皆様、こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。

年末のご挨拶ということで、今回は、食品衛生のプロならではのお話を挨拶替わりにさせていただこうかと思います。

なお、普段ここに来る方々は恐らく食品関係企業の方々が多いとは思いますが、今回は一般の方々を対象に書かせていただきます。
食品メイカーさんの品管さん辺りには常識レベルなお話かもしれませんが、どうぞご了承下さい。

食品衛生のプロに聞く、正しいおせちの食べ方

お正月といったら、「おせち」料理。
これを見ている人の中にも、このお正月に皆と一緒に「おせち」を食べる、という人も多いことかと思います。

「おせち」は作り置きが基本であり、大晦日から三が日を通して食べられることを考えられて作られた料理です。
この目的は、正月に家事をしなくてすむよう、或いは、神様に対して火を極力正月に使わないようにといった風習的な意味もあるようです。
いずれにせよ「日持ちがいいこと」がその基本敵な製品コンセプトであり、そのため生ものを避けて、火を通す、或いは干す、酢漬けにする、塩味を濃いめにする、といった調理法を行うものが多いのがその特徴です。
それによって、微生物の影響を極力与えないようにさせ、腐敗、食中毒を避けるのです。

ですが、(「おせち」のみに関わらず)近年、味が濃いもの、酢の強いものなどは消費者の好みや健康上の理由などから、避けられることが多くなっています。
ということは、我々の古くからの食の知恵である、こうした保存が効きづらくなっている、ということでもあります。

食品メイカー様も、最も恐ろしい食中毒を避けるため、賞味期限を厳しく設定する企業様が多くなっており、その結果、賞味期限が元旦だけ(1日しか食べられない)、などといったおせちを出すところも少なからずあるようです。
私からすれば、そういう製造方法をした製品なのだから当然そうならざるを得ないだろう、としか思わないのですが、なかなか消費者の理解を得れないことも多いのではないでしょうか。
(一流フレンチシェフの作ったおせちが1日しか持たないことに怒られてもねえ…笑)

おっと、いけない!
つい油断すると、食品関係企業サイドから見るクセがついてしまっているようです。(汗)
早いとこ、本題に入るとしましょう。

そもそも食品保存とは?

腐敗や食中毒の要因が微生物によるものである以上、食品の保存とは食品内の微生物の生育を押さえる、ということに他なりません。
微生物の生育抑制には、以下のような、幾つかの条件が必要です。

微生物の生育を抑えるためには
  • 水(自由水を減らす)
    →食品内の水分を少なくさせる(乾燥させる)
    →塩分や糖を多くさせ、水分活性を低くさせる(水分活性)
  • 温度
    →加熱調理することで、食品内の微生物量を減らす
    →冷蔵保存することで、微生物の活動を抑える
  • pH
    →食品のpHを調整させることで、微生物の生育しづらい環境にする
  • 保存料(添加物)
  • その他(圧力など)

 

つまり、乾燥したり塩漬けなどをすることで食品の「水分(自由水)」を減らす、(塩や糖を多用することで水分活性を低め、食品内の自由水を減らすのも乾燥と同じ目的です)
或いは、酢漬けなどでpHを調整する、
加熱により微生物を死滅させる、或いは低温冷蔵により微生物の活動をしづらくさせる、
更には静菌剤などの添加物を使う、など。
こうしたことによって、食品内での微生物の活動を抑制させることで、腐敗、或いは微生物の増殖を抑え、食中毒をさせなくする。
「おせち」のみならず、ほぼ全ての保存食は、これらのいずれか、あるいはその組み合わせに基づいて製造されます。
なお、ウェルシュ菌をはじめとして「真空」環境下でも活動可能な食中毒菌は少なくありません。
よって真空パック化は微生物影響を少なくする手段の一つ、程度だとご理解ください。

じゃあ上のことを徹底的にすれば日持ちがよくなるではないか、と言うのは簡単ですが、しかしこのことは全て食品の美味しさとも強く関わってきます。
上にも触れたように、味が濃いもの(→水分活性)、酢の強いもの(→ph)などは消費者の好みや健康上の理由などから、避けられることが多くなっています。
またパサパサになるまで焦げ付き加熱されたり、カチカチの冷蔵品を食べるのも嫌がられることでしょうし、
人によっては、何度も何度も冷凍保存を繰り返しているもの、添加物を練り固められているものだって抵抗があるのではないですか?

