皆様、こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。

前回、前々回と、工場での防虫管理における虫の分類の仕方のお話をさせていただきました。

この昆虫の分類法は、昆虫というリスクのマネジメントにおける「要因」によって分ける、というものです。

尤も私がこの業界に入る頃、それこそ25年以上前の段階で既にこうした区分けの仕方が主流でしたし、今となっては最早PCOのスタンダードといっていいでしょう。
ですから「外部侵入」、「内部発生」という呼び方も、この業界では既に定着しきったポピュラーなものであり、既に知られた管理手法とも言えるものです。
ですが、ここで一つだけ押さえておきたいのは、何故このように分けるか、ということです。
既に説いてきたように、こうした分類の最大の目的は、防虫「管理」において「要因」を見誤ると「対策」が異なってしまい、期待すべき効果を伴わなくなる、ということです。


そして、これに付随して、もう一つ。

「内部発生対策」こそが、食品工場における防虫管理の要訣であるとともに、
こうした分類をすることで、概ねの問題に対して目星を付けることが出来る、
ということです。
何故なら昆虫の「内部発生」とは、「食品工場」という、ある特有の環境によってこそ生じる、特殊な現象だからです。

「外部侵入要因昆虫」は、それこそ虫の種類だけ可能性として考えることが出来きるでしょう。
だって、自然界はそれだけの昆虫が溢れているのですから。
しかし、実は「内部発生要因昆虫」というのは、そんなに数が多くありません。
何故なら、「内部発生要因昆虫」というのは、工場の特殊な環境を生息条件とする昆虫のことであり、全ての昆虫が工場の中で内部発生をすることは出来ないからです。
(例えば、樹木由来の昆虫は、緑地帯の植栽という外部環境から工場内に「外部侵入」することは出来るでしょうが、工場内に樹木がなければ「内部発生」は出来ずに、そのまま死んでしまいますよね?)
つまり、工場内というある種の環境において、発生条件を揃えられる昆虫は非常に限られている、ということです。

このことは同時に、工場という特殊な環境が、ある種の虫の発生条件を満たすものである、という意味でもあります。
それでは、工場のどのような「特殊な環境」が、虫を内部発生させるのでしょうか。
それを知ることで、昆虫の内部発生を抑止、あるいは発生の有無をチェックすることが出来るようになるはずです。

1.水を多用する環境である(ウェット環境)

食品製造において、水の使用は欠かせません。
よって、(製造品種や製造工程によっても差は大きいでしょうが)工場には常時水を多量に使っている状態になります。
チョウバエ類などのコバエ類を筆頭に、水場を好む昆虫にとって、こうした水の多用は生息を定着させる重要な条件となりえます。

2.栄養源が豊富な環境である

食品製造とは、そのまま生物の栄養源となる食物を扱う業務です。
人の食べ物であるとともに、それは同時に多くの昆虫の餌にも成り得ます。
更に製造作業には、そうした資材や製品の飛散が伴いがちです。
除去清掃は勿論欠かせませんが、しかしそれらが残れば残渣となって、製造室内の片隅や作業台下、シンク下、機械内、排水溝内、排水升内などに残り、昆虫の餌となる危険性が高まります。
目がなかなか届きづらい、グレーチングの下の排水溝でチョウバエ類などが発生していることはよくある話です。
更にそれらが放置されれば腐敗、発酵、乾燥などを経て、ある種の昆虫の発生条件を満たしかねません。

3.温度差が生じやすい環境である

食品製造に加熱、冷却、冷蔵(冷凍)保管といった作業は欠かせません。
また真夏でも品質管理、衛生管理上、空調による温度管理をする必要があります。
このような温度差は、多くの場合「結露」を生じさせます。結露水が滞留すれば、排水由来の昆虫の発生要因になります。(結露水の滞留からチョウバエ類が発生しているのは、よく見るケースです)


更にその結露は、カビを発生させることになります。すると今度は食菌性昆虫という、カビの胞子を食べて生息する微小な昆虫類の発生要因になります。
貴方の工場の冷蔵庫、冷凍庫に接した壁面をよく見てください。カビが発生し、チャタテムシ類やヒメマキムシ類が発生しているときが多いでしょう。
(室温16度以上だと要注意です)


また、余談ですが、冷蔵庫はその構造上、上下に冷気が抜けやすく作られています。
(というかメイカーがその上下に虫が発生する危険を考慮して、冷蔵庫を作っているわけがないでしょう)
そのため、目に見えない天井裏や床下(下階)に、結露やカビの影響を与えていることもあります。
このことは、経験値のある防虫管理業者でも見落としがちです。どうぞ、冷蔵庫は左右上下全面に注意して虫をチェックするようにしてください。
おっと話が逸れてしまいました。(笑)

