年末年始のお休みが長い今年は、帰省以外にも年越し旅行などに出かけた方もおられたことでしょう。
そうした中での食の楽しみの一つが、「駅弁」ですよね。
今日はその「駅弁」について、食品衛生のプロの視点から少しばかりお話しようかと思います。

改めて、あけましておめでとうございます。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
今年も、ここだけしか聞くことの出来ない「プロが本気で教える衛生管理」をお教えいたします。

駅弁メイカーの苦労

昨年の終わりに、「おせち」の話をさせていただきました。

しかし実は、「おせち」と同様に厳しい微生物管理に迫られているのが、実は「駅弁」メイカーだったりします。

「駅弁」という製品は、温度との戦いです。
このような真冬で気温の低い年末年始なら、まだ問題は少ないでしょう。
しかし問題は、ゴールデンウィーク、そして何より夏休みです。
工場からトラックで運ばれる物流段階でこそ温度管理下にあるものの、販売店舗に運ぶまでは意外と難しく常温保存で、やもすると真夏の猛暑下に晒されることも正直、珍しくありません。
しかも消費者は、それを持って電車や新幹線に並び、またすぐに食べられるかどうかも判らない。
そんな厳しい条件下で、腐敗や食中毒から製品、駅弁を守らなければいけないのですから大変です。
それを過酷な競争の中、クリア出来る製品を彼等は開発、製造しているのです。

このようなお弁当の工場は、大概は物流が行き届きやすい拠点都市内に作られることが多いことでしょう。
何故なら弁当は、取引上、製造時間から販売までの物流面の時間制限がかなり厳しく規制されているからです。
必然、東京圏内、少なくとも関東近郊に工場を構えているところが多いかと思います。
結果的に、彼等は(地方郊外の食品工場に比べ)都市部の高い地価を収益分でペイしないといけない、というある種の宿命的ハンデを一方で抱えることになります。

更に、そもそも弁当のような日配品は、時間勝負にして、薄利多売です。
いわば早く、多く売ってなんぼの世界。
にも関わらず、都市部の人件費は高まる一方。
実際、ここ数年、都市部の食品工場は人手不足で従事者が集まらず、どこも困っているというのが実情です。

となると、地価の高い場所に工場を造らざるを得ないという先のハンデに加え、次に人件費、という問題に必ずぶつかります。
これは利益を求める企業という性質上、どうしようもない現実です。
これ以上は敢えて語りませんが、しかしそんな環境で、衛生教育を徹底しろというのは正直、ハタから言うほど簡単なことではありません。
しかも、日配で薄利多売、多量生産、で扱う品目は多いということは、イコール現場は製造に追われがちで職務も相当に厳しい、ということでもあります。
一般論的にですが、現場が製造だけに追われがちだと、どうしてもそれ以外の業務にあてられる力量が難しくなりがちなのが、この業界の現実です。
にも関わらず、私の知っている駅弁メイカーさんは、本当に衛生管理や教育に熱心です。
商品開発の企業競争だけでなく、そんな難題と人知れず日々戦っているのが、「駅弁」メイカーさんなのです。

さあ、このように人件費は高い、製造時間と内容の充実度には厳しい。
賞味期限も厳しければ、ハケられる販売数も限られる。
じゃあその分、多量に販売すればいいのでは、と思うかもしれませんが、当たり前ですが世の中そんな都合のいい話にはなりません。
となると駅弁の単価設定が少々高めなのは、当然の結果だと私個人は思います。
世の中、相応以下に安いものはないのです。

冷却が大切なのは現代食品製造の常識中の常識

さて、ネット上で食品関連のニュースをいつも通り巡っていると、こんな記事をふと目にしました。

先のような中小が多い委託駅弁メイカーに比べれば、ここに挙げられているような屈指大手の直売メイカーは少々ながらもゆとりがあるかもしれません。
よって環境面他において、少しながら(いや実際はかなりの)恩恵のメリットが生じていることでしょう。
しかし基本的な加工工程に、何の変わりはありません。

基本的に弁当総菜の工場というのは、規模に関わらず、多くの作業が生じる特性があります。
炊く、切る、煮る、焼く、炒める、冷やす…。
多くの品目を扱い、また多くの工程がそこにあるほど、当然作業はそれだけ多くなり、それに伴い工場の場内動線は複雑になり、そして問題の要因も複合化し、生じる問題の数や難易度も上がるものです。
その結果、駅弁工場は(弁当総菜工場は)、具体的には多かれ少なかれ必ずや下のような問題を抱えるのが実状となります。

