。
その結果、良かれ悪しかれ(というか後者でしょうが)、自主回収の向きが非常に強まっているのが現実です。

私は商売柄、毎日欠かさず食品ニュースをチェックしていますが、回収報道がない日などハッキリ言って全くないといったかの状況で、日々どこかの企業が何らかの理由により回収業務を行っているような有様。

 

そういえば、こないだも「高島屋」が委託工場で製造した「のり」に縫い針が入っていたとして、回収告知が出されていましたよね。
私もこれについて、記事を書いています。

 

このように、回収報告は次から次へと毎日続出しているため、近年における件数の増加傾向は何も体感だけのものではないはずです。

事実、少しばかり古い情報ではありますが、「独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)」が出している統計結果を見つけましたので、ここに掲載しておきましょう。
このグラフを見れば、増加の様子は瞭然です。

 

15年ちょっと前までは年間でも100件強しかなかった回収件数が、このところ数年においては年1,000件前後にまで至っての高止まり。
なおこの傾向は、この平成26年度以降もほぼ変わらずの状況で今に至っています。

ちなみに、これまた若干古いデータではありますが、その内訳をば。

 

一昨年前の食品事故における回収理由の1/2以上が、賞味・消費期限の間違いやアレルギー表示欠落などに関した「不正表示」でした。

成程、確かに私も、毎日のように不正表示による回収告知を目にしている気がしますし、今でもそれはあまり変わっていないことでしょう。

またそれに次いでの理由として「品質不良」、そして「異物混入」なども回収の理由として高い率で挙げられています。
これまた若干の変動こそあれ、現状においても似たような割合であろうと推測します。

製品回収とは

そもそも「製品回収(リコール)」とはなんでしょうか。
実はこれ、法律で定められた明確な定義はありません。
しかし広義としては、「食品生活用製品による事故の発生及び拡大可能性を最小限にするための事業者による対応」のことを示します。
(経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック」より)

こうした食品の回収は、大きく二つに分けられます。
それは、
「食品関連法令に基づく回収」である「行政命令による回収」(回収命令)と、
「食品関連法令に基づかない回収」である「事業者による回収」(自主回収)
の二つです。

食品回収の区分
  • 食品関連法令に基づく回収:行政命令による回収(回収命令)
  • 食品関連法令に基づかない回収:事業者による回収(自主回収)

 

そして。
日々報じられている食品回収のうち、実はそのほとんどが後者、つまり事業者により自主的に行われている「自主回収」なのです。

回収命令とは

もう少し双方を詳しく見てみましょう。

食品関連法令に基づく回収、つまり「行政命令」による回収とは、食品衛生法などの食品関連法令に基づいて、行政が事業者に対して指示、命令を発して回収するもののことです。

実際には、食品衛生法の第6条(あるいは9条)を違反している場合です。

その場合、食品衛生法の所管は厚生労働省ですから、その指示の多くは厚生労働大臣から出され、自治体の保健所などが法執行の主体となります。
またその他、農林水産省や消費者庁なども関わることもあるでしょう。

さて、その食品衛生法第6条とはどんなものでしょうか。
以下、引用します。

〔不衛生な食品又は添加物の販売等の禁止〕

第6条  次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

一  腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。但し、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。

二  有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着し、又はこれらの疑いがあるもの。但し、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。

三  病原微生物により汚染され、又はその疑があり、人の健康を損なうおそれがあるもの。

四  不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。

 

…え、えーと、意訳しますね(笑)。

つまり、「健康被害を起こすような、あかん食品を製造・販売しちゃいかんよ、したら回収させるよ」ということです。

というか重要なのは寧ろ、逆に言うなら、実は食品衛生法ではこのくらいしか定められていないってことです。
例えば「え、異物混入?あ即回収ね。」なんてことは政府は一頃も言っていない。

では、どうしてこれ程までに、毎日のように回収が報じられているのでしょうか。

自主回収とは

次に、食品関連法令に基づかない回収、つまり事業者による「自主回収」を見てみます。

実は自主回収に、標準的な判断基準が存在しません
よって各事業者、つまりは食品メイカー個々がその自社判断によって、自主的に行っているものなのです。

要するに、先の年間1,000件のうちのほとんど全てが、行政に命じられてやっているわけでもなく、企業が自主的に回収をしているというのがその実態なわけです。

それでは実際は、どのように企業がその判断をしているのでしょうか。
その多くは、「社会への影響」と「事故の拡散性」という二つの視点から、次のことを鑑みて判断されています。

食品企業の自主回収判断基準
  1. 健康危害
  2. 法令への抵触性
  3. 発生件数(拡散性)
  4. 社会的影響

 

1の「健康危害」や、2の「法令への抵触性」については、まあ理解が容易くできるところでしょう。
健康危害、例えば食中毒やアレルゲンなどの深刻な食品安全に関わる問題であれば、それは確かに回収判断となることでしょう。