にも関わらず、
暖房のよく効いた現代の家庭の室内に置いて、冷蔵庫からの行ったり来たりの繰り返しで正月三が日を持たせるよう、商品開発される、
そうした本来の食品保存の無理を、実は高い添加物の技術によって安全を支えているのが「おせち」なのです。
いかに「おせち」という商品が、高い食品技術と困難さの上に成立しているか、もう少し消費者の方々は理解する必要があるかと私は思います。

おせちという製品を考えてみる

一般的に、世間に商品として販売されているおせちは2種に分けられます。

おせち(販売品)
  • 冷蔵製品(生おせち)
    →工場で12月下旬に製造され、冷蔵保存され、販売される
    賞味期限:1~2日
  • 冷凍製品(冷凍おせち)
    →工場で夏季頃から製造され、冷凍保存され、販売される
    賞味期限:1~2ヶ月、ただし解凍後は1~2日

 

多くのおせち工場は、8月を越えるとそれまでの静けさが嘘のように慌ただしくなります。
おせちの開発、製造がその頃から本格的に始まるからです。
パートさんを倍増させ、ラインを増やす。
この頃作られたものは、冷凍保存され、物流・販売ルートにのせられます。

と同時に、今度は年末に向けて12月のパートさんの募集も始まります。
こちらは、「生おせち」の製造要員です。
多くの場合、それらのメニュー自体も変わってきます。保存状態が違うからです。

さて。
こうして作られた「おせち」は、商品企画段階、あるいは製造時のサンプリングでシュミレーションのための保存試験が行われます。
(「おせち」だけに限らずですが)
そしてこの結果が食料製品の設定賞味期限の数値的根拠になります。
要するに、お正月にそれがどのくらい日持ちするのかを、微生物検査するというわけです。

少しばかり専門性が高まりますが、
ここで「おせち」がどのように作られ、消費者の方が食べるのかを、考えてみましょう。

例えば「生おせち」の場合、12月30日に作られて、12月31日に販売されたものを消費者が購入し、その大晦日の夜から食べるものと考えます。
丁度上の図のような流れになるわけですね。

その場合、食中毒に関わる微生物の活動は、上の図の赤矢印のようになります。
つまり、

①工場の製造段階で加熱され一旦殺菌された製品は、
②物流段階では冷蔵保存により穏やかな状況を維持しているわけですが、
③しかし常温に戻され、食べ始める段階からまた活動が再開する、

といった状態です。
その結果、1月3日に食べる段階となっては、腐敗、あるいは最悪の場合には食中毒が生じることになります。

で、これを事前に防ぐために、それ以前に賞味期限を設定するわけです。
賞味期限の設定方法は、腐敗、あるいは食中毒菌の活動が認めらないまでの段階とするわけですから、それまでを事前に、各条件の保存設定をしながら段階的に微生物検査していきます。
一般的にこの検査を「保存試験」といいます。

この場合、検査方法や温度設定、その他細かい検査項目はケースバイケースでしょうが、例えば、↓こんな感じになるでしょうか。
(注意:勝手に私が想定した検査条件ですので、全てがこうというわけではありません)

腐敗、食中毒が起きない安全レベルとして、「一般生菌10の5乗、大腸菌群・黄色ブドウ球菌陰性」までを許容値とすることにします。
…って難しいですよね(汗)。
つまり検査結果が、上のレベル内なら問題なし、しかしこれを越えたらアウト、といった具合です。
そして、やや厳しめの温度条件を想定して、各段階的に微生物検査をそれぞれ実施するのです。

上の場合、例えば次のような検査内容となるでしょう。

生おせちの賞味期限シュミレーション検査例
  1. 初発検査(一般生菌、大腸菌群、黄色ブドウ球菌対象)
    :冷蔵保存(10度以下24時間保存)→製造から物流・販売状況を想定
    :その後25度4時間保存 →消費者が購入後、自宅にて初回喫食を想定
  2. 1日後検査(同対象)
    :10度以下20時間保存、その後25度4時間保存 →消費者が冷蔵庫で保存、3食喫食を想定
  3. 2日後検査(同対象)
    :2同様保存、同状況想定
  4. 3日後検査(同対象)
    :2同様保存、同状況想定
  5. 4日後検査(同対象)
    :2同様保存、同状況想定

 

これらの結果、1~3までは問題がなかったのに、4で設定した基準値を逸脱した場合、この製品は3日後には腐敗、ないしは食中毒の危険性が見えるわけですから、それ以前までが賞味期限となります。

