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本日の時事食品ニュース
  • 高島屋、のり7千セット超を自主回収 縫い針混入の情報(2019年1月19日)

 

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高島屋、のりに縫い針混入、7千セット超を自主回収

先日、高島屋で販売した海苔の中に、縫い針が入っていたという異物混入事故が報道されていました。

Yahoo!ニュース
 
高島屋がノリ自主回収 縫い針混入と申し出(共同通信) - Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190119-00000134-kyodonews-soci
高島屋は19日、贈答用に販売した「〈高島屋〉佐賀県産のり『極上』詰合せ」に縫い針が - Yahoo!ニュース(共同通信)

このことから、高島屋は製造委託先工場に原因究明を求めたものの、原因がわからないため自主回収を行う、といった話のようです。

当社にて販売いたしました「<髙島屋>佐賀県産のり『極上』詰合せ」におきまして、お客様から「異物(針)が混入していた」とのお申し出がございましたので、当該商品を回収させて頂きます。(略)

さて。
先の通り報道には「原因究明をしたがわからなかった」とありますが、普通に考えればそりゃそうだろうと、私も思います。
だって、海苔の製造工程上で縫い針が混入するような「原因が見あたらない」からです。

私は関係者でも何でもありませんから、現場の状況は推察するしかありません。
しかし普通に考えれば、海苔の工程において縫い針などが混入するようなことはありえません。
「ありえない何かが起きたから事故は発生するのだ」
という話もそりゃ判らなくもないのですが、それにしたって何かしら要因があるはずです。

丁度いい機会ですので、これをモデルケースに改めて「異物混入」というものを一つ考えてみましょう。

異物混入の分類

少しばかり専門的ではありますが、最初に異物混入における基礎的な知識についてお話したいと思います。
(この項目だけ飛ばしていただいても結構です)

さて、工場での異物混入を、その要因から捉えてみます。
すると、主に次のようにわけられることでしょう。

工場での異物混入の要因的分類
  1. 工場外部からの「持ち込み」(侵入)
      →異物混入リスクを「入れてしまった」
    ・資材・原料由来 …原材料・包材の付着物など
    ・ソフト(管理運用)由来 …毛髪、場内持ち込み品など
    ・ハード(設備構造)由来 …外部環境汚染(外部侵入昆虫、埃など)
  2. 工場内部での「発生」
      →異物混入リスクを「生じさせてしまった」
    ・ソフト(管理運用)由来 …毛髪、清掃不足の汚染、内部発生昆虫など
    ・ハード(設備構造)由来 …施設、機器の不具合、劣化・破損物など
  3. 工場内部(製造工程)での「除去不足」
      →異物混入リスクを「取り除けなかった」
    ・ソフト(管理運用)由来 …検品不足、確認ミスなど
    ・ハード(設備構造)由来 …ろ過装置、金属探知機の不具合など

 

大きく言えば、製造工程上における異物混入とは、

①「持ち込み」、「発生」、「除去不足」の3つが大きな要因であり、
②その各々が「ヒト=ソフト(管理運用)由来」、「モノ=ハード(設備構造)由来」

に分けられます。

逆に言うなら、そもそも異物混入対策の三原則とは

「持ち込まない」、「作らない(生じさせない)」、「取り除く」

の3つです。

異物混入対策の三原則
  1. 持ち込まない
    →工場内に、工場外部から異物混入リスクを「持ち込まない」(侵入させない)
  2. 作らない(生じさせない)
    →工場内で、異物混入リスクを「作らない」(生じさせない)
  3. 取り除く
    →製造中に生じた異物混入リスクを「取り除く」

 

要するにこれが守れなかったから、工場内での異物混入事故が生じてしまう。
それが先の①②である、といったわけです。

では今回はどうだったのでしょうか。

海苔の工程上から異物混入の可能性を考える

これらの基礎的な異物混入の知識を踏まえて、海苔を製造する工程から、今回のことを考えてみましょう。
海苔は、一般的にはこのような工程で製造されているところが多いと思います。

入荷→洗浄→裁断・ろ過→抄製・乾燥・焼き→検品(金属探知)→包装・梱包→出荷

では、その工程を追ってみましょう。

原材料由来はありえない

まず考えるべきは、最初の1つめ、工場外部からの「持ち込み」です。
これで考えられるのは、原材料由来の混入です。

これに対し、「海で一緒に釣り針を一緒に原材料として入れてしまったのでは」などという意見をネットで見ましたが、しかし洗浄、裁断、ろ過といった前処理の段階でほぼほぼミンチにされ、砂や石などをはじめ、そうしたものは完全に除去されているのが常識です。
つまり、原材料由来の「持ち込まない」がここで機能しているはずです。
ましてや縫い針などがこれを通過することは、一般的には余り考えられません。

また海からの由来であればさびが生じている可能性が高いのではないでしょうか。
その原因究明調査で不明とされているということは、原材料由来の線は限りなく希薄だ、ということになるでしょう。

工場に持ち込まれた?