また2のように、ダイレクトな健康被害にはつながらないながらも、農薬の残留基準値や食品添加物が基準値を超えていた場合、あるいは消費期限、賞味期限のミスなどといった、法令違反にはならずともその抵触に関わる事柄の場合は、やはり回収判断対象になったとしても不思議ではない気がします。

更には、「健康被害」や「法令への抵触性」がないとしても、問題が拡散してしまっている可能性のある場合にも、企業の責任として実施することに頷けます。
例えばバラバラになった昆虫の異物混入事故が生じた、などといったときには、その虫体が同ロットの複数製品中に入っていてもおかしくありません。

この場合、事故の「拡散性」を考慮し、回収対象となることも十分わかることです。
逆に言えば、昆虫の異物混入が残さずまるっと1匹入っていて、しかもそれが突発的な事故であると究明されれば、ロット回収されなくても問題はないでしょう。
(数年前のシーチキン缶詰へのゴキブリ混入がそれです。あのとき自主回収を選択しなかった企業判断は十分に理にかなったものであり、決して何の咎めを受ける筋合いはないのです。)

しかし4つめの「社会的影響」。
これは、目に見えるかたちや数値がない分だけ、かなり微妙なところじゃないでしょうか。

企業側からすれば、「ブランドイメージの維持を目的に」、といったところかもしれませんが、しかしこの要素が実は回収件数を増している大きな要因となっていることは容易に想像できること。
やもすれば、世間の「けしからん」を恐れての「ごめんなさい」な反省回収、といったことになりかねない。
実際、多くの食品メイカーはこの理由によって苦汁の判断で、「万が一のために」「万全を期すために」と口で言いながら、日々自主回収を行っているのではないでしょうか。

自主回収の負担とは

自主回収が生じた場合、企業はロット分を市場から自費で回収することになります。
それにはいったい、いくらくらいの回収費用がかかるのでしょうか。

私の専門は衛生管理屋であって食品メイカーの仕事ではないので、詳しいところはよく知りません。
ですが、色々と聞いたところ、その製造数や企業規模によって違ってくるものの、目安としては数十万円から数百万円の費用が発生する、ということのようです。
更には大手企業の大きな回収騒動の場合は、数千万から億単位、なんて説も…。

いずれにしたって、これらはいずれも大きな企業負担に他なりません。
ただでさえ中小企業がひしめきあい、薄利多売が常識化している食品業界です。
こうしたコストが企業の経営を逼迫することは想像に難しくないことでしょう。

さらに言えば、企業は回収によって販売の機会を失います。
結果、本来の販売利益を失って、さらに先のような事故対応の費用を負わなければいけません。
自主回収は、企業にとって決して安いものじゃないのです。
ただの「ごめんなさい」表示で行えばいいものでは、全くありません。

まとめ

このように、自主回収は決してたやすくすべきだと言うものではありません。
私自身も、自主回収を余技なくされたお客様を何度か見てきました。
そのときの理由も、これで自主回収しなくてはいけないのか、と正直、疑問を抱いたものです。

だって、ちょっと考えてみてください。
原料資材を大量に使用し、資源も使って製造し、市場に流した食品を、何の問題もない可能性の高いものなのに、「万全を期す」だのといった言葉の裏での「けしからん」対策のために、大金を投じて回収し、勿論回収品は全部残らず廃棄です。
これこそ無駄の極地、フードロスの真逆の行為以外の何者でもないでしょう。

それに何より、本来そんな大金は企業のためにもまた消費者のためにも、事故の原因究明と再発防止対策にこそ投資すべきじゃないですか。
にも関わらず、実際にはそのコストの多くが無駄な回収にあてられてしまっているのが実状だというのは、余りにバカらしい本末転倒な話でしかありません。

勿論こんなことは製造メイカー自身だって望んでもいませんし、一部を除いた多くの消費者だってそれは同じことでしょう。
再度になりますが、この間に書いたことを以下改めて引用させていただき、今日はこの辺にさせていただきます。

「本来、企業による(法令に従ってではなく)自主的な「自主回収」は事故を拡大させないための対応策であり、これをもって企業の反省を社会に示し表すような行動ではありません。(略)
ネットなどの「けしからん」予防策として…といって言葉が過ぎるのであれば、信用維持コストとして、余り今後に対し意味のない「自主回収」が毎日多発している風潮に、私はいささかながらの疑問を抱いています。(略)
言うまでもなく食の安全安心は重要ですし、それをわずかながらでも支えるのが私の勤めだとも十分思っています。
ですが、それと同時に製造業全体の、そして消費者としてのメリットも当然ながら考えて、こうした風潮が色濃くなっていくことにも、違和感を覚えてやみません。」

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