このように検査を行って、賞味期限を厳しく設定され、やっと商品として世にだされるのが、「おせち」です。
言ってみれば「おせち」はこのくらい厳しい検査をクリアして作られているのです。
(「おせち」だけでは勿論ありません。全ての食品がこのように賞味期限を設定されているのです)

また、逆に言うなら、ここで規定している賞味期限というのは、上記の条件下のみ、ということです。
つまり、消費者がおせちを喫食する際に「25度以上の部屋で4時間以上おせちを放置している」状況である場合は、「賞味期限」として規定している条件外ですから、少なくともその根拠からは外れることになります。
尤もメイカーもそれなりのバッファを設けて賞味期限は設定されていますが、少なくとも、
どんな条件下でも賞味期限内であれば安全性が保たれている、というものではありません。

現代の食料製品を支える、添加物という高い技術

このように厳しく賞味期限を設定されている「おせち」は、どのように作られているでしょうか。

本当の話ですが、添加物の働きなくして、おせちは作れません。全くありえません。
おせちどころか、現代の多くの食料製品は作ることが出来ません。
「食の危険」を過剰に煽りたがる輩のせいもあってか、こういうことを話すと、かなり抵抗を覚える人達が、ある一定レベルいることでしょう。
それでも、はっきり言います。
添加物は、本来的には敵では全くありません。
どころか、これなしに現代の食品技術を、食品安全をどう語れるというのでしょうか。
保存料やpH調整剤などの添加物の恩恵が、高い技術力があるからこそ、私たちは美味しく、安全に、そして安く、簡単に、食品を食べれます。
全ての現代食料製品の利便性、安さは添加物の技術力が支えている、そういっても過言じゃないはずです。

添加物の作用を如何に有効に組み合わせて、先のような過酷な状況においても食中毒にならなくてすむ安全な食品を作るか。
おせちの商品企画者は、真剣にこれに頭を抱えているものです。
最終的には、保存料とpH調整剤などの組み合わせによってクリアすることが多いかと思いますが、それを場合によっては数十品目、開発する。
それはさぞ至難のわざのことでしょう。
しかもそうやって作られた料理を、人工着色料によって、より彩り鮮やかに見せる。
そうやって現代の食品製造技術の粋によって作られているのが、「おせち」であり、また多くの外食食品、販売食品なのです。

(なお、私は食品衛生、防虫管理や微生物対策のプロであって、栄養学や添加物の専門家ではないので、これ以上の話はご遠慮願います。)

正しいおせちとのつきあい方

そんな「おせち」ですから、「保存」としっかり向き合う必要があります。
これは、自分で作ったおせちに対しても同様でしょう。

おせちの正しいつきあい方
  • 食事の前には手を洗う
  • 10度以下で冷蔵保存する
  • 室温を過剰に高めない
  • 小分けさせ、食べるぶんだけ冷蔵庫から出す
  • 元旦翌朝(1月2日)くらいまでには食べきる
  • 場合によっては再加熱する(100度以上)

 

多くの微生物は、10度を超えると活発に活動を始めます。
(低温でも活動する微生物もいますし、冷蔵庫の中でも微生物は増殖します。ご注意ください)
更に暖房の効いた暖かな室温レベル(10~30度)で最も増殖が進みます。
ですから、極力食べるぶんだけ、冷蔵庫から出すことが有効です。
といっても、どーんと重箱を置いておきたくなるのも判らなくもありませんから(笑)、
せめて食べないときはいつまでも食卓においておかず、冷蔵庫に入れること。
また、ものによっては再加熱も考えたほうがいいでしょう。
その場合、100度以上での加熱をお薦めいたします。

いずれにせよ、「おせち」は日もちする、というのは上の通り、本来的な作り方と適切な保存がなされているという前提の上での話です。
よっていつまでも残しておかず、食べきることも重要でしょう。
せめて1月2日までには食べきることを、私ならお薦めします。

まとめ

冬でも食中毒は起こるものです。
ですがそれは、「自己管理」によって守るしかありません。
それらを守ることもなく、自ら劣悪な条件下に長時間放置した食品を食して食中毒になったのは全て作り手のせいだ、というのは些か自己本位な考え過ぎないかと、私は思います。
何にしても、お正月から事故を起こし健康被害を起こしたくはないものでしょう。
上の知識を踏まえて素敵な年始をどうぞお迎えください。

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