弁当工場の作業上の特徴
  1. 「納米」、「炊飯」
    →陰圧や、穀粉だまりによる昆虫発生の問題
  2. 「解凍」、或いは「総菜」の「下処理」
    →汚水やカビの問題
  3. 「加熱調理」と「冷却」
    →陰圧や、汚水滞留・結露によるカビの問題
  4. 「盛り付け・包装」
    →異物混入
  5. 「搬出・搬入」
    →外部からの汚染流入

 

また、先の記事について書かれていることですが。
古い話はよく知りませんが、駅弁が冷えている、というのはその通りです。
確かに今の駅弁販売店は、冷蔵で保管し、販売しているところがほとんどでしょう。
そもそもそこで調理しない限り、保温販売なんてリスクしか考えられません。

ただし、(この記事を否定・反論するつもりでは全然ないのですが)別に「駅弁」だけが冷却に比重を置いているわけではありません。
というよりも、多くの食品工場の微生物管理において、「加熱」に次いで「冷却」こそが実は命なのです。

尤もそんなことは、食品製造に携わる多くの人なら誰もがご存じのことでしょう。
加熱調理からの、急速冷却工程。
加熱後における60度台から20度台への温度帯を、いかに迅速に行うか。
これは、食品製造における微生物管理の要中の要です。
何故ならこの温度帯の滞在時間が長ければ長いほど、微生物の繁殖リスクが大きく増加するからです。
(ここをHACCPにおけるいわゆるCCP=重要管理点、としている工場も多いことでしょう)

そのため、現代の食品製造技術は、この冷却を如何にスピーディにムラなく、かつ品質を維持したまま行うか、という研究を日々進めています。
ましてや、ここに書かれているような「真空冷却機」や「差圧冷却機」、あるいはブラストチラーなどはどこの工場でも見られるごくありきたりの現代的な冷却方法であって、今や珍しいものでは全くありません。
(ただしその微妙な調整は各社のノウハウだったりしますが)

ちなみに。
ここで言うご飯の場合、「駅弁」に限らずどの業態においても、35度から25度を如何に迅速に乗り越えるか、が勝負どころとなります。
何故なら、その温度帯での微生物の増殖が最大にして致命的な問題となるからです。
25度までの山場を越えれば、急激に微生物リスクが軽減されます。
主食として多量に使う白米だからこそ、ここがキモになるわけです。
これは言うまでもない、食品メイカーの常識です。

工夫と進化の駅弁文化

少々お断りをしておきましょう。
先程、単価が高くて当たり前、といったような、場合によっては誤解すら生じかねない物言いをしてしまいました。
しかし、これには少し説明が必要です。

その意味は、駅弁メイカーが惰性の中で利益のために単価を高めている、という話では断じてありません。
それどころか、その生存競争は激しいのが現実であり、ましてや既得権益のようなものに守られているわけですら全くありません。
私はこのような職業柄、様々な食品メイカーの方々と密にすることが多いですが、その時に耳にするのは苦労話以外の何者でもない、というのが実状です。

これって少し考えれば判ることですが、貴方は電車などで旅行をするとき、「駅弁」だけがそのおともの選択肢ですか?
そうではないですよね。
このように、事実こうした駅弁の競争相手は、昨今いたるところに増えています。
一昔前なら、電車で遠出するなら「駅弁」、で済んだかもしれません。
しかし現代は、並み居る各種外食産業から各コンビニ、ファーストフードをはじめ、ライバルは増える一方。
更に、インターネットで調べれば、ちょっと駅前、エキナカの美味しい店も見つかることでしょう。
そんな中で生き残りをかけているのが、実は駅弁産業なのです。

と同時に、その一方で。
添加物や、或いは先の冷却をはじめとした食品加工技術も日進月歩です。
また競争の中で各地の食文化を活かした商品開発も進んでますし、実際、地方の先鋭食品メイカーさんが地元名産の製造ノウハウを活かしてアンテナショップ或いはベンチャー的に駅弁にチャレンジする、なんて面白い試みが見られたりするのも、この業界ならではです。
(私自身、そうしたお客様の衛生サポートに関わったことが何度もございます)
それもあって私自身、こんなに事情を知っている身ですら(いやだからこそかな)、駅弁をチェックするのは、旅行や遠出をする際の楽しみの一つとしていたりもします。

まとめ

少々ぶっちゃけ過ぎてしまいましたが、駅弁業界の厳しいリアリティは伝わったかと思います。
そうした中で製品の品質を維持しながら、日々の商品開発を進めている駅弁メイカーさんに私は敬意を抱いています。
どうぞ、日本各地の豊かな食文化を駅弁として楽しんでいただければと思います。

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