原材料での「持ち込み」がないとすれば、次に考えられるのは作業員による場内への「持ち込み」、です。

縫い針をどのように持ち込んだのかは判りませんが、確かに従事者が持ち込もうと思えば縫い針だって持ち込めなくはないかもしれません。
ですが、当たり前な話として定数管理が出来ない縫い針などは工場の持ち込み制限品の一つであり、入場前室などで書きだされることすらない、言ってしまえば「一般常識レベルでの持ち込み禁止物」です。

ただし、次の二つのことは一応、低いながらも可能性としては考えられることかもしれません。

・何かを補修するために、たまたま持ち込んで、それが混入した
・入場者の誰かが意図的に持ち込んで、混入させた

まあほぼないとは思いたいところですが、いずれにせよ、究明調査でこれらの問題が浮かび上がってこない以上、それ以上を勝手に予測することは出来ません。

工場内の製造工程では使われない

「ヒト=ソフト(管理運用)」上の要因でないとすれば、次に疑うのは、「モノ=ハード(設備構造)」上の要因です。
使用機器に付随するものだった、ということがこの場合は考えられるでしょうが、では縫い針は海苔の製造工程で使うものでしょうか。
まあ、ないでしょうね。
すると機材由来という可能性も外されます。
(先のように、唯一何かの補修用具として臨時的に持ち込まれたケースもないわけではないでしょうが、さすがに縫い針を持ち込むケースって…ありますかね?)

あと仮補修で用いていたものが放置され、経年劣化で落下などして異物混入要因となる、といったこともありますが(ガムテープ片やひもなど)、さすがにこれもムリがあります。

除去出来なかったのか

海苔の製造工程上、混入異物を除去する重要な工程は、2箇所。
すなわち、前処理での「ろ過」と後処理後の「検品」です。

特に縫い針程度のものであれば、金属探知機で感知出来るはずです。
金属探知レベルを勝手に指定外に調整していた、或いはメンテナンス不足で感度が落ちていた、などというのであれば、これまた原因究明調査であげられているはずです。

また、確かに金属探知機は微細で長細い金属の向き次第では感知しないこともあります。
例えばハリガネなどが、ごくたまにそうしたケースで混入されることもないわけではありません。
しかし海苔の場合、結束して束にし、金属探知機を通します。
4センチの縫い針がそれで引っかからないことは、ほとんどありえないのではないでしょうか。

更に言うなら、海苔の場合、製品の品質上、製品の目視確認がかなり強化されています。
ここで4センチの縫い針が見落とされた、というのはさすがにないのではないかと思います。

(排除品を戻してしまった人為ミス、ということも場合によっては考えられますが…まあ、普通にないでしょうね)

自主回収という対応策を考える

こう考えると、工場内での異物混入要因がほとんど可能性として低くなります。
私はこれを、だからといって消費者サイドでの混入だ(ましてや意図的な混入事故だ)、だのと言及したいわけではありません。
少なくとも以上は、工場内での混入要因を考えた場合一般的には原因究明が難しいのでないか、というだけの話です。

寧ろ、言いたいのはこちらです。
今回の事件は、原因不明、しかも恐らくは破損の少ない4センチの縫い針ですから、事故の拡散性も低い。
にも関わらず、ロット全品自主回収という選択を取っています。
この手の回収ニュースを見る都度に思うことですが、これらは果たして企業側の自主回収案件なのでしょうか。

本来、企業による(法令に従ってではなく)自主的な「自主回収」は事故を拡大させないための対応策であり、これをもって企業の反省を社会に示し表すような行動ではありません。
そもそもロット全品の回収は、企業経営におけるコスト負担です。
ただじゃあないんです。
にも関わらず、ネットなどの「けしからん」予防策として…といって言葉が過ぎるのであれば、信用維持コストとして、余り今後に対し意味のない「自主回収」が毎日多発している風潮に、私はいささかながらの疑問を抱いています。
しかもその一方で、製造業は日々、人件費の高まりに逼迫されているのです。
(今回は高島屋さんなのかもしれませんが)
こうした余り意味のない回収コストを払う前に、すべき投資があるのではないか。

言うまでもなく食の安全安心は重要ですし、それをわずかながらでも支えるのが私の勤めだとも十分思っています。
ですが、それと同時に製造業全体の、そして消費者としてのメリットも当然ながら考えて、こうした風潮が色濃くなっていくことにも、違和感を覚えてやみません。

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