4.特殊なもの・数量を扱う環境である

工場は、その特質性から様々なものを扱います。
それは我々の生活環境では余り見なかったり、それほど数量的に扱うことのない特殊なものを、多量に扱う環境でもあります。
代表的なものとして、穀粉の多量使用、多量保管というのがあるでしょう。
小麦粉やその他の穀粉は、我々の日常生活量ならまだしも、工場レベルの使用量ともなるとシバンムシ類やノシメマダラメイガなどの貯穀害虫という穀粉由来の昆虫の発生要因となってしまいます。
こうしたものを材料として使用している工場では、貯穀害虫の発生リスクと向かい合う必要があるでしょう。
貯穀害虫が怖いのは、製品や資材そのものが昆虫の嗜好対象であるため、異物混入混入リスクが高い、ということ。
それから、一旦発生してしまった場合その駆除が困難だということです。
何せ、粉の中で生息していますので、薬剤の到達が難しいのです。
工場の穀粉保管エリアや倉庫、棚などの隅に、糸状のものを見つけたら、周辺にこうした昆虫が生息している危険があります。

5.年度を通じて温度が最適な環境である

食品工場は高温調理や温水使用が多いため、冬期でも温度が昆虫の生息に適した環境になりがちです。
温水パイプの断熱材の中や温水洗浄機の内部、コールドテーブルや冷蔵庫モーター部、配電盤の中などは、高温を好むチャバネゴキブリの営巣箇所になりがちです。
また温水使用の排水溝では、冬季でも関わらずコバエ類が発生します。
内部発生に冬は関係ない、と考えるようにしてください。

6.外部環境の影響を受けづらい(環境変化が少ない、温湿度が一定)環境である

工場内は外部環境から切り離されているため、自然界の激烈な変化影響を受けづらい状態にあります。
また自然界に比べれば当然温湿度は一定であるため、昆虫にとっては一度生息条件が揃った場合、非常に安定した環境を得ることが出来ます。

7.外敵が少ない環境である

6にも関係しますが、一度工場内に入った昆虫は、鳥や肉食性の昆虫から逃れることが可能です。
他の昆虫の餌になりやすい微小な昆虫にとって、外部環境の変化も少なく(6)また外敵の少ない工場内は生息しやすい環境となりがちです。

8.生息箇所が多い環境である

工場内は多くの設備や機械、器具、物品、棚などが存在しているため、隠れて生息する環境としても適しています。

9.殺虫薬剤を多用出来ない(生息の除去手段・機会が限定的)環境である

食品製造という特質上、クロスコンタミネーション抑止の面から工場内での殺虫薬剤の使用は限定されがちです。
(かといって殺虫薬剤への過度な忌避もナンセンスだと私は思います。昆虫と薬剤の双方のリスクをしっかり踏まえた上で、適した使用をすべきです)
これにより、昆虫は駆除されずに生息する機会を得ることができます。

10.持ち込みがなされやすい環境である

工場への侵入手段として、自力での侵入に加え、意外と多いのがこの「持ち込み」と呼ばれるものです。
それは、資材や包材、人や機械、器具、台車やパレットなどと一緒に、昆虫が人的要因で工場内に外から持ち込まれてしまう、という状況のことを意味します。
多くの昆虫は工場内での生息定着が難しく死んでしまいますが、上記のような環境条件が揃った場合、内部発生に至る危険が生じます。
それまで問題のなかった工場が、仕入れ先の段ボールなどに付いてきたチャバネゴキブリを知らずに場内に持ち込んでしまい、内部発生に至ってしまう、というケースはよくある話です。

以上、
食品工場は、こうした特有ともいえるような特殊な環境条件によって、虫を内部発生させてしまうのです。
時折、昆虫の発生要件について「水・温度・栄養」、という話を聞くことがありますが、
しかし微生物ならまだしも、虫の場合は、そんな簡単な話ではありません。
寧ろ、このような工場特有の様々な条件が複合的に重なり、内部発生に至る、というケースがほとんどです。
例えば、資材と一緒に持ち込まれたものが(→10)、薬剤の使用が限定されてるため駆除されることなく(→9)また外敵もいないため(→7)、生息温度に適した冷蔵庫モーター部(→5)でチャバネゴキブリが営巣してしまった、といったようにです。
仮にこれらの条件を、どこかでその一つでも断ち切れられたならば、内部発生に至らなかったかもしれないのです。
つまりここで重要なのは、工場という特殊環境での特有な内部発生条件を知るとともに、その危険性をいかに軽減させていくか、ということなのです。

では、今日はこの辺で。

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